第4話 ある日の夜です! (4) 改修版

 でッ、告げ終えると急に辺りは、『シ~ン』と、静まり返る。


 すると僕の脳裏には、先程の淑女のお姉さま達の忠告の言葉が脳裏を横切る。未だ結婚をしていない上に、二十歳そこそこの働き盛りで体力の有り余っている僕は、物の怪の娘さん達に連れ去られ神隠しに遭わないようにと告げられた忠告の言葉──。


 だから早く片づけを済ませ、この漆黒の闇に包まれている中国山地の山里から早く立ち去り、明るい街中まで逃げ帰るようにと告げられた言葉なのだが。


 う~ん、今の時期が夏ではなく、冬のためだろか?


 いくら辺りが、恐ろしい漆黒の闇に包まれ如何にも、物の怪さまが出そうな雰囲気だとしても、僕は全くといってよいほど恐怖を感じないのだ。


 いくら辺りから騒めき──。風が吹きゴソゴソと木や草を揺らす騒めきの音が僕の耳に入り聞こえてきたとしても。何故か、真夏の時のように、僕の背筋が凍り付き畏怖を感じるようなことはないから不思議でならないのだ。


 う~ん、あれって何故だろうね?


 いつ僕自身、恐ろしい目に遭うかもしれないのに夏のような震え慄くことはない。


 だって傍から見ている皆さんも経験あるとは思うのだが?


 これが真夏の夜の怪談だと、ちょっとした小さな雑音でもビクビクとしてしまうのに。


 これが冬の夜の怪談だと僕は畏怖を感じないから不思議に思う。


 まあ、そんなことを考えると、いくら先程淑女のお姉さま達に早く帰宅の途につくようにと忠告を受けた僕だが、やはり呑気……。マイペースで片づけをおこなう。


 いくら物の怪の若い娘さんに見詰められ、婿として狙われていたしてもね。ゆっくりとマイペースで片づけをおこなう。


 冬の夜の外は寒くて冷たいから僕の指先がかじかむからね。


 ならば、早く片づけて帰宅の途につけば?


 と、いうことになるのだが?


 僕が慌てて片付けをして帰宅をしても、僕の住んで居る六畳一間のアパートには誰もいない。


 だから慌てて帰宅をしてもヒーターで部屋が温まるまでは、外の外気と一緒で冷たいままなのだ。


 と、なると? 恐ろしい漆黒の闇に包まれる日は、物の怪の若い娘さん達の婿探しの日だから、彼女のいない僕を、誰か連れ去り、冷えている身体を温めてくれないだろうか?


 と、僕は冗談めいた想いを募らせながら、外の冷たい外気と争いながら片づけを進めるのだった。



 ◇◇◇◇◇

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