第21話 粉雪が舞い散る夜には…

私が、あの喫茶店で澤村 あやめに出逢ったのは奇跡だったのか?それとも、必然だったのか?偶然だったのか?

いやいや、天使のいたずらだったのか?悪魔のささやきだったのか?神様の贈り物だったのか?と考えるのだった。

とはいえ、いまだに不思議な感覚があり、理解に苦しむのだった。

しかし、あの時を思い出すととめどなく涙が溢れ、心が温かくなり、一歩、前進する事が出来るのだった。


 西村 百合(28)はこの時期になると粉雪が舞い散る雪の日を思い出すのだった。


おばあちゃんが老衰の為に亡くなり、看病する事が出来なかった為に、複雑な心境のまま、大学受験を目前に控え、ラストスパートをかけて、予備校の自習室が閉じる22時まで勉強していた。

予備校の自習室は問題集を解く鉛筆の音だけがこだまして、22時の閉館まで続いていた。

警備員が閉館時間になると申し訳ないように「すいません…規則なので閉館します。」と伝えてから、10分ほど時間をくれるので助かっていた。

しかし、今日は閉館を過ぎて30分以上経過してしまった。

「いつも、すみません。後、もう少しだけが誰もいなくなるまで問題集を解きたくて…」

「いえいえ、今が大事な時ですから、頑張って下さい。」

「ありがとうございます。」

「今日は粉雪が舞い散って…あぁ…すいません。雪が積もりそうですから、足元には注意してねぇ…」

「大丈夫ですよぉ。縁起担ぎは必要ですけど…仕事ですから、気を遣わずに大丈夫ですよぉ。粉雪が舞い散ってますよぉ。滑って落ちたら大変ですねぇ?」

「ありゃ、おじさんはこりゃ、一本取られたわぁ…」

「いつもありがとうございます。では、さようなら」

「いえいえ、受験まで残りわずかだから、体調には気をつけてねぇ?」

「ふぅ、受験まで残りわずかだなぁ…頑張らなきゃ。」


駅前にある予備校から駅に歩いて横断歩道を歩いて渡る時に1台の乗用車が信号無視をして突進してきた。

私は避けきれないと思い「死ぬ!」と思ったら背後から私を引き戻して助けてくれた。

しかし、私を引き戻して助けてくれた警備員のおじさんは引き戻したはずみで体制が崩れて乗用車にひかれてしまった。

「私はただ、泣いて座り込んでいると…」

「良かった。頑張って!」とおじさんが言った事を昨日のように覚えている。

その後、救急車で念の為、運ばれて、検査を受けて翌日に父親の車で家に帰宅したのだった。

次の日、朝のニュース番組を見ると昨日の現場と飲酒運転で赤信号を無視した車と犯人の名前と被害者の名前が写された。

関東警備〜坂本 義三(58)とはじめて知った。

しかし、大学受験を目前にしていた為に両親はお礼に伺ったが…私はお礼をいいそびれていた事をこの時期になると思い出すのだった。

私を助けなければ、どうなっていたのかなぁ…幸せだったのかなぁ?と考えるのだった。

私の方は見事に第一志望の大学に合格して、念願の薬剤師として、大学病院で働いている。


「今日は粉雪が舞い散っているから、早めに出勤しなきゃなぁ…ふぅ…一人暮らしだと駅まで送ってくれる親もいないからしんどいなぁ…とはいえ、念願の薬剤師になって4年も経過すると意欲も低下してるなぁ…あの頃はがむしゃらだったけど…

そう言えば、今日は朝食も食べてないなぁ…少しお腹がすいたなぁ…何処かに朝食でも食べれるところはないかなぁ…「花言葉喫茶?」あんなところに喫茶店、なんかあったかなぁ?まぁ、良いかぁ…入ろう。」

