第15話 紅葉が見頃になる頃には…

私があの喫茶店で澤村 あやめに出逢ったのは奇跡だったのか?それとも、偶然だったのか?必然だったのか?あるいは、神様のいたずらだったのか?悪魔のささやきだったのか?未だに理解出来ずに不思議な感覚があるのだった。

しかし、あの時を思い出すと、とめどなく涙が溢れて、温かな気持ちになり幸せで満ちあふれ、一歩、前進する事が出来るのだった。


 遠藤 正幸(48)は3年前にコンビニチェーンにお弁当やサンドイッチなどを作って卸している工場をリストラにあってしまった。

コンビニチェーンが縮小したのと、都内に工場を建ち、商社が工場を買収した事が原因だった。

又、海外から優れた若い実習生を大量に受け入れた事もあり、実習後にその優秀な実習生のおかげもあり、AI技術が逆輸入されて人員削減となったのだった。


それだけではなく、10歳離れた5年連れ添った女房との間に、浮気相手との間に子供が出来てしまい離婚となってしまった。

女房からは「あなたが夜勤ばかりいれて、寂しかったのぉ…だから、ごめんなさい。それに、あなたが悪いのよぉ!何で、一度も怒らないのよぉ…私の事を大事にしているようで何もしなかったでしょ?旅行や誕生日にプレゼントでも『愛している』の一言でも言ってくれた?仕事から帰ると自分の部屋に閉じ籠って寝るか、趣味の映画を見るだけったでしょ?」と言われてしまった。

当時、『友人からこれ良かったら見てみなぁ?』と言われた海外のドラマに夢中になっていたのだった…女房の存在すら、雑にしていたのも事実だった。

本来なら、一緒に見れば良かったのかも知れないが…後悔してもあとの祭であった。


そうなる前にしっかりとお互いに話あっておけば良かったと後悔してしまうが一人になって気付いた事はお互いに好きな人と結婚したわけではなかった事だった。

結婚当初から、友達と定期的に旅行に行ったり、化粧品やブランド品を私のカードで購入していた。

付き合っていた当時は工場の前にあったパン屋さんでバイトをしており、 清楚で化粧も地味で料理を作ってきてくれたりとマメな印象があったのだが、私が優し過ぎたのが原因で女房を変えてしまった。

付き合っていた時は、彼氏がいないと言われていたので、私が一方的に好きになり告白し結婚した。

しかし、パン屋で働いていた時から、付き合っていた人がいた事を結婚してから気づき初めていたが、「友達としてなら目をつぶる」と言ってしまった。

本来なら、「結婚しているから、二度と絶対会うなぁ!」と言えば良かったのだった。

私も40歳の時に知り合って、10歳も年下の女房を手に入れた満足感があり、結婚した事がゴールになっていた。

一方、女房の方は結婚がスタートになり、徐々に以前付き合っていた人とデートを重ね始めていた。

又、夜勤で留守になると知らない男の服や男性の洗濯物が目に入るようになり、『誰か来たのか?』に対して、最初は『弟』だった嘘が『親友』、そして、『彼氏』となっていた。

さすがに、『彼氏』と言われたら、怒れば良かったのだが…『そっか、仲良くなって良かった。』と言ってしまった。

その後は3日から1週間と月に一度は無断で外泊するようになってしまった。

その為、外泊から帰ってきたら、言い争いが絶えず、最後は思い切り殴ってしまった。

その一度の過ちにより購入したマンションを慰謝料として女房に取られてしまった。


今は、安い賃貸の住宅に住み、乾物屋の店長をしている。

夜勤はなくなり、体調も良くなったが、本部からの売上を気にして、優しい性格も変わってしまった。

周囲からは常に「イライラしているけど大丈夫?」と言われるようになり、バイトや同僚から気遣かわれるようになった。

店長になってからの3年間はがむしゃらに仕事を行い、お客さんとの間に信頼も出て、取引先も増えて、売上を気にならなくなると「最近、優しくなりましたねぇ?楽しそうですねぇ?」と言われるようになった。

