僕とお狐さまとの物の怪らしい日和……
かず斉入道
第1話 ある日の夜です! (1)
「お兄さん、未だいたのかい? 夜遅くまで大変だね?」
僕を労ってくれる声が何処からともなく聞こえてきた。
「えっ? あああ、所長さん、お疲れさまです」
僕は労いの言葉をくれた男性にお礼を告げる。
そして告げると僕は直ぐに。
「また、来月もお願いします」と、嘆願を告げた。
「あああ、いいよ。また来月もおいでお兄さん……。帰りの道も気をつけて帰りな~。車で事故をしないように~」
「えっ? はっ、はい、ありがとうございます。所長さん……。所長さんも帰りの道中は気をつけてくださいね~」
「うん、ありがとう~。じゃ~、来月~」
僕に手を振りながら農協の購買部の所長さんは多分? 彼の声色からすると、僕に笑みをくれながら最後にこう告げるとね。漆黒の暗闇の中へと消えていった。
僕はそんな所長さんが、漆黒の闇の中に消える迄の間──深々と頭を下げながら彼のことを見送ったのだよ。
まあ、とにかくこんな日常茶飯事の出来事と、ごく当たり前な日常会話を僕は農協の所長さんとしたのだ。
でもね? 先程から僕が何ども言葉を漏らした通りで、辺りはもう既に漆黒の闇の中──。真っ暗になっている。
だからこの農協の購買部の所長さんは、僕に帰宅の途を、気をつけて無事故で帰宅をするようにと労いの言葉をくれたのだ。
う~ん、でもさ、いくら農協の購買部の所長さんが労いの言葉をくれても、未だ出店の片付けが終わらない僕は、帰宅をすることができない。いくら辺りは真っ暗闇であったとしても。唯一の光である購買部の店舗の外に設置してある数台の自動販売機の光だけを頼りに僕は出店の片づけをしないといけないのだ。こんな暗闇の中だとしてもね。
特に今は未だ一月の上旬末だから季節は冬──。
今年は何故だか? 雪が少なくこの中国山地の中の、農協の購買部であろうが、辺りの雪景色は無く販売の仕事ができたから珍しい年だな? と、僕は想った。
う~ん、でも、いくら例年に比べ雪が降らないといっても。外は相変わらずとても寒い。
それこそ? 僕自身の手がかじかんでいる中での片づけの作業中だから『ジンジン』と指先が痛む。いくら作業用の軍手をはめての片付けだとしてもね。
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