22歳♂ 何故か女の体に転生しました。
BrokenWing
受難編
第1話 地獄の門出
地獄の門出
俺は、
現在、俺の目の前には、いかつい顔したおっさん、しかも3mくらいありそうな巨漢。周りの反応を見るに、どうやら閻魔大王とのことらしい。
って、ここ地獄? 俺、死んだの? 地獄に送られる程悪いことしたっけ?
「え~、近衛新君、君の罪状は横領! 金額は500万。これよりどの地獄に送るか審査する!」
いかついおっさんこと、閻魔大王が毅然とした表情で俺に言う。
横領? 500万? 全く身に覚えが無い。
「俺はやってないです!」
「あ~、皆そう言うのよね~。全く反省無しって奴だと、結構深い層になっちゃうよ~」
「いやいや、本当にやってないのに、何、その決めつけ? 出るとこ出て白黒つけましょう!」
よくよく考えてみると、ここがその白黒つける場所だったりする。
「も~、面倒臭いな~。そこの君、この人の前世の記憶、モニターに」
横を見ると、大画面のモニターがあった。地獄もハイテク化しているようだ。
早回しで、俺の過去が流れる。小学生の時にクラスの女の子のスカートめくったり、授業さぼって昼寝してたり、過去の俺の汚点が晒される。
「ま~、これくらいは問題ないのよね~。ちゃんと反省もしているようだし」
確かに、スカートめくった子には大泣きされて平謝りしたし、昼寝の後は先にばれて、大目玉を喰らったはずだ。
そうこうしているうちに、俺の人生の最後のほうになる。
そうだ、思い出した! 最後の記憶の日、俺は先輩と一緒に契約が取れた家に行き、契約金を持って先輩とその家を出た。先輩は、その契約金500万を銀行に振り込みに行くから、俺だけ先に帰れと言って、そこで別れたはずだ。
その後、俺は電車に乗ろうとしてホームで待っていると、誰かに背中を押されて、電車が目の前に!
俺は理解した。
なるほど、これは冤罪だ!
「あ~、君、これ見ると無実だね~。でも、人間界の記録では、君が横領したってことになっているのよ。真犯人は君の先輩だろうね~。でも、安心してね~。その人もいつか必ずここに来るから、その時はかなり深いとこに送っちゃうから~」
安心しろと言われても…。
俺、多分殺されたんだし。しかも理不尽に!
とは言え、もう死んでしまったものはどうしようもない。取り敢えずは落ち着いて、どうなるか成り行きを見守るしかないだろう。
閻魔は、隣に居る鬼を見ながら、眉を顰める。
「う~ん、困ったね~。あれ程チェックは完璧にねって、いつも言っているのに~」
「は! 申し訳ありません! 部下には厳しく叱っておきます! しかし、大王様、この者、どう致しましょう?」
「そうだね~。今から天界に送るのも、借り作ることになるので嫌だし~」
おいおい、お前等の責任だろ! 何とかしろよ! と、心の中で毒づいていると、部下の鬼に、何か妙案があるようだ。
「そうだ、大王様! 丁度、別次元の天界からの要請にまだ空きがあります。年齢は少しオーバーしていますが、そこにねじ込めば…」
「あ~、あれがあったか! タイミングいいね~。え~っと、近衛君だっけ、今回はこちらの手違いで申し訳ないよ~。もし君が良ければなんだけど…」
話は要約するとこうだ。
俺のような、とばっちりで死んだ場合は、本来ならば天界とやらで審査を受け、人間界で再び一からやり直すことが普通だそうだ。その際、少々恵まれた環境の子として生まれるらしい。
でも、俺は間違ってここに連れて来られた。閻魔は天界に借りを作りたくない。
で、ものは相談ということだ。
その内容とは、丁度異世界の神から魂をくれと頼まれているので、俺でどうかということだ。勿論、ある程度のアドヴァンテージはつける。具体的には、現在の記憶の引継ぎと、異世界の言語及び読み書きの理解。
閻魔曰く、地球の知識は異世界には無い物が多いから、かなりのアドヴァンテージだそうだ。
「話は分かりました。で、俺はその世界で赤ん坊から始めるんですか? 流石に母乳からはきついんですが?」
「いや、器は向こうで用意しているよ~。確か12歳から18歳くらいだっけ~。だから、ちょっと若返り特典もついちゃうよ~」
「ふむふむ、で、どんな世界なんですか? こっちの常識は通用します?」
「基本的な価値観は一緒だね~。違うのは魔法が使えるのと、文化水準が中世くらいってことぐらいだね~」
なるほど、ゲームやラノベのお約束って世界だな。
「納得しました。ですが、全く知らない世界に行くんです。もう少し何というか、チート能力みたいなものが欲しいですね」
「君、いい根性しているね~。流石は営業職ってところ? 僕相手に交渉しようという人、そうそう居ないよ~。だけど、記憶の引継ぎ以上は譲れないね~。今まで全員そうだったから~」
「分かりました。では、契約成立で」
「うんうん、理解が早くて助かるよ~。じゃあ、飛ばすね~。向こうも待っているみたいだし~」
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