第12話 盗賊

       盗賊



「さて、この魔物は何とかなったけど、街道にはまだ多数居るようだ。林の中を歩いて迂回するか、ここで敵が移動するまで待つか?」

「アラタさんの判断に従いますわ」

「気力もまだ完全に回復していないですし、もう少し様子を見ては如何でしょうか?」

「ふむ、ミレアの案がもっともかな。俺も魔法を覚えたいし、ここで様子見だ。どれくらいで回復する?」

「1時間くらいですわ」

「2時間ほど欲しいです」

「分かった。それまで俺は魔法書を読むことにしよう。お前らは休憩してくれ」

「では、私はその間に食事を用意しますわ。その前に少し、あの…、着替えたいですわ」

「ん? どうした?」

「魔物に掴まれた時に、その…、下着がかなり…」


 クレアが顔を赤くしてもじもじしている。なるほど、掴まれて、はみ出たわけね。

 しかし、見られるくらい、俺に断る必要もないだろう。何しろ自分から積極的に迫って来るような奴らだ。

 でも、これが女って物なのかな、等と勝手に合点した。


「あ~、どうぞご自由に。水は樽があるから使えばいい。今出すよ。俺はあっち向いてるから」

「ありがとうございます。水は魔法を使いますのでいいですわ」


 俺はその間、二人から借りていた魔法書を読みだした。

 いつの間にか、二人はアイテムボックスからバーベキューセットのようなものを取り出し、火を熾している。


 まずは回復魔法から始めよう。これはリムが読んでいたので、俺にも大体頭の中に入っている。

 うん、間違っていなかった。

 ヒールの他に、ディサイレンも覚えた。


 俺は次に闇魔法の本を取り出した。俺の勘が正しければ、俺にも覚えられるはずだ。

 魔法行使の原理は、回復魔法と一緒だった。

 俺は読み進めていく。思った通り、俺には理解できるようだ。

 敵一体を数秒間だけひるませることができる、スタントリックというのを覚える。

 他の攻撃と組み込むと便利そうだな。


 そして、これは俺の勘が正しかった事を証明している。

 そう、闇魔法が使える俺には、光魔法は使えない。魔法書にもそう書いてあった。だからレベル0という表示になったのだろう。

 試しに光魔法の本も読んでみるが、理解はできるのだが、先入観からか使える気がしない。『エレキテル』という、初級攻撃魔法を試してみたが、何も起こらない。

 まあ、ミレアの話でもそういう事らしいので、仕方ないと諦めよう。


 そこで食事が出来たようだ。いい匂いがする。


「食事が出来ましたわ。簡単ですが、味は保証しますわ」

「おお~、確かに旨そうだ。頂きます」


 食事はシチューだった。道具屋で買ったもので作ったのだろう。結構肉が多かったので、聞いてみると、この世界では、野菜のほうが肉より高いとのことだ。

 なるほど、魔物の肉なわけね。


「ご馳走様。美味しかったよ」

「お粗末様でした。喜んで頂けて何よりですわ」

「お姉様の料理はいつも美味しいです。私も頑張ります」


 食事の片付けをして、それではそろそろ移動しようかと、辺りの気配を読む。

 しかし、街道にはまだ居るようだ。


「日が暮れるまでにダンジョンに入りたいけど、まだ居るようだ」

「困りましたわね。強行突破します?」

「そうですね。今の私達ならば、普通の魔物相手なら、そうそう遅れは取らないかと」

「問題は数だ。多分、12匹居る」


 俺は作戦を立てようと二人に聞いた。


「先程の戦闘で、変わったステータスとかはないか?」

「私はレベルが2上がって、各能力が7~10伸びましたわ。一体でレベルが2も上がるなんて、相当高いレベルの魔物だったのですわ!」

「私もレベルが2上がって、お姉様と同様、6~9伸びました。今までならレベルが1上がっても2~3くらいしか伸びなかったで、何らかの恩恵を受けているようです。あと、火魔法のスキルが3になりました」

