「さよなら」までのカウントダウン(1)

次の日から、サチと一緒に、ナナミちゃんとユキちゃんと、トシヒデくんが登校するようになりました。

教室に入るまでに、何度もクラスメイトたちとすれ違います。

でも、サチの周りには三人が居てくれるので、以前のようにびくびくしながら、挨拶をしなくても、良くなりました。

そして、その日からほんの少しずつ、挨拶を返してくれる子たちが、増えてきました。


そんなある日。


「ねえ、さっちゃん」

放課後、校庭の鉄棒で遊んでいる時、トシヒデくんがちょっと言いにくそうに、切り出しました。

「あのね……ヒナコちゃんたち、もう怖くないと思うんだ」

サチは、どきり、としました。

三人と、それから挨拶を返してくれるようになった、少しのクラスメイトたちが居ることで、ヒナコちゃんたちのことを、余り考えなくなっていたことに、サチは気付きました。

そして、大切なことにも気が付きました。

それを口にしようとした時、

「さっちゃん、仕返ししないの?」

と、ナナミちゃんが、怒った顔をしました。

「そうだよ。ヒナコちゃんたち、もう私たちにも意地悪しなくなったよ?」

ユキちゃんも、とても怖い顔をしています。

トシヒデくんを見たら、やっぱり怒った顔をしていました。

サチは、こう言って笑いました。


「しないよ。仕返ししたら、ヒナコちゃんたちと同じになっちゃうもん」


「しないの? だって、あんなに意地悪されたのに?」

「学校にも来られなくなったのに?」

「悲しい思いしたのに?」

三人は口々に、サチに言い寄りました。

それでもサチは、笑って言いました。


「悲しい思いは、わたしだけでいいよ」


サチの笑顔を見た三人は、ぽかんとした顔をしました。

そして、ぱあっと笑顔になりました。

「さっちゃん!」

「やっぱり、あの時お話しして良かったね!」

「大好きだよ、さっちゃん!」


ナナミちゃんも、ユキちゃんも、トシヒデくんも、サチの本当の“友達”になりました。


それはつまり、サチとサマンサの、約束の日が来ることを、意味していました。

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