「いらっしゃいません。こちらにどうぞ?」

「はい」

「今日は寒いですねぇ?コーヒーを先に出しますねぇ。はい、おしぼりとお水とコーヒーです。」

「あぁ…ありがとうございます。」

「それにしても、雪が積もると都内は交通がストップするから大変ですねぇ?」

「そうですねぇ…去年は雪が積もり過ぎて交通がマヒして40分歩きましたよぉ。」

「あぁ…店長が戻ってきましたので、私はこれで失礼します。」

「はい、ありがとう。元に戻って良いわよぉ。」

「えぇ…ちょっと、ちょっと、犬の置物が…人間に?えぇ?どうなっているのぉ。」

「それに、あなたが店長?どうみても、子供じゃないのぉ!」

「はぁ?ちょっと、失礼ねぇ…こう見えても店長ですよぉ…」

「またまた、あり得ないわぁ…子供店長さん。お母さんは何処ですか?」

「はい、身分証ですよぉ!」

「はい、はい、学生証ですねぇ。中学二年かなぁ?って…えぇ?本当だぁ!1991年5月13日生まれ…という事は27歳…1歳年下って」

「だから言ったでした!」

「はい、すいませんでした。」

「ところで、先程の犬の置物がおばさんになるのは手品ですか?」

「えぇ?あぁ…まぁ、そうかなぁ…まだ見せてなかったから、驚きました?」

「そりゃ、驚きましたよぉ。すごいですねぇ。」

「そうかなぁ…まぁ、手品ではないけど…」

「ところで、メニューはないですか?」

「はい、ただいまお持ち致します。

今日は2月1日です。誕生花は3つあります。運が良いですねぇ!

まずは「ウメ」です。花言葉は「高潔」「忠実」「忍耐」です。

西洋の花言葉〜「Plum blossom(ウメ全般)」「keep your promise(約束を守る)」「fidelity(忠実)」「beauty and longevity(美と長寿)です。

花言葉の由来〜花言葉の「忠実」は、戦争に敗れて大宰府へ左遷された平安時代の貴族・菅原 道真(845〜903)の後を追って空を飛んだとするウメの伝説に由来すると言われます。」

「へぇ〜梅にはそんな素敵な花言葉があったんですねぇ…私は梅干しを食べて酸っぱく身体に良いが花言葉かと思っていたわぁ!」

「ちょっと、それは梅干しの味ですって…梅の花は綺麗ですよぉ!ぜひ、今度、見に行って下さいねぇ…」

「そうしてみます。」

「次が「マーガレット」です。花言葉は「恋占い」「真実の愛」「信頼」です。

西洋の花言葉〜「Marguerite(マーガレット全般)」「secret love(秘密の恋)」「faith(信頼)」です。

花言葉の由来〜「恋占い」の花言葉は、マーガレットが「好き、嫌い、好き、嫌い……」と花びらを一枚ずつ散らしながら占う、恋占いとして使われることにちなみます。

また、マーガレットがギリシア神話の女性の守護神アルテミスに捧げる花であった事から、女性が求める最高の幸せとして「真実の愛」の花言葉がつけられたと言われます。」

「なるほどねぇ…そう言えば、マーガレットの花で花占いしたなぁ…真実の愛かぁ…私にはあるのかしら?」

「願いは叶いますよぉ…でも、行動はしなきゃねぇ!」

「はぁ…そうですねぇ…」

「そして、最後に「サクラソウ」です。花言葉は「初恋」「憧れ」「純潔」です。

花言葉の由来〜ピンクや白などかわいいハート形の花びらが特徴のサクラソウ。その5つの花びらは個々に分離した離弁花ではなく、それぞれがつながった合弁花です。

花言葉の「初恋」「純潔」はかわいらしく清楚な花姿にちなむともいわれます。ふぅ…疲れた、水、水…ぷぅはぁ〜、うまいもう一杯!ふぅ、すっきりした。」

「へぇ、サクラソウにもねぇ…って、ちょっと、ちょっと、それは私の水ですよぉ!」

「あぁ…ごめんなさいねぇ…あまりに今回は長く話したら疲れちゃった。エヘェ。変わりの水持ってきますねぇ。」

「何なの「エヘェ」って、あまりにかわいいから怒れないじゃない…」

「はい、お待たせ致しました。」

「ところで、食べ物や飲み物のメニューはありませんか?」

「はぁ?ここでは、トースト、サラダ、ハムと卵とコーヒー又はオレンジジュースだけですよぉ。ハムはベーコン、卵はスクランブルエッグ又はゆで卵に変更は可能ですけど…。今日は寒いので、特別にコーヒーはサービスですけど…」