「お~、それは良かった! それで、ミレアは新しい魔法とか使えるのか?」

「多分使えるはずなのですが、呪文を知りません。私の魔法書には3レベル以上の魔法は載っていませんので」


「残念だが、仕方無い。俺はレベルが5上がって、ステータスが50~70上がった。危機感知と格闘術が2になって、剣術スキルが取れたようだ」

「凄いですわ! 流石はアラタさんですわ!」

「勇者様の成長スピードがこれ程とは…。1レベルあたりの成長も、私達の倍以上ですね」

「確かにそうだな。しかし、これは推測だけど、二重魂のせいもあると思う」


 二人が黙り込んでしまった。


「ま、まあ、現状は分かった。それで、作戦なんだけど……」


 そこまで言ったところで、俺の危機感知に反応が出た!


「まずいな。こっちに向かって来た。感づかれたか?!」


 二人は立ち上がり、緊張した面持ちで身構える。


「数は相手のほうが多い。俺が囮になって、敵を引き付ける! 林を抜けてきた所を、クレアが木陰から叩く! ミレアは少し離れたところから、魔法で狙撃を頼む!」

「「はい!」」


 俺は音を立てないように、用心しながら林に分け入る。

 まずいな、散開しやがった。包囲するつもりか。

 俺に最も近い端の奴から叩こうと、歩を進めると、声が聞こえてきた。


「なんかあったようだが、もう大丈夫だろう。それに、もう我慢できねぇよ」

「ああ! それで、赤髪の姉ちゃんは俺が貰う! 金髪ロリのほうはボスが欲しがってたからな。お前らは青髪で我慢しろ!」

「おいおい、勝手に決めんなよ! 金髪は別として、早いもん勝ちだろうが!」

「うるせえ! 俺が教えてやったんだから、俺が一番だ!」


 魔物と思っていたが、人間か!

 聞いたことのある声も混じっている。

 俺は全てを理解した。

 こいつらは盗賊の類だろう。

 俺達が町を出てから、つけて来たに違いない。

 林から出てくるのを待ち伏せていたが、先程の騒ぎも収まったので、痺れを切らしたってとこか。

 聞き覚えのある声は、門の衛兵だ。


 腐ってやがる!


 俺が振り返ると、クレアが木の裏から、顔だけ出して頷く。

 ミレアも、開けた草地の中央で大きく頷いた。

 うん、二人とも事情は理解したようだ。


 相手は俺達の身体が目当てだろうから、殺そうとはしないだろう。

 しかし、捕まれば何をされるかは目に見えている! 男相手にやられるなんて真っ平だ!


 各個撃破と行きたいところだ。包囲される前に何とかしたい。

 俺は音を殺しながら、最初に決めた奴に近づく。


 目が合った!


「見つけたぞ! 金髪だ! こっちだ!」


 相手は大きな剣に鎖帷子を纏った大男だ。何族か知らないが、大きな耳をしている。

 俺は無言で木を躱しながら、一気に距離を詰める!


 相手は俺のスピードに戸惑ったようで、慌てて剣を構える。


「遅い!」


 俺は、相手の構えた剣の手元を蹴り飛ばした!

 剣がそいつの手を離れて宙を舞う。

 そして、剣を拾おうと、横を向いた瞬間を俺は逃さなかった!


「一人目!」


 相手の顔面目掛けて飛び上がり、正拳を叩き込む!

 グキッと骨の折れた感触が伝わる。

 完全に鼻が潰れたな。


「うげ!」


 俺は倒れこむ大男を一瞥してから、次の獲物を探した。

 どうやら、全員こっちに向かって来ているようだ。


 ならば……。

 あえて音を立てながら、近づく集団に自ら向かう。


「居たぞ! こっちだ!」


 俺は5人程視認して、クレアの隠れている方向に走る。

 男達は、皆亜人のようだ。特徴的な耳と、尻尾をつけている。

 武器は剣、斧、槍、弓と、ばらばらだ。


 クレアの隠れている木の前で振り返り、俺は挑発してみた。


「こんな小娘相手に5人かよ。お前らそれでも男か?」


 一人が槍を構えて飛び掛かってきた!


 軽く躱して膝蹴りを入れる!

 メリッと潰れる♂の感触。

 俺は自分がそうなったらと思い、眉を顰めた。


 すまんな。新たな人生を歩め。


「もう容赦しねぇ!」


 男達は、先を争って突っ込んで来た!