そんなおり、「遠藤さんですよねぇ?」とお客さんから声をかけられた。

「はい、どちら様ですか?」

「私ですよぉ。高梨 百合ですよぉ。」

「えぇ…高梨さんですか?よく解りましたねぇ…?」

「変わってないじゃないのぉ…眼鏡と第一ボタンをしっかりと止めてズボンに入れて、真面目な印象…」

「ところで何で、声かけたのぉ?」

「えぇ…だって、吉川 エリがあなたに逢いたがっていたから。」

「遠藤君は吉川エリに夢中だったでしょ?パシりというか…一途というか…一生懸命だったでしょ。今になって好きだった…死ぬ前に逢いたいって…涙を流して見つけて欲しいって…」

「ちょっと、待って、立ち話も何だから…そこの喫茶店に…」

悪いなぁ…少し出て来るなぁ…


「ごめんねぇ…突然来てしまって…」

「いやいや、良いんだぁ。ふぅ、仕事モードも疲れるなぁ…眼鏡取るなぁ…伊達眼鏡だから…それにしても、懐かしいなぁ…どうしたの?」

「実は、吉川 エリさんは知っているでしょ?今、病院に入院しているのぉ…余命も半年で、遠藤君に最後に逢いたいって泣きながら言うから、探したのぉ…」

「えぇ…吉川さんはどうしたの?」

「わからないけど逢いたいらしい…」

「何処の病院にいるのぉ?」

「国際大正総合病院に入院しているから行ってあげて…」

「それにしても、高梨とは高校以来だなぁ…」

「そりゃ、そうよぉ。私より遠藤君が好きだったし、一途だったからねぇ?」

「えぇ…ちょっと、待って、俺の事が嫌いだったのでは?執事とお嬢様の関係だったと思うけど…」

「はぁ?その関係は高校時代だけなんじゃないのぉ…えぇ…まさか、今までずっと執事とお嬢様の関係だったのぉ…?馬鹿なのぉ…?好きじゃなければ逢わないでしょ?それに私だって嫌いなら会っていないからねぇ。本当に鈍感なんだから?」

「えぇ…そうだったんだぁ!」

「一度ぐらいは男女の関係はなかったのぉ…?」

「まぁ、男女の関係はそれなりにあったけど数えるほどしか…」

「本当にお互いに純粋というかぁ…エリも見栄っ張りというかぁ…恥ずかしがりやで一途なんだから…もう少し、貴方に勇気があれば良かったのに…優し過ぎて…もう、私が泣きそう…本当にお互いに馬鹿なんだから…絶対に逢って来てねぇ…」

「わかった。明日、たまたま休みだから行ってみるよぉ…ありがとうなぁ…。」

「後、これは私の連絡先。今も一人だから、気がねなく電話してねぇ?というよりも、必ずしてよぉ。あぁ…連絡先、教えておいてねぇ。」

「ありがとうなぁ…吉川 エリに逢ったら電話するなぁ!」

「それにしても、今となってなぁ…俺に逢いたいってなぁ…最後に逢ったのは確か…10年以上前になるなぁ…38歳だったなぁ…

まぁ、俺が高校3年の時に隣の席になってからかぁ…17歳から38歳までよく連絡を受けたなぁ…20年以上の付き合いになるとはなぁ…

俺も汗かきながらよく行ったよなぁ…まぁ、恋愛というよりも執事とお嬢様だったなぁ…それにしても、何で、連絡を取らなくなったんだっけなぁ…あぁ…そうだぁ、結婚するからだったなぁ…それにしても、1年も結婚生活が持たなかったらしいなぁ。俺も最後に「幸せになれ!」って冷たくあしらったなぁ…今、思えば、ちゃんと好きだと告白したのは一度きりだったなぁ…全校生徒の前で朝礼台に登って「好きです。付き合って下さい。」って言ったなぁ。

「私に釣り合うと思って…あなたは今日から私の執事になりさい!」って言われたなぁ…懐かしいなぁ…高梨の言った事はあり得ないってなぁ…執事とお嬢様の関係じゃなければこんなに続いたとは思わないしなぁ…」


さてぇ、10年振りに明日は吉川 エリに逢えるのか…楽しみだなぁ…。

「よし、早速、吉川 エリに逢いに病院に行くかなぁ…今、何時だぁ?はやぁ、4時30分かぁ…まぁ、久しぶりに早く行って驚かさなきゃなぁ…それにしても、久しぶりに早く起きたから、小腹が減ったな…駅前に喫茶店はなかったかなぁ?あれ、あんなところに喫茶店なんかあったかなぁ?「花言葉喫茶?」まぁ、良いかぁ、入ってみるかぁ?」

