第18話 クリスマスソングが流れる頃には…

私達があの喫茶店で澤村 あやめに出逢ったのは奇跡だったのか?それとも必然だったのか?偶然だったのか?

いやいや、天使のいたずらだったのか?悪魔のささやきだったのか?

今でも、あの時を思い出すと不思議な感覚になるのだった。

しかし、いつの間にか涙が止めどなく落ち、心が温かい気持ちになり、明日への一歩を踏み出す事が出来るのだった。


 住永 雄一(42歳)は新規オープンした客室200のビジネスホテルの支配人になり1年が経過しようとしていた。

駅前でありながら、ビジネスホテルが混在しており、格安ホテルのチェーン店が1泊5980円を打ち出したが、シティーホテルのような豪華な客室が顧客のニーズにマッチして、1年前は稼働率90%、女性客が7割を占め、客単価も9000円だったが近くに、VRネットカフェがこの秋から、オープンしてしまいナイトパック1980円を出した途端に客が取られてしまい稼働率も30%にいかない日々が続いてしまった。

その為に、本部からは「営業努力が足りない。稼働率を上げるには客単価を下げたらどうだ?エージェントや取引先を増やして顧客のニーズを取り入れてみたらどうなんだ?」と言われるようになった。

そんな状況もあり、従業員も1人さり、2人さり、売り上げが伸びているホテルに転職するようになった。

しかし、新しく従業員が先月から入って来てから、予約が殺到し、稼働率も90%、客単価に関しては10000円を超えるようになった。

その従業員は古岡 結実(42歳)で、どう見ても30歳ぐらいにしか見えない、童顔であった。履歴書も丁寧書いてあり、接客も素晴らしかった。

しかし、志望動機を聞くと…「前世で守られたから助けにきました。」っと不思議な志望動機だった。

もちろん、履歴書を再度、提出してもらったが…その従業員を寝る前に思い出すと「吉之助さん、吉之助さん、ほらぁ、こっちよぉ!」っと自転車に乗った女学生を思い出すのだった。

そして、「はる!待て!」と追いかける夢を見るように、なった。

私は、数ヶ月経過した後に古岡さんに「夢の話を伝えた。」

すると、「私も同じ夢を見るんです。」と言われ、「私の前世が吉川 はるだった事、支配人が吉澤 吉之助だった事」を初めて聞かされたのだった。

仕事が終わると古岡さんを食事に誘い夢の続きを詳細に聞く事が出来た。

「何でも、はるさんと吉之助さんは近くに住んでおり、吉之助さんの一目惚れから始まったとの事。吉之助さんははるさんを勇気を出して公園に散歩に誘い、恋が始まった。吉之助さんは路面電車の駅員になり、それを自転車で女学生だったはるさんが追いかける日々が始まり、突然、はるさんのお見合いにより、恋が散ったとの事。しかし、その後はるさんは離婚して子供とともに、実家に戻り、偶然の再開とともに吉之助さんは再び、恋になり、愛になったとの事。その後、はるさんが結核にかかり、看病のすえ亡くなるが子供の学費を工面してくれたとの事。最後に、来世で一緒になりたい。」と誓ってこの世を去ったと言う話を聞かされた。