 俺は振り返って、草地へと逃げる!


「流石ですわ!」


 木陰から鉄球が飛び、先頭の男の顔面を捉える!

 倒れた男に、後続の奴が躓いた!


「ウィンドカッター!」


 男の斧を持った手首から先だけが、地面に落ちた。


「うわ~っ!! 手が!!」


 続いて林を抜けて来た男が弓を構える。

 俺は意識を集中した。


「スタントリック!」


 男は一瞬動きを止めた!

 そして、その隙を逃すクレアではない!

 またしても鉄球が無防備な顔面を捉える!


 容赦ねぇなぁ~、等と思いながらも他の敵を探す。

 らなければ、られるのだ!

 更に、危機感知で他の敵を探す。あと7人居るはずだ。

 一人は用心してか、クレアから離れた木の陰に居た。

 後の6人は固まって、その男と逆側の茂みに隠れているようだ。


「クレア! 右手の木陰に一人居る! ミレア! 左手の茂みに固まっている!」


 クレアは用心しながら、右に回り、獲物を探す。


「ファイアウォール!」


 茂みが業火に包まれる。


「あ…、あつっ!」

「うわ~っ!」


 男達が叫びながら茂みから飛び出して来た!


 飛んで火に入る…、逆か。

 もはや連中の統制は全く無い。

 まあ、最初から大して無かったけど。

 俺は手近な奴から、スタントリックでひるませながら殴り倒していく!

 ミレアも魔法でそれに続く!

 何人か、男を廃業させた感触があった。


 俺の苦しみを思い知れ!


 こっちが片付いたので、クレアを探すと、頭の潰れた男を引きずって来た。


 クレア…、怖いぞ!


