第23話 春の足音が聞こえる頃には…

私があの喫茶店で澤村 あやめに出逢った事は奇跡なのか?それとも、必然なのか?いやいや、偶然なのか?さえも解らずにいた。

もしかしたら、神様のいたずらだったのか?悪魔の囁きだったのか?と考えてしまい不思議な感覚があるのだった。

しかし、あの時を思い出すととめどとなく涙が溢れ、心が温かくなり一歩、前進する事が出来るのだった。


 村中 悟志(34)は春の足音が聞こえてきそうな3月に入ると20年前の淡い初恋の記憶を思い出すのであった。

当時、クラスの中でも、背丈が低く、勉強も得意ではなくクラスに馴染めないでいた。

そんな時に新しく新任の大学を卒業して、2年目の若い先生が担任になった。

とても綺麗な人でなおかつ、私には一生懸命になり、放課後に勉強を教えてくれた。

もちろん、他の教職員からは「やり過ぎ」他の生徒の父母からは「家の子供は?」など散々なクレームを受けていた。

しかし、担任になったばかりもあり、張り切っていた。

その担任のおかげで成績も上がり気付いた時にはクラスでもトップの成績をおさめるようになっていた。

成績が上がると同時に「あの二人出来ているなぁ…禁断の恋だなぁ…」と変な噂を耳にするようになり、お互いに意識をするようになっていった。

私の家族からも、成績が上がった時は「神様、仏様、高橋様」と喜んでいたが、クラスでトップになってから「あの担任は不潔だぁ!近寄っては駄目!」と言うようになってしまった。