「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ?」

「えぇ…えぇ!お嬢ちゃんはいくつ?どうか考えても、小学生?いやぁ、中学生だろ?あぁ…わかった、お母さんのお手伝いだなぁ…。こんなに、早くから偉いなぁ…本当に偉いなぁ。」

「はぁ?私は、この喫茶店での店長ですよぉ。」

「いやいや、あり得ないって、冗談は顔だけにしなよぉ。お嬢ちゃん。早速、水とおしぼり持って来てよぉ。」

「はい、身分証です。」

「はい、はい、学生証ねぇ…えぇ!マジかぁ?1991年5月13日生まれ?という事は27歳…マジかぁ!あり得ないって、これほど若くて綺麗な人は初めてだぁ!奇跡だぁ!」


「そうなのぉ…お兄ちゃん、私が若くて綺麗だって?奇跡だって?」

「そうなんだぁ!流石はお兄ちゃんの妹だなぁ…良かったなぁ…誉められたかぁ。お兄ちゃんも心配になるなぁ…でも、今はお兄ちゃんの変わりの元君がいるからなぁ…ところで、泣かされたりしてないかぁ?」

「うん。実は泣かされた。」

「えぇ!マジかぁ、あの野郎、一度、絞めなきゃなぁ!慰謝料として100万ぐらいは頂かなきゃなぁ!よし、明日にでも行かなきゃなぁ…」

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、違うよぉ!違うわよぉ。実は、素敵な夜景を見に行ったのぉ…横浜に。それでねぇ…横浜の電光掲示板にサプライズで「あやめに逢えた奇跡に感謝!これからも宜しく!大好きだぁ!」って、書いてあったのぉ…。私、めちゃくちゃ感動して、涙が止まらなくなっちゃた。」

「そうかぁ…あいつは良いやつだなぁ…愛されているんだなぁ…うん、うん、良かったなぁ…よし、明日、元君にお礼を言わなきゃなぁ。」

「大丈夫だよぉ。気を遣うと余計に逢いづらくなるからぁ。もう、お兄ちゃん、泣かないでよぉ!お兄ちゃんが泣くの初めてだねぇ…ありがとう。」


「すいません、すいません、綺麗で可愛い、奇跡のお嬢様?」

「はい、今、行きます。」

「ごめんねぇ。感動させてねぇ…又、元君と逢いに行くねぇ。連絡するねぇ…」


「お待たせしました。どうされましたか?」

「あのぉ、ここには、お水とかおしぼりはないですか?」

「あぁ…すいません、お客さんが可愛い、綺麗、奇跡って言うものだから…お兄ちゃんに電話してました。エヘェ。」

可愛いなぁ…こりゃ、怒れないなぁ…

「はい、お待たせ致しました。お水とおしぼりです。」

「あぁ…ありがとう。ところで、メニューとかはないかなぁ…?」

「あぁ…すいません、今、お持ち致します。今日は、11月1日です。11月1日の誕生花は「カリン」です。カリンだけで申し訳ないですが…すいませんねぇ…。誕生花が一つしかない日もありますが許して下さいねぇ…。花言葉は「豊麗」「唯一の恋」です。

花言葉の由来〜花言葉の「豊麗」は、春に淡く美しいピンク色の花を豊かに咲かせる事にちなむと言われます。」

「へぇ〜そうなんだぁ…カリンってそんな花言葉があるとはなぁ…「喉に良い」が花言葉かと…」

「ちょっと、それは、カリンの効能でしょ?おもしろい人ねぇ…」

「あぁ…そう言えば、食べ物や飲み物のメニューはありますか?」

「はぁ?ここはトースト、サラダ、ハム、玉子とコーヒーだけですよぉ。ハムはベーコン、玉子はスクランブルエッグ又はゆで卵に変更が可能ですけど…」

「あぁ…なるほどねぇ…それなら、メニューは入らないねぇ?」

「ところで、誕生花、花言葉が意味するのは?」

「あれぇ、お伝えしませんでしたか?実は誕生花が意味する花言葉を元に今まであなたが逢いたくてたまらなかった人に出逢える又はこれからの人生において出逢っておかねばならない人(一度でも、逢っていないと駄目ですけど…)に出逢うことが出来ます。逆に、貴方に逢いたくてたまらない人に出逢う事もあります。亡くなっている人に限りますけど…」