「ミレア、何か縛るものないか?」

「野営に使うロープがあります」

「十分だ。生きている奴を捕まえよう」


 俺達はロープを持って散らばり、まだ息のある奴を拘束していく。

 股を押さえて蹲っている奴には少し同情したが、生きているだけマシと諦めて貰おう。

 縛った連中を草地の中央に集める。種族とかは解らないが、全員、特徴的な耳と尻尾をつけた亜人だった。やはりサラサの連中だな。全部で9人。


 ミレアが反対したが、重症の奴にはヒールをかけてやった。

 逃げた奴が居ないかと、危機感知スキルで辺りの気配を探るが、何も無かった。


「さて、尋問タイムだ。その前にクレア、ミレア、こいつらがアイテムボックスを持ってないかチェックしてくれ。あと、魔法を使える奴が居たら厄介だ」

「はい。でも、亜人で魔法を使える人は、そうそういないと聞きます。それに、使えるのなら、こんな事はしないはずです。ですが、用心に越した事は無いでしょう」


 ふむ、亜人は魔法が苦手と。ならば、魔法が使えるような特殊な奴なら、間違いなく一目置かれる存在だ。女に困るとは思えない。

 なら、魔法に関しては、そこまで警戒はしなくていいか? もっとも、俺達は美人美少女なので、微妙なところではあるが。

 また、アイテムボックスにしても、高価な物らしいので、盗賊ごときが所持しているとは思えないが、ミレアの言う通り、用心はするべきだろう。


 二人は、縛った奴らに猿轡を噛ませ、身体を入念に調べる。そして、最後に首を振った。


「よし、先ずお前ら、何の目的で俺達を襲った?」


 会話を聞いていたから知ってはいるが、一応聞いてみる。

 一人だけ、衛兵の鎧を付けていた男の猿轡を外す。


「決まってんだろうが! ひん剝いていいことしたかっただけだよ!」


 こいつは、自分の立場が理解できていないらしい。

 ミレアが落ちていた剣を拾って、その男の首に当てる。


「それだけですか?」

「ま、まあ、後はボス次第だ。飽きたら売るつもりだろうよ」

「じゃあ、そのボスって奴は何処だ?」

「知らねぇな」


 ミレアが、今度は剣を男の股間の先に突き立てた。


「ま、待ってくれ! ボスは多分アジトだ。俺達が帰らなかったら、探しに来ると思う」


 ふむ、男相手には、そっちの方が効くのか。俺もそれをされたら、何でも喋ってしまいそうだな。今は無効だが。


「じゃあ、そのアジトってのは何処だ?」

「ここから街道を2キロ程戻って、少し外れたところに洞窟がある」

「ふむ、次だ。お前らの組織は何人居る?」

「全員で30人くらいだ」

「あと20人か、厄介だな」

「へっへ、俺達に狙われたらまず助からねえ。せいぜい用心するんだな」


 今度はクレアがチェーンフレイルを振りかざした。

 俺はそれを制止しつつ、


「そうさせて貰うよ。しかし、お前らが生きて戻ると,俺達が狙われる。それで間違いないか?」


 縛られていた全員の顔が引きつる!


「ミレア、クレア、こいつらはどうするべきだろう?」

「アラタさんを狙っただけで死に値しますわ!」

「死人に口無しです」


「だそうだ。やっぱそうするか?」


 二人が再び武器を振りかぶった。

 盗賊達は更に怯える。


 こいつらを解放すれば、間違いなくまた襲ってくるだろう。

 とは言っても、俺もこれ以上殺すつもりは無い。結果的に3人死んでしまったが、あの場面ではああするより無かった。呵責は感じるが、悪いとは思っていない。もっとも、魔物を殺して、そういう感覚が鈍くなっているのかもしれないが。


