第13話 秋が深まる頃には…
私が、あの喫茶店で澤村 あやめに出逢ったのは奇跡だったのか?それとも、偶然だったのか?必然だったのか?又は、神様のいたずらだったのか?悪魔のささやきだったのか?
未だに謎めいていて、不思議な感覚がある。
しかし、あの時を思い出すととめどもなく涙が溢れ、温かな気持ちになり、前進する事が出来るのであった。
吉村 由香(46)は介護施設で介護福祉士としてパートで時給1500円で週に3回、5時間程働いていた。
たまの休みになると高校2年になる優子と一緒に駅前のデパートに買い物に行くのが唯一の楽しみになっていた。
しかし、最近は彼氏が出来た事により、「ごめんねぇ、その日はデートなのぉ…」っと素っ気なくなってしまった。
その為、パートの同僚とランチを楽しむ程度の付き合いしかしていなかった。
しかし、たいていははヘルパーは時給が安いやら同じ仕事しているのに資格があるとこうも違うなどの愚痴と最後は夫の悪口とかで終わってしまう為に老後の蓄えにした方が良いと感じていた。
とはいえ、最近は夫も外出どころか、近場さえも連れて行ってくれずに寂しい思いを感じるのだった。
その為、一人になると決まって「あぁ…何か、刺激がないなぁ…習い事でもしたいなぁ…でも、ダメだなぁ。夫の給料も雀の涙だし、家のローンも毎月10万以上かかるし、母親も今年で76歳になるし、父親は80歳になって脳梗塞で右半身が麻痺…で外出するのも難しくなって、娘の学費に…」と愚痴を言うのであった。
たまたま、娘が早く帰ってくると「一人ごと多いやら、家は貧乏ですから常勤になったら…夜勤でもすれば?看護士になれば良かったじゃん!親の介護を姉にやらせれば…」などと言われるのだった。
そんな事を言われるとつい大学を行く事を断念した当時を思い出すのであった。
「由香は進路決まった?」
「そうねぇ…神海大学の看護学科を受験しようかと…」
「そうなんだ…でも、あそこの大学は学費もかかるし、お姉さんも浪人しているから家族と相談しなきゃねぇ…」
「そうだねぇ…」
家に帰って両親に進路の事で話をしていたら
「あんたねぇ!私が浪人しているのは知っているでしょ?馬鹿なのぉ…あんたは底辺の高校でしょ!大学受験しても落ちるだけなんだから適当に就職しなよぉ。それに、安い団地に住んでいる意味解る?」と一つ上の姉が言ってきた。
それに、対して「由美。おまえの気持ちは解るが…両親は由香が真剣に進路を考えたんだから、受験させてあげたいなぁ…」と伝えた。
「はぁ、馬鹿じゃない?大学受験に失敗したら許さないからねぇ!」と捨て台詞を吐いたのであった。
その後、私は、大学受験に失敗し、私が第一志望にしていた大学に姉は滑り止めとして受験してその大学に行く事になった。
姉は「あなたが馬鹿なくせに予備校に通って浪人生活をイライラさせたのが原因よぉ!何で、あんたが第一志望にしていた大学に私が通わなきゃならないのよぉ!あり得ないですけど…お願いだから、死んでちょうだい!」と包丁を出して切りつけた。
そんな出来事を受けて、両親は危険を感じ姉は大学から近いアパートに一人暮らしを始める事になった。
たまに、私と鉢合わせすると「血相を変えて、まだ生きていたかぁ…くたばっちまえ!」と叫び、髪の毛を掴みよつんばになり、大人が仲裁に入るのだった。
大人が仲裁に入れない時は警察がくるのが頻繁になっていた。
それから、父親にも「おまえがくそヘタレで安月給とりだからこんな事になった。私の人生を返せ!」と叫び散らすようになってしまった。
その為、母親は大学の近くのアパートに通う事が日課となり、相談役に徹するようになった。