私は、成績が上がる度にハイテンションで抱きついていたのも、周囲に変な噂を流すきっかけになったと感じるようになっていた。

その後、3年になる頃には担任も替わり、高橋先生は降格して副担任になっていた。

卒業式の時に、高橋先生を呼び出し、最後にお別れの言葉を伝えた。

「先生のおかげで成績が上がり、第一志望の高校に合格しました。中二の時にあり得ないような奇跡が起こりました。ありがとうございます。大好きです。付き合って下さい。」

と告白をした。

それを受けて「あなたがこの先、そうねぇ。10年先に本当に好きになっていたら、考えるわぁ。」と社交辞令を言われたのを昨日のように思い出していた。

中学を卒業してから、月日が流れ20歳になり大学に通うようになってから、中学の同窓会の頼りがきた。


「悟志、元気かぁ?」

「おぉ!久しぶりだなぁ…何年ぶりだぁ。中学を卒業したから、5年が経過するなぁ。そう言えば、知ってたかぁ?高橋佐和子先生いたよなぁ?今日、来るらしいよぉ…」

「えぇ?そうなんだぁ…あの時は確か、24歳だから29歳になるのかぁ…」

「おぉ!来たみたいだぞぉ。あれ、もしかしたら、高橋先生じゃないかぁ?」

「皆さん、お久しぶりです。お元気ですか?私の方は未だに中学校の先生を頑張っております。」

「あれ、でも、元気がなさそうだぞぉ。」

「そう言えば、悟志は好きだったよなぁ…ちょっと、声かけてみたら?」

「そうだなぁ…お久しぶりです。高橋先生。悟志です。村中 悟志です。」

「あぁ…お久しぶりですねぇ?悟志君は身長も伸びて素敵になったねぇ…今は大学生?」

「はい、日○大学経営学部に通ってます。」

「そうなんだぁ…もう少し、偏差値が高い大学に進学出来たんじゃない?」

「ちょっと、ひどいなぁ…これでも頑張って現役で大学入ったんですよぉ。浪人生の数は多くてねぇ…」

「冗談よぉ…私も同じ大学の出身ですからねぇ。」

「えぇ?そうだったんですねぇ。」

「良かったら、この後付き合って欲しいなぁ。」

「二人きりですか?」

「そうよぉ。」


しばらくしてから、高橋先生と二人きりでホテルのバーで飲んでいると…

「そう言えば、覚えている?卒業式に私に告白した事?」

「はい、昨日のように覚えていますよぉ。今でも、綺麗ですよぉ。」

「もう、冗談うまいなぁ。すでに、おばさんでしょ?」

「いえいえ、綺麗ですよぉ…」

「ところで、彼女はいるのぉ?」

「大学の後輩っと…」

「えぇ?私の事が好きだったでしょ?どうして、彼女がいるのぉ!」

「えぇ?あの時は中学生ですから…今は大学に通っていますから?」

「冗談よぉ…解ったわぁ。じゃ、今夜だけ付き合って欲しいなぁ?」

「もちろんです。先生がいなかったら、大学生になれなかったですから。」

「あぁ…久しぶりに飲んだなぁ…」

「ありがとうございました。又、誘って下さいねぇ。」

「そうねぇ。次があればねぇ…」


それから、数ヶ月経過した3月に彼女はマンションの屋上から飛び降りて亡くなった。

遺書には「疲れた。先生という激務に疲れました。一途に思っていたと思ったら勘違いだったなぁ…でも、良かったのかなぁ?」と書かれていた。

それから、数ヶ月経過した後に、中学の同級生とともに、高橋先生の家を掃除すると大量の写真が出てきたのだった。

それは私の写真だった。

高校に入学してからの写真と日記帳が出てきた。

最初は「元気に登校!教え子の成長はうれしいなぁ…だったが、高校2年ぐらいからかっこ良くなったなぁ…カメラごしからドキドキ…と恋愛モードになっていた。」

彼女も好きだった事が判明してしまった。

その為、彼女が亡くなった3月には必ず、楽しかった当時の夢を見るのだった。


「ふぅ、久しぶりに当時の夢を見たなぁ。もう少し、話しあっていれば今頃はなぁ…おしい事したなぁ。もし、あの時、彼女がいなかったらどうなっていたのかなぁ…まぁ、未だに独身だから変わっていないかなぁ…そうだぁ、今、何時だぁ…やばぁ、寝すぎた。6時かぁ…行かなきゃなぁ。