私は、その話を聞くまではそんな事があるのか?と思ったが…古岡さん、私にあった時に電流が走ったと言っていた。

その後、私達は付き合いを始めるようになった。

二人が付き合いを初めて、遅番で一緒に事務仕事を終えて帰ると既に朝になっていた。

「住永支配人?良かったら、朝ごはんでも食べに行きません?」

「そうだなぁ…行こう。」

「あれ、あそこに喫茶店がありますよぉ?」「花言葉喫茶」かぁ…なるほどねぇ…入ってみよう。」

「いらっしゃいませ?こちらにどうぞ?」

「えぇ!君はどう考えても、中学生…に見えるけどなぁ…」

「そうねぇ?どう考えてもこの時間は働いてはならないよねぇ?あのぉ、お母さんは何処にいるのかなぁ?店長はいますか?」

「はぁ?私が店長ですけど…」

「えぇ?そんな訳ないでしょ?警察呼びましょうか?」

「いきなり、警察とはビックリするよねぇ?ごめんねぇ…」

「あぁ、もう!これで良いですか?身分証です。」

「身分証って、学生証でしょ?」

「だから、ちゃんと見てから言って下さい。」

「えぇ!1991年5月13日?という事は今年は2018年だから、27歳かぁ…いやぁ…28歳って…」

「さっきはすいませんでした。少し、熱くなりました。それにしてもありえないわぁ…こんな事はあるんですねぇ?」

「ありがとうございます。私も、お客さんから良く言われますけど…若すぎるって困りますねぇ?」

「いやいや、寧ろ、うらやましいですよぉ。ところで、店長、ここはおしぼりとかお水は出ないのですか?」

「今、お持ち致します。」

初めて、ふたりのお客さんを対応すると変な感じだなぁ…

「はい、お水とおしぼりです。」

「ありがとうねぇ…それにしても、1人で頑張っているとは偉いねぇ…大変でしょ?」

「そうですねぇ…1人では大変な事もありますねぇ…」

「そうだよねぇ?偉いねぇ…?ところで、見かけないお店だけど…いつ頃からあるの?」

「えぇ…最近ですねぇ…」

まさか、ここでは初めてですとは言えないわぁ。

「そうなんだぁ…なるほどねぇ…ところでメニューとかはないのかなぁ…?」

「はい、ただいまお持ち致します。

今日は12月15日です。

誕生花と花言葉ですが、まずは「モンステラ」です。「うれしい便り」「壮大な計画」「深い関係」です。

西洋の花言葉〜「Monstera」「dedication(献身)になります。」

「なるほどねぇ…」

「ハワイの言い伝えでは、モンステラの葉は成長するにつれて穴があき、その穴から太陽の光が差し込むことから、「希望の光を導く」と言い伝えられているそうです。」

「へぇ、そうなんだぁ…素敵ねぇ…」

「次に「ジンチョウゲ」です。

花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「永遠」です。

西洋の花言葉〜「Daphne odora」「glory(栄光) 」「immortality(不死)(不滅)です。

花言葉の由来〜花言葉の「不死」「不滅」「永遠」はジンチョウゲが1年を通じて緑の葉をつける常緑植物であることにちなみます。」

「なるほどねぇ…花にも花言葉があるんだぁ。ところで、食べ物や飲み物のメニューはないのかなぁ?」

「はぁ?ここはトーストとサラダ、ハムと卵とコーヒーだけです。ハムはベーコン、卵はゆで玉子またはスクランブルエッグに変更は可能ですが…」

「なるほどねぇ…1人で全部こなすのは大変ですよねぇ?だから、メニューはないんですねぇ?」

「まぁ、そうですけど…メニューは増やすかは検討中です。」

「そうなんだぁ…出来ればオレンジジュースや紅茶があればとは思うなぁ。」

「なるほど…ところで花言葉は選びましたか?」

「花言葉…?花言葉が意味するのは?」

「花言葉に何か特別な事でもあるんですか?」

「あれぇ?お伝えしてませんでしたか?花言葉を元に今後の人生において、出逢っておかなければならない人、あなたに逢いたくて仕方がない人にお逢いする事が出来ます。とはいえ、亡くなっている人に限られますけど…」

「ちょっと、ちょっと、そんな事こんな世の中であるわけないでしょ?神様のいたずらかぁ…そうねぇ、奇跡でも起きるかぁ…又は幽霊になって現れるかぁ…ぐらいなもんよぉ。」