その後の姉は神海大学の理工学部を卒業後、東奥大学の大学院まで進学した時からカルト宗教にはまり、中退をしてしまった。
その後、音信不通になったところに母親に連絡が入り、由香が結婚した事を母親から聞いた後を最後に母親も由美との消息が途絶えてしまった。
その為、姉の由美とは20年近く顔を合わせていないのであった…。
ところが、突然、警察から連絡が入ったのだった。
「恐れ入ります。こちらは高崎警察署です。こちらに中野 由香さんはおりますか?」
「はい、私ですが。」
「あの、申し上げにくいのですが…中野 由美さんはご存知ありますか?」
「はい、私の姉になりますが…」
「実は、申し上げにくいのですが高崎市のアパートで栄養失調で孤独死しておりまして、実家にご連絡する前に妹さんの名前が遺書にありまして…住所と連絡先が書いてありましたので…」
「あぁ…そうだったんですか?」
「一度、こちらに来て頂けませんか?」
「はい、お伺い致します。」
「住所が群馬県高崎市○○3丁目5ー201です。」
「お母さん何処に行くのぉ?もう、18時回っているのに…」
「姉が亡くなったから、実家に行ってくる。」
「えぇ…20年近くもあっていなかったのに…何で、お母さんに連絡が入るのよぉ!あり得ないなぁ…」
「しょうがないわぁ。唯一の肉親だから、母親から連絡先ぐらいわぁ、聞いているわよぉ。」
「お父さんには?」
「姉が亡くなったとだけ伝えておいて、実家からは私から連絡するから?」
「じゃ、行って来るねぇ!」
「ただいま、母さん、音信不通になっていた由美姉さんが高崎で…」
「そうなんだよぉ…私もびっくりして今、行こうとしたところなんだけど…流石にこれからでは着く頃には22時を過ぎるから明日にしようかと…」
「そうねぇ…亡くなった人が生き返るわけもないから、明日の始発で行きましょう?」
「お父さんはどうしようかぁ?」
「大丈夫よぉ…峰夫おじさんに頼んだから…私達は峰夫おじさんの車で行くけど…由香は乗って行くかい?」
「私は、正直、行きたくないけど…唯一の肉親だから大人として一人で始発で高崎に行くわぁ…」
「そうかい。わかったわぁ…」
「ただいま」
「お母さん、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないわよぉ…私も突然、警察から電話でしょ?あんたが何かしたか?お父さんが犯罪に巻き込まれたと思ったわよぉ…」
「ちょっと、ちょっと、私が万引きでもしたように言わないでよぉ。」
「ごめん、ごめん、冗談よぉ…」
「でも、本当にびっくりしたんだから?家族になにかあったら、どうしようって…」
「おいおい、でも姉さんも肉親だろう?」
「そりゃ、わかっているけど、昔、殺されかけたんだからねぇ…私の気持ちはあんたたちには解る?」
「わかった、わかった…でも、少し冷静になろう…」
「そうねぇ…私も感情が高まっちゃった。」
「そう言えば、俺も葬儀には参加するけど…」
「そうねぇ…高崎について詳細が決まったら連絡するねぇ?」
「ところで、明日は高崎にはいつ行くんだ?」
「明日の始発で行こうかなぁ…っと」
「そっか、礼服は持って行かないとなぁ…」
「そうねぇ、3日間ぐらいは高崎にいると思うなぁ…」
「そうなるよなぁ?俺も由香の苦労が解るから会社に連絡を入れて有給を申請するよぉ…」
「あぁ…私もバイト先に電話入れなきゃ…」
「おい、俺が伝えておくよぉ…その後、電話しておけば、バイト先も考慮してくれるからなぁ…流石はお父さんだなぁ…」