「へぇ、なるほどねぇ…って、ちょっと、ちょっと、あり得ないでしょ?このご時世で亡くなっている人に出逢えるのは神様が奇跡を起こすか?亡くなった人が強い思いっていうか、なんだぁ、あれだぁ、幽霊になって逢いにくるってやつかなぁ…余程、霊感でもなければ無理だよなぁ…」

「もしかして、信じていない?確かに、このご時世では神様の奇跡がなければ難しいかもねぇ…でも、ここは異空間だったら?なら、この窓を見ていてねぇ…」

「はい、はい、こうですか?えぇ…、えぇ!!

なんで、外がナイアガラの滝なん?あり得ないけど…ちょっと、ちょっと、どうなっているんだぁ!幻想だよなぁ…どうせ、3Dか何かだろ?騙されないてぇ。」

「何なら、窓を開けて見て下さい。」

「マジかぁ…すげぇ、水しぶきじゃないかぁ!びしょびしょじゃないかぁ…」

「だから、貴方が信じないから…後、床を拭いて下さいねぇ。」

「たくぅ、お客さんに床拭かせるかなぁ…」

「どう、信じました?」

「いやぁ、まだ信じられないなぁ…」

「もう、しょうがないなぁ…なら、今の姿はどうなっていますか?」

「何言っているんだよぉ。ジーパンにシャツにジャケットだろう?えぇ…どうなっているんだぁ!ブレーザ…学生服じゃないかぁ…それも、一番恥ずかしい頃のままとは…おい!恥ずかしいから戻してくれ…わかった、わかった信じるから…」

「なら、戻してあげましょう。」

「いやぁ、すごいなぁ…こんなことがあるんだなぁ…。」

「それじゃ、「カリン」〜「豊麗」、「唯一の恋」の意味する人が来ますので、素敵な時間をお過ごし下さいねぇ。」

「はぁ…はい。」


カラン、コロン〜


「お久しぶりですねぇ?お元気でしたかぁ?あれぇ、何年振りかなぁ?」

「はぁ?誰ですか…こんな綺麗な人は初めてお逢いしますが…」

「ちょっと、ちょっと!10年経って忘れるって失礼じゃない?遠藤執事!」

「えぇ?えぇ!えぇ~、マジかぁ!あり得ないって…なんで、なんで、吉川さんがいるのぉ!あり得ないって、マジでぇ!これから、吉川さんに逢いに行くのにぃ!」

「ごめんねぇ…間に合わなかった。今は病院に行っても亡くなっているわぁ。

もっと、正直になっていれば良かったなぁ…もっと、もっと、お互い正直になっていれば良かったなぁ…ごめんねぇ、遠藤君、ごめんねぇ、私は、好きでした。」

「えぇ…えぇ!ちょっと、お嬢様どうしたんですか?吉川 エリさんですよねぇ?泣かないで下さいよぉ。執事の遠藤 正幸ですよぉ。」

「もう、貴方は私の執事なんかじゃないのぉ…私が正直に好きだったと言えなかったから「私と釣り合うのぉ…今日から私の執事になりなさい!」って言ったのぉ…私は、みんなの前で告白されたのは生まれて始めてだったのぉ…すごく、うれしくて、この人と一緒にいたいと思っていたのぉ。でも、貴方の前に行くと強がっていたし、命令したし、直ぐに駆けつけてくれるし、優しかったし、私の誘いは一度でも断らなかった。嬉しい反面、私の事が好きじゃないのか?心配になった…だから、お見合いをして結婚すると言ったのぉ…そしたら、「幸せ」になれって、冷たい態度をとられた…私は、泣いたわぁ…私が馬鹿だったって…私は、追いかけたけど…以前のような勇気がなくなっていたのぉ…でも、いつかは逢いに来てくれるって信じていたのぉ…」