さてぇ、今日は新商品のコーヒーのプレゼンだから頑張らなきゃなぁ…」

「プル、プルプルル…」

「はい、村中です。」

「山辺かぁ…どうした?」

「今日のプレゼン、15時からに変更になりました。」

「おい!8時からだと思って家を出て駅に向かっているぞぉ。」

「すいません。昨日の20時に連絡が入りまして…伝え忘れていました。」

「そっか、ならしょうがないかぁ…まぁ、ありがとうなぁ…」

「気が抜けたら腹が減ったなぁ。あれ、あんなところに「花言葉喫茶?」まぁ、いいかぁ、入るかぁ…」

「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ?」

「はい、ありがとう。ちょっと、待って、ここは喫茶店だよなぁ?今、流行りの何だぁ、あのぉ、あぁ…そうそう「萌え」とか言うような喫茶店ではないよなぁ…?」

「はぁ?それって、メイドカフェの事ですか?」

「そうそう、それだぁ!」

「違いますよぉ。何処にでもある喫茶店ですけど?どうかしました?」

「いやぁ、どう考えても、店員さんが中学生?高校生にしか見えなくてねぇ…なおかつ、可愛いからなぁ…」

「ありがとうございます。これでも、20代も後半ですよぉ。」

「またまた、冗談うまいなぁ。まだ、20歳にもなっていないでしょ?」

「えぇ?もしかして、信じていないですか?はい、身分証ですよぉ。」

「どれどれ、学生証かなぁ…えぇ!1991年5月13日生まれ…って事は今年で28歳になるのか?それに、店長ってあり得ないなぁ…」

「そうですよぉ。店長ですよぉ。」


「お兄ちゃん、聞いてメイドカフェだって笑えるでしょ?私が中学生?高校生に見えるらしいのぉ!それに、可愛いって…」

「そっか!それは良かったなぁ…やっぱり、お兄ちゃんの妹だなぁ…誇りだなぁ。」

「でしょ?えっへん。そうそう、今月でこの喫茶店を閉じなきゃダメなの?何とかならないかなぁ…」

「お兄ちゃんも上に掛け合ってみたけど…流石に過去を変えた事が問題になってなぁ…今月で閉めなきゃならないみたいなんだぁ。」

「えぇ?そんな…まだ、1年しか経過していないのになぁ…」

「お兄ちゃんも何とかしたいと思っているけど…こればっかりは無理みたいなんだぁ。」

「そうなんだぁ…しょうがないかぁ…」

「あやめが良ければ少し休んでから、新しい仕事でもやるかぁ?」

「う〜ん、新しい仕事かぁ…まだ、そんな気持ちになれないなぁ…どんな仕事なの?」

「実はな、おじさんが経営していた小さなホテルがあるよなぁ…?」

「あるねぇ…昔、行ったけど…見た目は小さなホテルだけど中に入ったら広くてビックリしたなぁ…それがどうしたの?」

「実はな、おじさんが倒れたから、少しの間手伝って欲しいみたいなんだぁ。」

「えぇ?そうなんだぁ…それなら、素敵かも…考えておくねぇ。」


「すいません、すいません…可愛いお嬢さん?店長さん?」


「あぁ…お客さんが呼んでいるから、行くねぇ。お兄ちゃん、後日、その話は聞くねぇ?」

「あぁ…解った。じゃなぁ。」


「はい、お待たせ致しました。何か?」

「はぁ?何か?ここは、お水やおしぼりも出さないで、客を、待たせるのか?」

「あぁ…ごめんなさい。エヘェ。今、お持ち致しますねぇ…」

「可愛いなぁ…怒れなくなったなぁ。」

「はい、お水とおしぼりです。」

「あぁ…ありがとう。」

「これから、お仕事ですか?」

「そうだねぇ。お仕事だよぉ。」

「へぇ、どんなお仕事何ですか?」

「あぁ…飲料メーカーの営業をやっているけど…」

「えぇ?すごいなぁ。憧れますよぉ!ジュースなどのパッケージやCMやロゴなどの打ち合わせなどもあるんですよねぇ?」

「そうだねぇ。半年に1度ぐらいかなぁ…まぁ、その月は徹夜が続くけどねぇ。」

「えぇ?そうなんですねぇ?楽しいだけじゃないんですねぇ。」

「そりゃそうさぁ。CMだと6ヶ月以上はかかるなぁ。まずはキャッチコピーに1ヶ月、次にCMの企画会議で1ヶ月、実際に商品のサンプルがきてからの会議で1ヶ月、撮影前の企画会議、CM撮影に1ヶ月、それから販促活動で2ヶ月となるなぁ。まぁ、こんな感じかなぁ。だから、メーカーは大変何だぁ。」

「でも、給料は良いですよねぇ?」

「まぁ、悪くはないけど…売上が下がれば給料に反映されるから、安定はしないかなぁ。寧ろ、メーカーでも飲食業界よりも地味だけど日用品メーカーなどの方が浮き沈みはないかなぁ?まぁ、あくまでも推測だけど…」

「そうなんだぁ…なるほどねぇ…」

「あぁ…ところでメニューなどはないのかなぁ?」

「はい、少々お待ち下さい。今日は3月1日です。誕生花と花言葉ですが、まずは「アンズ」です。「臆病な愛」「乙女のはにかみ」「疑い」「疑惑」という花言葉があります。

西洋の花言葉〜「Apricot blossom(アンズ全般)」「timid love(臆病な愛)」「doubt(疑い)」「distrust(疑惑)」です。同じですねぇ。

次に花名・花言葉の由来です。

まずは、花名の由来〜中国では「杏」は木を「子」は実を指します。

漢名の「杏子」の唐音から「あんず」と呼ばれるようになりました。

花言葉の由来〜花言葉の「乙女のはにかみ」は、サクラよりも一足早く、はにかむように咲くことに由来するといわれます。」

「へぇ、杏子にはそんな花言葉があるんだなぁ。あんずは昔、駄菓子屋さんでアンズボーで食べたなぁ…冷やすとこれが病みつきでなぁ。旨かったなぁ…今でもあるかなぁ。久しぶりに食べたくなったなぁ…」