「なるほどねぇ…だから、メニューはないんだぁ。では、ベーコンとスクランブルエッグに変更して、オレンジジュースも頂くわぁ。」

「ありがとうございます。ところで、誕生花と花言葉は選びましたか?」

「はぁ?誕生花や花言葉にはどんな意味があるんですか?」

「あれぇ、お伝えしませんでしたか?誕生花の花言葉を元にこれからの人生において、逢わなければならない人やあなたに逢いたくて仕方がない人に逢えるのです。とはいえ、亡くなった人に限りますけど…」

「はぁ?ちょっと、ちょっと、いくらなんでも現代の世の中で出来ない事はありますよぉ。それに、亡くなった人に出逢えのは神様が奇跡を起こすか?又はイタコがあの世から霊魂を呼び寄せて乗り移るぐらいなものでしょ?それに何か怪しいわぁ!高い壺や水晶の類いを後で請求するんでしょ?」

「ちょっと、そんな事はしませんよぉ…もしかしたら、信じてません?」

「そりゃ、信じろってのが無理がありますよぉ。」

「なら、この窓をしっかりと見ておいて下さい。」

「はぁ?何が始まるのかしら?えぇ?あたしよねぇ?何で結婚式場にいるの?それも、大学病院の仲間たちが礼服なんて着こんでいるの?本当に私の結婚式じゃないのぉ!ちょっと、誰と結婚するのよぉ…」

「はい、ここまでです。未来は変えられないのでお見せ出来るのはここまでです。」

「もう少し見たかったなぁ…それにしても、よく出来てますねぇ?」

「はぁ?よく出来てます?これはあなたしか知らないでしょ?私があなたの職場や同僚を知っているとでも?」

「確かに…えぇ!という事は私の未来何ですか!」

「そうですよぉ。信じました。」

「そりゃ、信じるけど…ここは一体何処何ですか?」

「ここはあの世と現世の丁度、真ん中にある異空間になりますよぉ。だから、過去や未来、何処にでも行けますよぉ…。それに、年齢も若いままに調整も出来ます。」

「えぇ?もしかしたら、さっきの犬の置物が、おばさんに化けたのも?」

「そうですよぉ。あの世から犬の置物を買って来て、犬の置物に住んでいるおばさんにバイトを頼んだんですよぉ。それに、犬の置物といっても、中は東京ドーム1個分の広さがありますよぉ。欲しいのがあればあの世から通信販売やオンラインショッピングも楽しむ事も出来ますからねぇ。」

「なるほどねぇ…ってすごい世界なんですねぇ…」

「まぁ〜ねぇ…現世は庭みたいなものだなぁ…異空間はその100倍以上の広さがありますけど…あの世は1000倍ですが…その為、あの世と現世をつなぐ場所が必要で1日と15日だけ、選ばれた人だけが逢えるですよぉ。3月一杯でここは閉鎖になりますから、運が良かったですよぉ。」

「そうなんだぁ…他の日にちは 逢えないですか?」

「そりゃ、無理だなぁ…現世で悔いを残して亡くなった人に限りますから…たいていはあの世に行く前に精算は終えるものなんですけど1万に1人ぐらいの確率で前世の記憶や現世の記憶を持ったまま、未練たらたらであの世に来てしまうのですよぉ。あの世は非常に広いので、現世から呼び寄せているという訳何ですよぉ。」

「はぁ…何となく理解は出来ました。」

「では、誕生花と花言葉を選べましたか?」

「えぇ?ちょっと、待ってねぇ…「ウメ」が「高潔」「忠実」「忍耐」「約束を守る」でしょ…それから、「マーガレット」が「恋占い」「真実の愛」「信頼」だったわねぇ…最後がなんだっけ…あぁ…思い出した。「サクラソウ」で「初恋」「憧れ」「純潔」ねぇ…よし、決めた!「ウメ」で「高潔」「忠実」「忍耐」でお願いします。」