「お嬢様は私と釣り合うわけないと思っていた。俺は学力も財産もなかった…頭も良くないし、見た目は暗いし、視力も悪くてめつきも悪いし、手を繋いでくれるようになってから、もっと執事として守りたいと思った。何よりも側に入れただけで幸せだった。お嬢様の笑顔を見ているともっと、優しくなった。でも、どんどん、気持ちが遠くになってきて苦しくなった。男女の関係になっても前に進めなくなっていた。ごめんなぁ…でも、逢いたかった。今でも、好きです。」

「もう、お嬢様は辞めて!最後ぐらい、エリと呼んで!」

「俺はエリが大好きだった!一緒に生きたかった。」

「もう、もっと早く気付いてよぉ。私も同じ気持ちだったんだから…」

「そうだったんだぁ…でも、本気で好きだった。」

「ごめんねぇ…泣かないでよぉ。初めてだねぇ…正幸が泣くなんて…貴方はいつも笑顔でいつも、私の事を大事にしてくれたけど…本当は怒ったり、泣いたり、笑ったり、はしゃいだり、して欲しかったんだぁ…私が1人で怒ったり、泣いたり、はしゃいだりしたけど…ごめんねぇ。」

「馬鹿野郎!何でだよぉ、何で、何だよぉ!気持ちが伝わっているなら、「もっと、もっと、好きだとか…言ってくれでば良かったじゃないかぁ!」

いつも言う事は「遅い」「私の事好きでしょ?」「嫌いになろうかなぁ…」じゃないかぁ!いつも顔色を伺っていたよぉ。釣り合わないって…思いながら必死だった。」

「私が悪いのぉ…ごめんなさい、本当にごめんなさい。」

「ちょっと、来い!」

「ちょっと、何するのぉ!」

熱い抱擁をしながら激しいキスをした…

「正幸からは初めてだねぇ…ありがとう。でも、私は、もう、この世にはいないのぉ…私は、昨日の深夜に急性骨髄性白血病で亡くなったのぉ…貴方が病院に行ったら、亡くなっているわぁ…」

「今、エリに逢っているんだぁ!現実に戻すなよぉ。ありがとうなぁ…」

すいません、すいません、そろそろ、食事が冷めますので…

「そうだなぁ、エリ食べよう。」

「美味しいなぁ…そうねぇ、正幸!」

「何か、もっと早く、こんな関係になれたら、幸せだったなぁ…」

「馬鹿だなぁ…幸せだったよぉ!俺は、エリの怒った顔、笑った顔、泣いた顔など色々とみせてくれたよなぁ!」

「私も、同じように見たかったなぁ…正幸のそんな姿…」

「泣くなって、おい!泣くなっていっているやろぉ、ボケっえ!三途の川まで流したろかぁ…」

「泣かないよぉ…でも、ビックリした…初めてだなぁ。私に怒ったのぉ…ありがとうねぇ。」

「冗談だよぉ。」

頭をポンポンとなでなで

「やっぱり、笑顔の正幸が大好き!そろそろ、行くねぇ。最後に逢えて良かったよぉ!ありがとう。紅葉が見頃になる頃には思い出してねぇ…」

「もちろん、エリの事は絶対に忘れないからかぁ!」


「ありがとうございました。何とお礼を言って良いのか…私も、もっと早く伝える事が出来たら良かったなぁ…っと。でも、それで良かったのかも知れません。ありがとうございました。ちゃんと、エリの最後の姿に挨拶してきます。ありがとうございます。」

「ちょっと、ちょっと、大丈夫なのぉ…泣いているじゃない。」

「だめですよぉ…涙が溢れて、溢れて涙が止まりそうもないですよぉ…」

「もう、正幸ったら、笑顔にならなきゃ!」

「えぇ…まだ、行ってなかったんだぁ…」

「今回は私が見送ります。ちゃんと、私に逢って来てねぇ…ありがとう。」

熱い抱擁と熱いキスをする。

「あぁ…見てられないなぁ…出口はこちらです。」

「はい、はい、エリさんの出口はそちらです。」


「はぁ、今回も素敵な出逢いがあったなぁ…最初が肝心だなぁ…なるほどなぁ…それにしても、お互いの気持ちがやっと通じたなぁ…良かった、良かった。いやぁ、ちょっと待って、良くないよねぇ?何か忘れているよねぇ。しまった会計。お客さん、会計!会計!!」


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