転校生と魔女の家(13)

「……いつ行くの?」

しばらくして、サチが言いました。

「新学期が来て、サチが学校に行けるようになったら、すぐにでも」

サマンサが、静かに答えました。

「寂しいよ……」

サチは思わず、ぽろりとこぼしました。

仲良しがいなくなるのは、転校した時に経験済みです。

「大丈夫ですよ、サチ。私のあだ名を知っていますか?」

サマンサは、いらずらっぽく笑いました。

「……『魔女』……?」

サチは、遠慮がちに言いました。

サマンサに向かって、サチが“魔女”と呼ぶのは、実は初めてのことでした。

この優しい人を、“魔女”と呼ぶのは、何だか変な気がしていたからです。

「そうです! だから、おまじないをしますよ」

「おまじない?」

「そうです。サチにこの先どんなことがあっても、仲良くそばにいてくれる友達が、出来るように!」

サマンサの言葉に、サチはちょっとだけ、複雑な気持ちになりました。

心の中では、サマンサにずっとそばにいて欲しかったからです。

でも、言いませんでした。

「どんなことをするの?」

サチは、わざとらしくならないように気をつけて、明るく聞きました。

「内緒です。サチに言ったら、効果がなくなってしまいますからね」

サマンサは、とても楽しそうです。

サチにいたずらを仕掛ける時の、楽しそうな顔と、同じでした。


新学期が、日一日と近づいてきます。

でも、サチの気持ちは穏やかでした。

まだ「さよなら」じゃない。

まだ「お別れ」じゃない。

そう思って、貴重なサマンサとの時間を、大切に過ごしていました。




そうでもしないと、泣き出してしまいそうでしたから。




そして、新学期が始まりました。

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