「そりゃ、そうだぁ、由香より5歳はお兄さんなんだからなぁ…」
「なら、たまには、旅行に連れてねぇ…」
「あちゃ、そうだなぁ…最近、行ってなかったなぁ…わかった、わかった、後で優子と高崎に行くからたまには、温泉でも行こう。」
「ちょっと、遊びじゃないんだから?」
「わかっているって、温泉ぐらいならいいだろう?」
「そうねぇ、それにしても、あなたには迷惑かけてしまうわねぇ?」
「大丈夫だぁ、由香ちゃんの苦労なら買ってでも、するさぁ!」
「ありがとございます。なら、今度はお父さんの介護頼むねぇ…優子と慎一さんに…」
「私もバイト増やさないといけないしなぁ…?頼まなきゃ…」
「あちゃ〜!もう、お父さんが口をすべらすからぁ!」
「あのぉ〜、高崎から戻ってからその件は…」
「考えておきますよぉ。でも、ありがとうねぇ。」
「じゃ、ちょっと早いけど優子、あなた、行って来ますねぇ…あぁ…そうそう、最近、物騒だから戸締まりはしっかりして、あぁ…それと今日は燃えるゴミの日だから、学校に行く前に出しておいて?大丈夫よねぇ?優子?」
「わかってますよぉ。」
「あぁ…そうそう、高崎について、お姉さんの葬儀が決まったら連絡入れるから後で合流してねぇ…大丈夫?」
「由香、大丈夫だよぉ。優子と一緒に行くなぁ。」
「あれぇ、いつからお母さんの名前を下で呼ぶようになったの?」
「おい!お父さんをからかうなうなぁ…」
「あれぇ、お母さんも顔が赤いなぁ…」
「もぅ…ありがとう、慎一さん」
「じゃ、行ってくるねぇ…」
「もぅ…優子たら、いつの間にあんなに大人になったのかしら?慎一さんとも久しぶりに…もう、私ったら、やだぁ…何、言っているのかしら…それにしても、姉さんはこの20年近く、どうやって、生きてきたのかなぁ…何で、アパートで一人で栄養失調で孤独死したのかしら?友達はいなかったのかしら?気になるなぁ…まぁ、良いわぁ。それにしても、お腹がすいたなぁ…何処かに喫茶店はないかないかなぁ…?この時間にやっているのは吉野家ぐらいかなぁ…あれぇ?「花言葉喫茶…」面白そう…入ってみようっと。」
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ?」
「はい。えぇ!どうしたのぉ?お嬢ちゃんはこの時間に働いてはダメでしょう?小学生?中学生かなぁ?」
「はぁ?こう見えても、正真正銘の大人ですよぉ!もう少しで30歳になりますよぉ!」
「またまた、お母さんのお手伝いでしょ?偉いわねぇ?お利口さんで可愛いからお姉さんは許しちゃうけど…」
「もう、はい!平成3年(1991)5月13日…」
「あぁ…本当だぁ…28歳って!奇跡よねぇ?あり得ないですけど!!ちょっと、落ち着かせて…」
「もう、驚き過ぎですよぉ…」
「そうなのぉ…今ねぇ…可愛い、奇跡?あり得ないって…」
「確かになぁ…どんどん、可愛いくなってきているなぁ…あやめは…」
「そっかなぁ?月の姉さんから化粧水と乳液とファンデーションもらってつけているからかなぁ?」
「そうそう、先週、お兄ちゃんの部屋を綺麗にしてくれて、美味しい料理を作ってくれて、ありがとうなぁ…でも、何時から彼氏出来たんだぁ…?」
「あれぇ、教えてなかったけぇ?たまたま、ここに来た、元君…まだ若いのに…ラーメン屋の店長してるのぉ…結構、苦労していたし、愛情に飢えていて何とかしたいなぁ…って思ったら付き合いはじめた。とても、素直だし、頑張り屋だし、何よりも一途だからこっちも好きになった。イケメンだもん。」
「そうなのかぁ…いくつ何だぁ。まだ、32歳だったかなぁ…」
「そっか、丁度いいかもなぁ?