「へぇ、そんなものがあるんですねぇ?」

「マジかぁ、知らないかぁ…まぁ、あんずにシロップが入ったもの何だぁ。そのままだと甘過ぎるから、冷やすとちょうどよい甘さでなぁ。駄菓子屋にはおいて、あったんだぁ。」

「すごい、目がキラキラしてますねぇ。あぁ…次を伝えなければ…次の誕生花と花言葉は「ヤグルマギク」です。花言葉は「繊細」「優美」「教育」「信頼」という花言葉があります。

西洋の花言葉ですが少しだけことなりまして〜「Cornflower(ヤグルマギク全般)」「delicacy(繊細、優美)」「refinement(上品、優雅)」という花言葉があります。

花名・花言葉の由来ですが〜まずは花名の由来ですが和名の「矢車菊(ヤグルマギク)」はこの植物が5月5日の端午の節句が近づくと花を開き、その形がこいのぼりの先端につける矢車に似ていることに由来すると言われます。

なお、「矢車草(ヤグルマソウ)」と呼ばれた時期もありますが、ユキノシタ科のヤグルマソウと混合しないように現在ではヤグルマギクに統一されています。

英名は「cornflower(小麦の花)」といいヨーロッパの麦畑の中に咲いたことにちなみます。

花言葉の由来ですが花言葉の「繊細」(西洋では「delicacy(繊細、優美)」)は青い花の色にちなむといわれます。

「教育」の花言葉はプロシア王妃がヤグルマギクを摘みながら王子たちを教育したことにちなみます。

ちなみに、ドイツ、エストニアの国花にもなっています。ふぅ、疲れた…水、水〜グビッ、グビッ…ふぅ、スッキリした。」

「おい!これは、私の水ですよぉ。」

「あぁ…ごめんなさい。今、新しい水をお持ち致しますねぇ…はい、どうぞ。」

「あぁ…ありがとう。なるほどねぇ…花にも色々な花言葉があるんですねぇ?勉強になりました。ところで、食べ物や飲み物のメニューはないのですか?」

「はぁ?ここでは、トーストとハムと卵、コーヒーとオレンジジュースだけです。ハムはベーコン、卵はスクランブルエッグまたはゆで玉子に変更は出来ますが…」

「あぁ…なるほどねぇ…それなら、メニューはいりませんねぇ?では、ベーコンとスクランブルエッグとオレンジジュースでお願い致します。」

「はい、かしこまりました。ところで、誕生花と花言葉は選びましたか?」

「はぁ?誕生花や花言葉にはどんな意味があるんですか?」

「あれぇ、お伝えしませんでしたか?誕生花の花言葉を元にこれからの人生において、出逢っておかなければならない人やあなたに逢いたくて逢わずに亡くなった人に出逢えるんですよぉ。もちろん、亡くなった人に限りますけど…」

「はぁ?ちょっと待って…亡くなった人に逢える?このご時世に?あり得ないでしょ?神様が奇跡を起こすか?イタコでも呼んで魂だけが入るか?又は幽霊にでも逢えるとでも?」

「あれぇ、もしかして信じていません?」

「そりゃ、信じろって言うのが無理があるでしょう?」

「もう、しょうがないなぁ…なら、この窓を見ていて下さい。」

「はい、はい、こうですか?えぇ?何で、あり得ないないなぁ…えぇ?ちょっと、待って、東京オリンピックは来年のはずでは?えぇ?何で開会式が行われているんだぁ?」

「はい、ここまで。これ以上はお見せ出来ません。未来が変わってしまいますから…」

「はぁ?なるほどねぇ…これは、トリックだなぁ…よく出来ていて、引っかかるところだったよぉ!」

「えぇ?まだ、信じていないんですか?」

「信じるわけないじゃないかぁ。」

「なら、これならどうですか?」

「えぇ?ちょっと、待って床が堕ちているじゃないかぁ…えぇ!ウォー、落ちるって…ドスン、いたぁ。何処だぁ…えぇ?何で線路の上にいるんだぁ。ちょっと、ちょっと、新幹線?マジかぁ…助けてくれ!」