「おい、ちょっと待て、俺達が出逢ったのも奇跡みたいなものじゃないかぁ…あり得るんじゃないか?」

「まぁ、確かに私達が出逢ったのも…不思議な感覚から始まったからあり得ない事でもないけど…でも、どう見ても、何処にでもある喫茶店でしょ?」

「まぁ、言われて見れば確かに何処にでもある喫茶店だなぁ…店長が驚く程若くて可愛い以外は変わっているところはないなぁ。」

「あれぇ?もしかしたら2人とも信じていないのかなぁ?そりゃ、信じる方がおかしいかなぁ…では、こちらの窓を見ていて下さいねぇ…」

「はい、はい、見ますよぉ!って何で、鎌倉の大仏が目の前に?あり得ないなぁ…」

「えぇ!本当だぁ!あり得ないなぁ…鎌倉の大仏よねぇ?あぁ…鎌倉と言えば鳩サブレーやあんみつが食べたくなるなぁ…」

「おい、おい、のんきな話をしている場合かよぉ。」

「そうですねぇ…まぁ、普通ですけど…次はこちらを見て下さい。」

「ちょっと、ちょっと、こっちは東京オリンピックが開催されているとは…」

「冗談でしょ?映像を見せられているだけよねぇ?」

「確かに、そう思うみたいですけど…ちょっと待ってて…」



「はい、東京オリンピックのパンフレットと焼きそばを買ってきたわぁ。」

「えぇ!本当だぁ!何でこんな事が出来るのぉ!私も、東京オリンピックを生で見たいなぁ…?」

「あなたたちは無理ですよぉ。もし、窓を開けて、出たら、鎌倉の大仏の目線の高さから落ちるか?それとも、東京オリンピックの会場にたどり着くかは…運しだいですからねぇ?それに、東京オリンピックの頃から戻れなくなりますよぉ。」

「えぇ?だって、あなたは出来るじゃないのぉ?」

「だって、私は異空間で育っているから、時空を越えたり、思い描いた場所に行けますよぉ!これ以上は言えませんけど…」

「そうなんだぁ…でも、やっと信じる事が出来たよぉ!ありがとうなぁ。」

「本当ねぇ…こんな事があるんですねぇ?」

「では、花言葉は決まりましたか?」

「ちょっと、待ってなぁ…「モンステラ」「うれしい便り」「壮大な計画」「深い関係」で、「ジンチョウゲ」「栄光」「不死」「不滅」「永遠」だなぁ…どっちが良いかぁ?悩むなぁ…」

「私は断然、「モンステラ」かなぁ…「希望の光に導く」がなんか良いなぁ…」

「そうだなぁ…では、「モンステラ」でお願い致します。」

「はい、かしこまりました。では、素敵な時間をお過ごし下さい。」


カラン、コロン〜

「初めまして、こんにちは。私は吉川 ハルです。まずは2人が出逢った事に感謝します。あなた方は私達の生まれ変わりなんです。

「うれしい便り」「深い関係」「壮大な計画」「希望の光に導く」にあてはまります。」

「はぁ、初めまして古岡 結実です。」

「初めまして、私は住永 雄一です。」

「戸籍上は二人とも、私達とは関わりはないけど…二人が出逢えて本当に良かったわぁ。

そして、偶然でも、この喫茶店に入ってくれた事に感謝します。ありがとうございます。」


カラン、コロン〜

「ハルちゃん、やっと、やっと逢えたよぉ!」

「吉之助さん、私もすごく逢いたかったわぁ!」

「あぁ、自己紹介遅れました。私が吉澤 吉之助です。」

「何か、変な感じですけど…」

「そうだなぁ…どうもこの出逢いに感謝出来ないなぁ。」

「私達は二人が前世で来世で一緒になる事を願って、生まれ変わったという事は理解出来ましたけど…どうも納得いかないんですけど…」

「私達は席を外した方が良さそうですよねぇ?」

「大丈夫ですよぉ?これから、あなた方は…」

「あぁ…眠くなってきた。」

「あぁ…何か、すごく眠くなったなぁ…」



「ハルちゃん、やっと逢えたよぉ!すごく、大好きだったから、お見合いをしてから何度も近くをよっては遠くから見ていました。ひどい扱いをされていた事を知っていたけど助ける事が出来なかった。本当に申し訳なかった。許して欲しい。」