 仕方が無い。最後の手段だ。


 俺は、盗賊達の真ん中に手を突き出した。


「こいつを見ろ!」


 俺は少しいじったステータスの、一部分だけを盗賊に見せるように意識した。


     【ステータス表示】


氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男

職業:勇者


「見ての通り、俺は勇者だ! これからダンジョンを攻略しに行く!」


 盗賊達はきょとんとしている。


「訳あって、今は女の身体だが、俺は男だ!」

「は、はぁ……」

「ところで、お前らが勇者を襲ったことをばらせば、どうなるだろうな?」

「そ、そんな事されたら俺達はお終いだ! 軍が出張ってくる!」


 ふむ、勇者の看板は、こいつらには効くようだ。


「じゃあ、そうされたくなければ、今日の事は全て忘れろ! もしお前らが喋ったと感じたら、遠慮はしない!」

「ゆ、勇者様でしたか。道理で強い訳だ! すみませんでした! 勿論全部忘れます!」

「分かってくれたらそれでいい」


 俺達は、盗賊が持っていた武器と、使えそうな防具を回収した後、縄を解いてやった。

 俺達が立ち去ろうとすると、衛兵の奴が近寄って来る。


「勇者コノエ様! もし良かったらですが、ご同行させて頂けませんか?」


 予想外の提案に俺が戸惑っていると、全員が近寄って来て頭を下げた。


「あの~、意味が分からないんだけど? お前らみたいな貞操の危機、連れて行く訳ないだろ!」

「いえ、あっし達も反省してます。しかし、是非お力になりたくて」

「結論は変わらないと思うけど、理由を話してくれ。ダンジョンの怖さは、お前らの方が知っているはずだろう?」


そう、俺なんかよりも、この世界の連中のほうが、ダンジョンについては詳しいはずだ。帝国ならば、延べ1万人の兵士が返り討ちにあっているのだ。

考えてみれば、今からそこに3人で行こうって言う、俺達のほうがどうかしている。


「はい、あっしらもダンジョンの危険さはよく知っています。ここに居る全員、元々は冒険者でしたし」

「え? でも今は盗賊だろ?」

「あっしらも好き好んで盗賊やってる訳じゃないです。ダンジョン探索に限界を感じてから、楽な方へと…」

「まあ、なんとなく分かる。それで?」

「はい、こう言っちゃなんですが、こんな女の子がダンジョンに潜るって聞いて、それならあっしらも、もう一花咲かそうかって気になりまして」

「俺はお・と・こ・だ! まあ、理由は分かった。悪いが連れて行く気は無い」

「足手纏いは重々承知ですが、こいつだけでも!」


 衛兵が指さした先にはクレアより少し背の高い、165cmくらいか? 猫のような、耳と尻尾をつけた男が居た。


「おい! 失礼だろう! 外せ!」


 衛兵が怒鳴ると、その猫耳男は頭から耳を外し、尻尾も取った。


 着脱可能なんかい! と突っ込むより先にその男が答えた。


「ぼ、僕はスコット・オルガンって言いますにゃ。宜しくお願いしますにゃ。亜人の町では人間は舐められるので、変装していたにゃ」


 猫耳を外してから改めて見ると、銀髪が目立つ以外は、ごく普通の男だ。日本でなら、大してハンサムでもなく、かといって不細工という程でも無い。

 この言葉遣いさえ無ければ、気が弱そうで影の薄そうな奴だ。


「色々と突っ込み所は満載なんだが、なんでこいつなんだ? お前の方が強そうだろう?」


 俺は衛兵を指さす。


「あっしは、まだ衛兵の仕事があります。盗賊の手伝いはしてましたが、盗賊にはなっていません」

「ふむ、つまりお前は更生できると」

「はい、これからは真っ当に生きようと思います」

「で、なんでこいつなんだ?」

「スコットはまだ新入りで、こいつもまだ盗賊じゃないんです。一度盗みを働いてしまうと、暫くは冒険者には戻れません。やった内容にもよりますが、普通、数年は盗賊職を外せないんです」


 ふむ、時効ってことか?


「つまり、スコットは冒険者ってことか?」

「はい、まだまだひよっ子ですが。正直、あっしはこいつに盗賊なんて向いてないと思います。虫のいい話ですが、こいつだけでも引き取って頂ければと。他の奴は手遅れですし」


 見渡すと、他の盗賊達が罰の悪そうな顔をしている。


「話は分かった。取り敢えず、ステータスを見せてみろ」


     【ステータス表示】


氏名:スコット・オルガン 年齢:18歳  性別:男

職業:冒険者 鍛冶師 レベル:21

体力:74/74

気力:61/61

攻撃力:71 

素早さ:65 +1

命中:82 +1

防御:59 +11

知力:63

魔力:73

魔法防御:70

スキル:言語理解3 弓術2 武器作成2 防具作成1 鉱石鑑定2


    【装備】 

皮の鎧:防御+10

皮の靴:素早さ+1

布の服:防御+1

布の下着:命中+1



 布の下着に命中補正って意味分からんが、それ以外はミレアやクレアを少し弱くした感じか。若干命中が高いので、弓が向いているのだろう。

 目を惹かれたのは、鍛冶師という職業と、それに関連すると思われるスキルだ。


「お前、昔は鍛冶師だったのか?」

「そうですにゃ。工房が潰れたので、仕方なく冒険者になったのですにゃ。でも、気が付いたら盗賊の仲間になっていたですにゃ」

「なるほど。ところで、その話し方は何とかならないのか?」

「長年猫人族のふりをしていたから、簡単には直らないですにゃ」

「ま、まあいい、お前らはどう思う?」


 俺はクレアとミレアに視線を向ける。


「アラタさんが宜しければ、私は構いませんわ」

「ステータスは悪く無いです。しかし、男は……」

「ぼ、僕なら問題ないですにゃ! ストライクゾーンは12歳までにゃ! 勇者近衛様とお姉様方には忠誠を誓いますにゃ!」


 ぐはっ!

 真正のロリコンかよ!


 じゃあ、なんで俺達を襲った?

 まあ、理由は想像がつく。こいつは新米だったので、拒否権が無かったのだろう。


「う~ん、悩むな。しかし、戦力の増強にはなる」

「あらあら、お姉様だなんて。私は気に入りましたわ」

「アラタさんに忠誠を誓うと言うならば、問題なさそうですね」

「じゃあ、決まりだ。スコット、ついて来てくれ。あと、お前ら、死体の処理は任せる。俺に罪悪感は全く無いけど、野晒しは流石に気の毒だ」

「ありがとうございますにゃ!」

「「「「「「はい! 勇者様!」」」」」」


 結果、俺達はくれぐれも今日の事は忘れろと念を押してから、スコットを加えてその場を立ち去った。

 残った盗賊達には、衛兵ができる限り仕事を斡旋するような事を言っていた。 

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