転校生と魔女の家(3)

それからサチは、学校に行ってはヒナコちゃんたちに、いじめられるようになりました。

サチは楊枝のように細い割に、体育が大の苦手でしたし、算数も理科も出来ません。

得意の国語で100点を取れば、それが気に食わないとでも言うように、ヒナコちゃんが大声で、サチの悪口を言ってまわりました。

クラス中が、ヒナコちゃんの言いなりだと知るのに、時間は掛かりませんでした。

一緒になって悪口を言ったり、そこにサチがいないかのように、振る舞います。

時々は、足を引っかけられたり、蹴られたり、叩かれたりもしました。


サチは毎日、泣きながら家に帰りました。

でも、お父さんとお母さんには、言えませんでした。

いじめられている自分が、恥ずかしいと思ったからです。

大好きなお父さんとお母さんが、恥ずかしい思いをするのかと思ったら、言えませんでした。


そんなことが、数ヶ月続いた後でした。

ある日、サチは学校にも家にもいたくなくて、学校に行ったふりをして、家に戻ってきました。

でも、家の中に入る気にもならなくて、門のところに腰を下ろしました。

色んな人が、サチの前を通り過ぎていきました。

よそのおじいさんや、自転車に乗ったおばさん、保育園児の散歩コースでも、あるみたいでした。

一度だけ、お巡りさんが通りましたが、サチは体を小さく丸めて、門に隠れてやり過ごしました。

学校の先生が、心配しているんだろうなと思っていましたが、お父さんもお母さんも帰って来ないところをみると、双方に連絡が入っていないようでした。


そうして、夕暮れが来ました。

サチは、西の空をぼんやりと眺めていました。

空に浮いている薄い月を見ていたら、何だか涙が出てきました。

サチは、その場でしくしくと泣き始めました。


「どうしました?」

頭の上から、落ち着いた声が降ってきました。

大分長いこと泣いていたので、サチはいつの間にか、門にもたれて眠っていたようです。

「風邪を引きますよ」

優しい、包み込むような声の主は、サチに暖かいショールをかけてくれました。

もうとっくに、夕焼け空になっていたのに気が付いていなかったから、サチはちょっと恥ずかしくなりました。

しかも、知らない人に声をかけられてしまっています。

この人が悪い人だったら、大声を上げて逃げようと、サチは思いました。

そうして顔を上げてみたら、白い髪をひっつめた、外国人風のおばあさんでした。

瞳が、水色に光っています。

サチは、その瞳の色にびっくりして、口を開けてしまいました。

「私の顔に、何か付いていますか?」

ふふっと、おばあさんは笑いました。

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