魔女のおまじないと「おはよう」(4)

サチは、ヒナコちゃんたちが帰っていったのを確認して、校舎裏の花壇へ行きました。

そこには、クラスの女の子が二人と、男の子が一人、集まっていました。

みんな花壇のブロックに、並んで座っていました。


「あ! 来たよ!」

今朝、一番に挨拶を返してくれた子が、笑って手を振ってくれていました。

サチは、一瞬迷いましたが、笑って手を振り返しました。

近寄っていくと、みんなが立ち上がりました。

それぞれがそれぞれに、目配せしています。

「ええと……どうしたの?」

サチが口火を切りました。

最初にサチを見つけた子が、手をもじもじさせながら、話し始めました。

「あのね……あの、みんなね? 今、ここにいるみんなだけどね?」

「うん」

「あのね、みんなで相談したんだけどね?……謝りたいなって、思ったの」

「うん?」

相手の気持ちがよく分からなくて、サチは聞き返してしまいました。

「ヒナコちゃんの、言いなりになってたこと、すごく恥ずかしいことだと思って」

「毎日ちゃんと挨拶してくれていたのに、返さなかったこと」

「悪口言ったり、無視したりした」

「いっぱい意地悪した」

「あのね、ホントは……」

最初の子が、くしゃっと顔を歪めました。

「ホントは、すごく悲しかったの」

次々に、サチの前で三人のクラスメイトたちが、泣き出しました。

「ご、ごめんね、ごめんね、さっちゃん」

「ごめんね、寂しかったよね」

「さっちゃんが学校に来なくなった時、僕たちもすごくつらかったよ」


目も顔も、真っ赤にしながら、溢れてくる涙を拭きながら、三人は一生懸命、気持ちを打ち明けてくれました。

何度も何度もしゃくり上げながら、それでも一生懸命、言葉を探しては、謝ってくれました。

サチも、みんなの気持ちが痛いほど伝わってきて、そして嬉しくて、一緒に泣きました。

嬉しくて、嬉しくて、いっぱい涙が溢れました。


やがて、どちらともなく涙を拭いて、えへへと笑い合いました。

よく考えたら、サチはクラスメイトであるこの子たちの、名前をちゃんと知らないのです。

なので、サチは三人の名前を、聞くことにしました。

「ナナミだよ」

「ユキって言うの」

「僕は、トシヒデ!」

ナナミちゃんと、ユキちゃんと、トシヒデくんは、とびっきりの笑顔で答えてくれました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る