魔女のおまじないと「おはよう」(2)

教室に着くまで、ヒナコちゃんたちにも誰にも会わなければいいなと、サチは願っていました。

でもどうしても、クラスの子たちには、何度かすれ違います。

サチは、下を向きたくなるのを、ぐっと我慢しました。

だって、サマンサと約束したのです。




学校に行く、と。




辛くても、学校に行く。

友達と呼べる子が一人でも出来るまでは、頑張る。

まずは挨拶から、クラスの子たちに声を掛けることを、頑張る。

とにかく、頑張る。


サチはもう、お父さんやお母さんばかりでなく、サマンサを悩ませるようなことは、やめようと思っていました。

サチのせいで、三人や先生を悩ませたことは、悪いことをしたのではないか、と思っているのです。

大人にとっては、そんなに大きな問題ではなかったかも知れませんが、サチにとっては、一大決心をするほどだったのです。


「おはよう!」

サチはまた一人、クラスの子とすれ違いました。




「学校に行く」

そう、サチがお父さんとお母さんに言ったのは、サマンサの家から帰ってきて、すぐのことでした。

サマンサが、故郷へ帰ってしまうこと。

もうサチの家の隣には、戻ってこないということ。

サチが学校に行けるようになったら、すぐにでも故郷の妹のところへ、行ってしまうこと。

全てを打ち明けた上で、そう言ったのです。


学校へ、行くと。


お父さんとお母さんは、色んなところでびっくりした顔をしました。

お母さんは、すぐにサマンサの家に飛んで行って、サチの言ったことを確認しました。

にわかには、信じられなかったのでしょう。


サマンサはお母さんにとっても、憧れの女性でしたから。

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