「はい、どうでしたか?」

「どうでしたか?はぁ?死ぬ思いまでしたじゃないかぁ!」

「本当に死にますけどねぇ?」

「これ以上は勘弁してくれよぉ。信じるよぉ…ところでここは何処なんだ?」

「ここは異空間ですよぉ。簡単に言うとあの世と現世の中間地点にある場所になります。あの世はすごく広いので、このような場所が必要になるんです。良かったら、ここでやっているテレビでも見ます?480チャンネルありますけど…」

「はぁ?480チャンネルって?」

「あれぇ、あの人は見たことあるなぁ…歴史の教科書に載っていたなぁ…夏目 漱石だなぁ…でぇ、隣が見たことあるなぁ…誰だっけなぁ…あぁ、野口 英世だぁ!えぇ?漫才って…

「はい、どうも、眼鏡をかけて99年気付いたら取れなくなりました。二人あわせて合わせ味噌です。」

「はいはい、宜しくです。」

「それにしても、私達の芸名〜合わせ味噌っておかしいでしょ?」

「私達はこう見えても実はねぇ…頭が良かったんですよぉ。死ぬ前は小説家でこちらが科学者だったんですよぉ。脳味噌フル活動でしてねぇ。えぇ?脳味噌?そうなんです。ふたりの脳味噌から合わせ味噌何です。」