「吉之助さんの方こそ、私が両親からのお見合いに反対して吉之助さんと添い遂げる事が出来なかった事を許して欲しい。血のつながりのなかった息子の為に一生懸命に学費を工面してくれた事に感謝してます。本当にありがとうねぇ。」

「ハルちゃん、私は本気でお見合いを止めなかった。私は最低な男だった。」

「吉之助さん、泣かないで下さい。私の方こそ、最低な女ではないですか?どうして、私を愛してくれたんですか?」

「私はハルちゃん以外の女性は好きにはなれなかったんです。離れて初めて、私が好きな女性はハルちゃんだけだとわかったんです。」

「私は何とお礼を言って良いかぁ…私はこのご恩を忘れた事はなかったわぁ。だからこそ、吉之助さんが困っている姿を見ている事が出来なくて現れたのぉ!吉之助さんは気付いていなかったみたいですけど…」

「そりゃ、前世の記憶が抜けていた事もあって、信じるのに時間がかかりました。でも、来世の私が苦労していた事は間違いない事だったから結果としてハルちゃんに救われたみたいですね?」

「本当なら、吉之助さんと向こうの世界で逢えれば良かったのですが…向こうの世界は人口も現世の25倍、広さも20倍、連絡手段もお互いの運しだいですからねぇ…亡くなった時間が同じならすぐに見つかるのですけど…私と吉之助さんと亡くなった差が20年では探すのに苦労しました。やっと手掛かりが見つかった時には吉之助さんは5年前の世界にいて、私は10年後の世界を探してました。」

「私もハルさんの手掛かりはあったのですが向こうの世界ではすれ違いでした。早くからここの事を知っていればすぐに逢えたのにねぇ…」

「そうですねぇ…私もここの事を知る迄にだいぶ、遠回りをしました…でも、こうして又、逢えて嬉しかったなぁ…」


あれぇ、料理が覚めますけど…寝てるんですか?

あぁ、すいません、後で起こして食べますので…

「二人には、私達の記憶はこれからは必要ないねぇ?」

「私達はあの世で幸せになれますからねぇ?私達がここで出逢う為に利用させてもらいましたけど…」

「大丈夫ですよぉ。これからも幸せになるように私達が愛しあった記憶だけは残しておきますからねぇ。」

「それでは、吉之助さん行きましょう?クリスマスソングが流れる頃には二人が幸せになっていますよぉ。私達が幸せになった頃のように…」


「あれぇ、何で寝ているんだぁ…おい!大丈夫かぁ?」

「えぇ?」

「寝ていたぞぉ。」

「嫌だぁ…本当だぁ!何でかなぁ?」

「それにしても、さっき、ハルさんと吉之助さんが来ていた夢を見ていたなぁ…何でかなぁ…?」

「そう言えば、確かにハルさんと吉之助さんにあったような夢を見たなぁ…」

「何でかなぁ…涙が止まらなくなっちゃった…」

「俺も何か、涙が止まらないなぁ…ハルさんと吉之助さんがやっと逢えたんだなぁ…」

「そうみたいだねぇ?」

「それにしても、うれしいねぇ…料理が来ているから食べよう?」

「そうだなぁ…美味しいなぁ…」


「それにしても、ハルさんと吉之助さんはここに来ませんでしたかぁ?」

「来ましたよぉ!」

「やっぱりそうなんだぁ。夢じゃなかっただぁ!」

「良かったわぁ!」

「そうですねぇ…私も、うれしかったなぁ…久しぶりのご対面で涙が出ましたよぉ。」

「そう言えば、ふたりに伝言があります。これからも仲良く末永く幸せになりますように…ハル、吉之助より」

「ありがとうございます。幸せになります。」

「では、出口はこちらです。ありがとうございました。」


「ふぅ…それにしても、今回のパターンは初めてのケースだったなぁ…あるんだなぁ…前世の記憶が来世までつながる事が…私もそんな恋がして見たいなぁ…って、しているなぁ…あぁ、何て素敵なんだろう…あれぇ、そう言えば…お客様、会計!会計!!」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る