「かしこまりました。それでは、素敵な時間をお過ごしくださいねぇ…」


カラン、コロン〜

「誰が来るのかなぁ…楽しみ。」

「百合かい?おばあちゃんだよぉ…大きくなったねぇ…良かった、立派に育って、おばあちゃんはうれしいわぁ。」

「おばあちゃん、私も逢いたかったよぉ…それに、大学受験の前に亡くなって、悲しくて、悲しくて辛かったんだから…もう、おばあちゃんのバカ、バカ…」

「もう、百合ったら…泣かないで。ほらぁ、顔を上げて、これで、涙を拭きなさい。おばあちゃんも、後、もう少し生きたかったけど…寿命だからねぇ…でも、おばあちゃんは大学受験の時も、合格発表の時も側にいましたよぉ!私も一緒になって喜んでいたんですよぉ!」

「えぇ?そうだったのぉ!」

「そりゃそうよぉ。死んでも死にきれないわよぉ。でも、寂しいわぁ…あれほど、「高潔な心を持って、忠実に仕事をこなして忍耐づよく誰より患者さんの為に親身になっていた薬剤師さんになりたい!」っておばあちゃんに泣いて訴えてくれたでしょ?おばあちゃんを薬の力でなおすって一緒懸命になっていたでしょ?私は薬剤師になった時に私は誰よりもうれしかったのぉ!でも、おばあちゃんは今の姿は嫌いよぉ…」

「おばあちゃん、ごめんなさい。本当にごめんなさい…もう、一度頑張って患者の為に親身になってみるわぁ…」

「わかっていましたよぉ…夢と現実の狭間で苦しんでいた事を…だから、私が来たんです。大学の時に谷岡教授の授業を聞いていたでしょ?再度、訪問してみなさい。きっと、素敵なアドバイス、いやぁ、あなたの今後を替えてくれますからねぇ。それを言いに来ました。」

「谷岡教授って?平凡な教授…あまり覚えてないなぁ…」

「そんな事はないわぁ…逢えばわかるわぁ。それに、あの人はこれから、世界中の命を救う事になりますが…あなたが必要になります…私からはそれ以上は言えないわぁ。」


あのぉ、そろそろ、料理が冷めますので…

「おばあちゃん、食べよう。」

「そうだねぇ…それにしても、百合は本当に良く頑張ったねぇ…私の誇りだよぉ。」

「嫌だぁ、誇りなんて…おばあちゃんの遺書がなければ頑張る事が出来なかったわよぉ?「人の命は1人で支える事が出来ない。あなたは常に笑顔という宝石を磨いて、生きる希望になりなさい。その希望を求めてすれ違う奇跡を大事にしてしっかりと支える事。それによって、あなたは大切な人に愛されるからねぇ…」って。時々、読み返して涙で溢れるけど…まだまだだなぁ…って悔しくなるけど、でも、やっぱり1人は辛いよぉ…」

「ほらぁ、泣かないで…もう、1人にはしないわよぉ…ここを出たら大切な人がいますから…粉雪が舞い散る夜にはおばあちゃんを思い出してねぇ…私はそろそろ行きますねぇ…」

「おばあちゃん、待ってよぉ…おばあちゃん…行かないでよぉ…まだまだ、話したい事があるんだから!」


「あれで、良かったんですか?私の役目はここまでです。最後にこれを渡して下さい。ハンカチです。ありがとうございました。」


「雪が止んだみたいですよぉ。そろそろ、仕事に行かないとねぇ…」

「あぁ…そうだった。」

「後、こちらはおばあちゃんからです。」

「あぁ…ハンカチだぁ!」

「良かったですねぇ…では、出口はこちらです。あぁ…後、嫌な記憶を消して起きました。」

「はぁ…ありがとうございました。」


「今回も素敵な出逢いが出来たなぁ…それにしても、後、3回でここも閉鎖かぁ…名残惜しなぁ…それにしても、警備員のおじさんが先月のお客さんの中学の担任だとわなぁ…世間は狭いなぁ…とはいえ、生徒と恋愛した結果、自殺した生徒がいたのは事実だったからなぁ…最後は人を助けるとは不運だなぁ…とはいえ、最後は孤独死の運命とどっちが幸せだったのかなぁ…でも、幸せそうだったなぁ…あぁ…それより、しまった会計!お客さん、会計!!」



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