「本当に、小説家ならではの発想でしょ?」

「まぁ、まぁ、まぁ、そんなに誉めんでも?」

「はぁ?誉めてないって…」

「なら、攻めてこんかい?」

「はぁ?何で攻めなきゃならんのやぁ?」

「なら、守って欲しいわぁ…」

「はぁ?何で守らなきゃあかんのやぁ!気色悪いわぁ!」

「えぇ?それって、何色なん?」

「何色って、気色悪い言うただけやん?まぁ、黒とか灰色みたいなもんやろ?」

「えぇ?聞きました。黒色や灰色が気色悪いですてぇ?」

「何抜かしてんやぁ。お前が色聞いてきたんちゃうんかぁ?」

「なら、どんな色が気色悪いねん?」

「気色悪いのはこんな色です…って、おい!昔の札を出さんといて…恥ずかしいやん。それも、葬式に行く前の写真やぁ。ところでなぁ…わしなぁ、鳥になりたかったやぁ。」

「突然、鳥って?すでに鳥やんねん?」

「はぁ?鳥ちゃうやん。まともな人間やん。まぁ、死んではいますが…」

「いやいや、鳥ですてぇ?それも、今ですてぇ?今、漫才しているのは最後になります。そう、とりをしてます。」

「はぁ?なるほどねぇ…鳥になってますてぇ?では、飛ばせてもらいます。さよなら、さよなら。」

「もう、やめさせてもらうわぁ!」」

「へぇ、ここでは、漫才をやっているんですねぇ?ビックリしましたよぉ。」

「まぁ、ここでは、色々な事が出来るんですよぉ。お金が必要ないですからねぇ…前世でやれなかった事を思い切りやって旅立ちますねぇ。」

「そうなんだぁ…」

「でも、前世で後悔していなければ、すぐにあの世にいきますけどねぇ。」

「なるほど…出来ればそれが良いかなぁ。」

「とはいえ、前世で後悔しない人生はないですけどねぇ。」

「まぁ、そうだけどなぁ…」

「ところで、誕生花と花言葉は選びましたか?」

「あぁ、はい、ヤグルマギク「繊細」「優美」「教育」「信頼」でお願い致します。」

「はい、かしこまりました。では、楽しい時間をお過ごし下さい。」


カラン、コロン〜

「えぇ?どうして?高橋先生ですよねぇ?高橋 佐和子さんですよねぇ。」

「良かった覚えてくれて。お久しぶりです。お元気ですか?」

「どうして、どうして、なんですか?なんで、なんで、なんで、なんでですか?なぜ、死ななければならなかったんですか?」

「私もまさかねぇ…自分でも、精神病んでいたからおかしかったのかもねぇ…当時、結婚を約束していた彼氏と付き合っていたけど浮気されてねぇ…それに、あの時はあなたの追っかけをしていたからねぇ。遺品から悟志君の写真があったり、日記に書いてあってビックリしたでしょ?そりゃ、引くってねぇ…本当に馬鹿でしょ?実はねぇ…大学の当時は本が好きでねぇ?男性からはネクラとかサダ子とか言われていたのぉ。まともに付き合った人がいなくてねぇ。合コンももちろん行った事がなかったのぉ?だから、初めて告白されたのが悟志君だったのぉ?そりゃ、教え子と禁断な恋は御法度だけど密かに見守っていたけど…高校生になってから急にかっこ良くなっていて、一途に思っていたのぉ。それに、今でも好きだと言ってくれて良かったわぁ。嬉しかったなぁ…」

「なら、何であの時に言ってくれなかったんですか?お酒の付き合いをして一夜を共にして愛しあったじゃないですか?」

「私はあの時は30歳、あなたは20歳でしょ?貴方が社会人になって落ち着く頃にはおばさんよぉ…冷静になったら無理だと気づいたのぉ!」

「でぇ、マンションから飛び降りたんですか?ふざけんなぁ!残された人の気持ちを考えたのかよぉ!俺はあの後も佐和子さんの面影を追いかけたんだよぉ。何処かでまた笑って微笑んでハイタッチして勢いで抱きしめる事が出来るって…」

「ごめんねぇ…本当にごめんなさい。私も後悔したけど…戻れなかった。」

「もう、今でも好きですよぉ…マジでぇ…忘れたいけど忘れたくない…こんな複雑な気持ち、解りますかぁ?」

「ごめんねぇ…泣かないで…あなたには新しく道を切り開いて欲しいのぉ…あなたと同じ気持ちで待っている人がいるから?」

「そんな人はいないよぉ。」

「いるわよぉ。大学の後輩が…毎月、電話してくるでしょ?年に1回だけ逢っているでしょ?」

「そう言えば…」

「そろそろ、気づいて上げて、私に出来なかった事をして上げて欲しいなぁ!」

そろそろ、料理が冷めますから、どうぞ。

「悟志君、美味しいねぇ…」

「佐和子さん、美味しいですねぇ。」

「でも、うれしいなぁ…悟志君と食事出来るって思ってもいなかったなぁ…」

「佐和子さん、泣かないで下さいよぉ…あなたがいなかったら、今の私はいません。あなたには人生を変えてもらいました。もちろん、今でも大好きで忘れる事が出来ません。でも、佐和子さんがこの世にいない事を受け入れて前を向いてがむしゃらに生きてみます。」

「そうねぇ。私の分まで生きて、彼女を幸せにしなかったら、許さないからねぇ!でも、来世は彼女との恋のライバルだからねぇ?」

「解りました。来世は必ず逃げます。」

「もう、冗談よぉ…」

「わかってますよぉ!次は必ず捕まえて離さないからなぁ…」

「もう、いかなきゃ…ありがとうねぇ…最後に抱きしめてキスしてくれて…春の足音が聞こえる頃には思い出してねぇ…ありがとう。」


「ありがとうございました。何とお礼を言って良いか…大切な人に逢えて一歩、踏み出す事が出来そうです。まだ、名残惜しですけど…彼女の強い気持ちを大事にしてがむしゃらになりたいと思います。ありがとうございました。」

「いえいえ、こちらも素敵なお話しが聞けて嬉しかったなぁ…ありがとうございました。出口はこちらです。ありがとうございました。」


「いやぁ、禁断な恋は現実にあるんだなぁ。お互いにこんな出逢いをしなかったら恋にはならないかぁ!でも、1年も毎日、勉強して逢っていたら…恋になるのかぁ…そりゃなるだろうなぁ。でも、羨ましいなぁ…あれぇ、何か忘れているようなぁ…なんだっけ…あぁ…しまった会計!お客さん、会計!!」

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