第3話 夢の中
夢の中
いいもの見せて貰った?おかげではなく、祭祀長の重い話で、流石に疲れてしまった俺は、あっさりと寝てしまった。
「いい……、で…け!」
心の中で声が聞こえる。
「かっ……わ…のか…さ……で!」
何だろう? 女の声だ。
「こんばんは~!」
今度は、いきなりはっきりと声が聞こえる。しかも、どっかで聞いたことのある男の声だ。
「おんや~、これはこれは……」
声の正体に、思い当たる節がある。
「お前! 閻魔か!」
「うんうん、アフターケアだよ~」
「てんめぇ~! よりにもよって女の身体って! 調子いいこと抜かしやがって!」
俺は怒り心頭で怒鳴る!
「僕は性別のことは言わなかったけど~、でもこれは流石にきついよね~」
「当たり前だ! 何とかしろ!」
「困ったな~、ここは僕の管轄じゃないんで、どうしようもないよ~」
あ、ここで逃げられたらこっちが困る!
うん、少し落ち着こう。
「そこを何とか…」
「じゃあ、アドバイスはしてあげるよ~」
「お~! ありがとうございます! 流石は閻魔様!」
「まあ、その状態じゃ、情緒不安定になるのも無理ないよね~。僕はアフターケアのつもりで、様子見に来ただけなんだけど、正解だったね~。じゃあ、良く聞いてね~。僕が君の魂を飛ばすまでは問題無かった筈なのよ~、でも、この世界で大きな手違いがあったようだね~」
ふむ、原因は、この世界の方にあったということか?
「なるほど。では、手違いとはどういった?」
「う~ん、君が召喚された、その身体に大きな問題があるの~」
「いやいや、女ということは分かっています」
「それもだけど、だからと言うべきか…」
「いい加減に……」
イカン!
またキレそうになってしまった。
閻魔の言う通り、現在の俺は、情緒不安定なのかもしれない。
もっとも、こいつの言い方にも、多分に原因はあると思うが。
「ま、僕のせいじゃないしね~。簡単に言うと~、この身体、死んでなかったのよね~」
「へ?」
「だからぁ~、この身体の魂が、まだ残っているの~。性別が逆になったのは、多分その影響だろうね~。僕が思うに、彼女は瀕死で、藁をもすがる状態だった。その結果、ここに送り出した君の魂を、無意識に捉えてしまったのだと思う」
「なるほど……。って、さっぱり分からないですが、要は、この身体は、元の持ち主の魂が残っているってことですか?!」
「そうだね~」
「もしも~し? それって、かなりまずいのでは?」
「うんうん、かなりおかしなことになっているね~」
「女ってだけでなく、しかも二重魂って…!」
「うんうん、なのでアドバイスなのよ~」
「宜しくお願いします」
「解決方法は簡単だよ~。君がこの身体から出ていけばいい」
「え? それって、もう一度死ねってことですか?!」
「いや、この身体が死んでしまうと、彼女の魂も道連れだよ~」
「じゃ、さっきの祭祀長の話で、俺の魂だけを別の身体に移すっていうことですか?」
「そうそう、そうすれば、彼女の魂も肉体も残って万々歳~」
「で、その方法は? 祭祀長も、それが分からんって感じでした」
「君達の考え方で、大方は間違ってはないと思う。ただし、君の意思が必要だね~。『それも絶対的な意思! 決して揺らがない自信!』」
「え、なんか抽象的過ぎません? もう少し具体的に…」
「ん~、僕もこの世界は管轄じゃないし~、あくまでも感じただけなんで、これ以上は無理かな~」
「そこを何とか!」
「確信が無いからね~。ただ、君なら出来るような気がするよ~。確信は無いけどね~」
ぐはっ!
閻魔、使えねぇ~っ!
「ごめんねぇ~。でもアドバイスにはなった筈だよ~」
ぶっ、流石は神様。全て聞かれているようだ。
「あ、すみません。はい、ありがとうございます。よくよく考えてみれば、俺って一度死んでいるのに、形はどうあれ、今生きている訳ですし。贅沢言ったら、罰当たりますよね。あ、閻魔大王相手になんでした。じゃあ、後は自分で何とかしてみます」
「うんうん、その意気だよ~。あ、彼女の魂は消しちゃダメだよ~。更にまずいことになりそうだから~」
「いえ、そんなことは考えていませんよ」
「良かったよ~。じゃあ、本当のアフターサービスね~。むんっ!」
「お? なんか、身体が軽くなった気がします。ありがとうございます」
「うんうん、魂の回復をかけたからね~。君の魂も、転生の影響で少しやつれていたようだし。じゃあ、頑張ってね~」
その言葉を最後に、閻魔の声はしなくなった。呼び掛けても応答が無い。
その代わりなのだろうか? 先程一瞬聞こえた女の声が、今度ははっきりと。
「話は聞いたわ! 貴方、さっさと出て行って!」
俺は一瞬で理解した!
閻魔が言ってた元の持ち主ってのは、こいつのことだ!
「聞いていたなら話は早い。それが出来ないから困っているんだけど?」
「えぇ! 全く厄介ね! でも、あの後急に体が軽くなったので、こうして話せるようになったわ」
なるほど、閻魔の言っていた魂の回復というのは、彼女にも作用していた訳だ。と言うより、俺の魂よりも、彼女の魂に対してだったのではなかろうか?
「ところで、取り敢えずは自己紹介からかな。俺は、
「そうね、さっきの話だと、私にも原因があるようだし、仕方ないわ。私の名前はリム。今はそれだけ。貴方流に言うと、全く持って不本意だけど、よろしくね」
「もっと話したかったけど、色々あって流石に疲れた。ここで落ちていい?」
「えぇ、私は何か元気になったけど。じゃあ、お休みなさい」
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