でも、解っているのか?こちらの世界の掟?」
「解っているわよぉ…こちらに来る時は寿命が縮む事、100日でしょ?だから、今回は、一番弟子の施設に入っている佐藤 和義(72)に100日を分けてもらったけど…」
「あやめ、よく聞け、人の寿命を縮めたり、伸ばしたりするのはだめなんだよぉ…例え、好きな人の為でもなぁ…辛いかも知れないけど…解ってくれ。」
「だって、私の事好きになってくれたから…お兄ちゃんに紹介したいなぁ…って思って…」
「解った、解った、泣くなよぉ…弱ったなぁ…今回だけだからなぁ、100日分はあやめの寿命を縮めたからなぁ…」
「そっかそうすれば良かったんだなぁ。」
「おい、おい、あやめ。おまえの寿命はそんなにないぞぉ。」
「えぇ!そんなにないのぉ?」
「冗談だぁ…後、1000年ぐらいかなぁ…」
「もう、心配しちゃった。」
「そう言えば、元君とは仲良くしているのか?」
「何とか、やっているよぉ…今度、デートするよぉ…」
「そっか、仲良くやっているならいいかぁ…ところで、来週のアルバイトの件は大丈夫かぁ?」
「解った!じゃ、元さんと行くねぇ!楽しみにしていてねぇ?それにしても、お兄ちゃんも百合姉さんとは何時結婚するのかなぁ…?付き合って100年でしょ?」
「そりゃ、そろそろとは思っているけど…最近は結婚をせがまれているからなぁ…百合には34歳までにはとは伝えているよぉ…解ってるけど、月の天女の百合姉さんは今、忙しいからなぁ…落ち着いたら、この世界に定住するから、20年後になるかなぁ…」
「なら、早いねぇ…楽しみだなぁ…じゃ、こっちでは、お兄ちゃんは37歳、百合姉さんは34歳には結婚だなぁ…おいおい、おまえがウキウキしてもなぁ…」
ちょっと、ちょっと、店長?可愛い店長?いませんか?
「はい、ただいま。お兄ちゃん、また、電話するねぇ?お客さんから呼ばれちゃった…またねぇ!」
「はい、お待たせ致しました。何か?」
「はぁ?何か?ちょっと、何時まで待たせるのぉ…ここにはおしぼりや水は出ないのかしら?」
「あぁ…すいません。可愛いって言ったから、嬉しくなって、お兄ちゃんに電話していました。今、お持ち致します。エヘェ。」
「ちょっと、可愛いじゃない…怒れないわぁ…」
「はい、お待たせ致しました。おしぼりとお水です。」
「はい、ありがとうねぇ。ところで、メニューはありますか?」
「はい、今、お持ち致します。今日は10月1日です。今日の誕生花と花言葉です。まずは「ハギ」〜「思案」「内気」「柔軟な精神」です。
花言葉の由来〜花言葉の「思案」「内気」は、ハギのひかえめでこまやかな美しさに加えどことなく寂しげな風情にちなむともいわれます。」
「なるほど…そうなんだぁ…勉強になるなぁ。」
「次に「モミジアオイ」〜「温和」「穏やかさ」です。
花言葉の由来〜花言葉の「温和」はしっとりとした深紅の花の上品な雰囲気にちなむともいわれます。」
「なるほど、なるほど…ためになるわねぇ。ところで、食べ物や飲み物のメニューはありませんか?」
「はぁ?ここは、トーストとサラダとハムと卵とコーヒーだけです。ハムはベーコン、玉子はスクランブルエッグ又はゆで卵に変更は可能ですけど…?」
「なるほど…確かにメニューは入らないねぇ?それじゃ、ベーコンとスクランブルエッグでお願い致します。」
「はい、かしこまりました。ところで、誕生花は選びましたか?」
「はい、誕生花が意味する事は?」
「あれぇ、お伝えしていませんでしたか?誕生花が意味する花言葉が意味する言葉を元に今後の人生において、出逢っておかねばならない人、もしくはあなたに逢いたくて仕方がない人に出逢えるんです。亡くなった人に限りますけど…」
「はぁ?このご時世にそんな奇跡みたいな事が起こるわけないでしょ?あり得ないでしょ?」
「そう思います?確かに、このご時世なら神様が奇跡でも起こさないとないでしょうが…ここがあなたが住んでいる世界だと…」
「はぁ?えぇ…ここが異空間だと?あり得ないでしょ?」
「もしかして、信じていない?なら、こちらの窓を見ていて下さいねぇ?」
「はい、はい…って、ちょっと、ちょっと!何で、ピサの斜塔が…イタリア?」
「触ります?窓をあけて触ってみても良いですよぉ…今ならねぇ…観光客もいないですから…」
「えぇ…ピサの斜塔を触っている…」
「まだ、驚くのも…こっちの窓を見ていて下さい。でも、消して開けないで下さい。引き込まれます。」
「えぇ!月!月よねぇ?こんな間近に月って…あり得ないって、あり得ないんですけど…ちょっと、ちょっとどうなっているのぉ…はぁ、外の空気吸ってくる。」
「駄目!!今は駄目です。外に出たらイタリアか?月がある宇宙になるか?私にも解らないです。どっちにしろ、生きて帰れませんよぉ…」
「えぇ!危なかった…確かに、異空間だなぁ…こわぁ…」
「信じてもらえたみたいですねぇ?では、花言葉は選びましたか?」
「そうだなぁ…「モミジアオイ」〜「温和」「穏やかさ」でお願い致します。」
「はい、かしこまりました。それでは、素敵な時間をお過ごし下さい。」
「はぁ、誰が来るのかしら?楽しみだなぁ…」
カラン、コロン〜
「あなたは、由香?由香よねぇ?やっと逢えたわねぇ…お姉ちゃんよぉ…由香、ごめんなさい、本当にごめんなさい、私が馬鹿だったのぉ…許して、許して、私を許してちょうだい。あなたにはひどい事をしたわぁ…唯一の肉親で可愛い妹を傷つけてしまいました。もう、私は、最低な姉です。」
「ちょっと、ちょっと、本当に姉さんなのぉ…今から、あなたに逢いにいくんだけど…どうなっているのぉ…それに、あなたに妹とは思われたくないし、許すわけにはいかないわぁ?泣いていても私は、冷静に話も出来ないでしょ?とりあえず、あなたの話を聞かせてもらっていいかしら?」
「はい…私は、あなたの人生をめちゃくちゃにした最低な姉です。あなたを死ぬ程、憎み、暴力と暴言を浴びせました。高校を卒業をして就職をしても嫌がらせを繰り返し不良仲間に頼んであなたの職場にたむろさせてクビにしてバイト生活をして、フリーターをしていた20代を笑っていました。私は、その後、大学院に進み、カルト宗教にはまり、家族と連絡を経ちました。我に帰った時には30歳を過ぎていたけど…母親に連絡を…したら、あなたが苦労した話を涙を流しながら聞いたわぁ…あなたは、バイト生活をしながら、27歳でホームヘルパー2級を取って、30歳で結婚して、育児をしながら、介護福祉士を取った話を聞いたわぁ…泣いたわぁ…
私は、その間は仕事もやらずに、人の不幸になる事だけを生き甲斐にしていたわぁ…私の為に貢がせてはそのお金で生活していたわぁ…最低な女だったわぁ…
母親はそんな事情を知っては貢いだ男に謝罪して、お金を返していたわぁ。
その後は、夜の仕事で生計をたててホストの間に子供が出来たけど中絶したわぁ…私は、今までにないぐらいに泣いたわぁ…そして、30歳も半ばに精神病院に入って、40歳で退院して、ホストと離婚して、生活保護で最後は栄養失調で亡くなったわぁ…」
「お姉ちゃん、一度で良かったから、連絡をすれば良かったのに…もう、心配したんだからねぇ…私が悪かったって、毎日、私は、死ぬ事ばかり考えていたんだから…ごめんなさい。」
「由香、お姉ちゃんが悪かったのぉ…辛い思いをさせたねぇ?泣かないでぇ…お姉ちゃんを許してくれとは言わないわぁ…」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、温和で穏やかさを持っていて、頭が良くて、スポーツが出来るお姉ちゃんを尊敬していたから、お姉ちゃんを追いかけていたんだよぉ…何で、何で、私を殺そとしたのぉ…何でよぉ…何で!そんなに何で、憎かったのよぉ!私の看護士になる夢を邪魔したのよぉ…」
「それは、あなたが予備校の時に付き合っていたのが私の彼氏だったからよぉ…あなたは知らなかったかも知れないけど高校1年の頃から内緒で付き合っていたから…」
「えぇ!知らなかったわよぉ…何で、何で、そんな重要な事話さなかったのよぉ…知っていたら、付き合わなかったわよぉ…連絡もしなかったわよぉ…」
「由香は私とは違って、陽気で活発で明るいし…私には無いものを持っていたから…言えなくて、私は、内気でネクラで勉強しか出来なかったし、スポーツもあなた程ではなかったから…拓巳さんには伝えたけど…はぁ?付き合ってないけど…おまえが一方的に好きになったんだろう?妹もそれ程好きじゃないけど…でカチーンとなって、本来は拓巳さんを殺そうと本気で思った…でも、出来なくて由香を殺そうとしていたのぉ…ごめんなさい。本当にごめんなさい…あなたを見ると拓巳さんの顔が浮かんで…その都度、気持ちが溢れていたのぉ…本来なら家族に打ち明けておけば良かったのに…ごめんなさい。」
「もう、お姉ちゃんたら、ちゃんと話してくれでば私もここまでこじれないですんだのに…私の方こそ、ごめんねぇ…もう、泣かないでよぉ…ありがとう。」
あのぉ〜、そろそろ料理が冷めますので、どうぞ?
「由美姉さん食べよう?」
「そうねぇ、美味しいねぇ…由香。」
「本当に美味しいねぇ…お姉ちゃん。」
「もう、お姉ちゃんたら、泣かないでよぉ…一人で抱えて辛かったんだねぇ…頑張ったよぉ…本当に頑張ったねぇ…私の最高のお姉ちゃん…もっと、もっと、早く打ち明けてくれでば良かったのに…なんで、なんで、亡くなってから伝えにくるのよぉ…ひどいよぉ、ひどいよぉ…」
「ごめんねぇ、ごめんねぇ、由香、泣かないでよぉ…ありがとうねぇ。」
「お姉ちゃんはもう、行かないと行けないわぁ…秋の深まる頃には…思い出してねぇ…」
「ちょっと、ちょっと、まだ、行かないでよぉ。お姉ちゃん、お姉ちゃん!!お姉ちゃん〜!!」
「ありがとうございました。何とお礼を言えば良いのか…この出逢いがなければ私は、最低な妹のままでした。ありがとうございました。お姉ちゃんが私を恨んだ理由、殺したかった理由がやっと理解出来ました。私がすべての原因の根元だった事を…ありがとうございました。」
「いえいえ、お姉ちゃんもあなたの事を一番愛していた事が解るでしょう?私は、これ以上お伝え出来ませんが…こちらこそ、ありがとうございました。お姉ちゃんには逢えなくなるけど…ちゃんと、お別れをして来て下さいねぇ?ありがとうございました。…出口はこちらになります。」
「はぁ、今日も素敵な出逢いかあったなぁ…それにしても、姉妹そろって好きになる人はどんな人だったのかしら?気になるなぁ…えぇ…これは知らない方が幸せねぇ…ウフフ…そう言えば、何か忘れているようなぁ…何だったかなぁ…あぁ…しまった。会計?お客さん、会計!会計!!」
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