第17話 耐性スキル
耐性スキル
俺は部屋の中央部に結界石を置き、結界の範囲内と思われるギリギリのところで、アイテムボックスの在庫一掃を敢行した。盗賊から分捕った装備を筆頭に、魔核、肉、etc…。
出るわ出るわ! よくぞこれだけ入っていたものだ!
「こんなもんかな? じゃあ、スコット、魔核で道具への効果付与、試してくれ」
「了解ですにゃ! 失敗したら壊れるかもしれないけど、いいですかにゃ?」
「ああ、問題ない。壊れて困るような物は出していない」
クレアとミレアがベッドとソファーを出し、バーベキューセットみたいな物が広げられる。
俺は、ベッドの上に魔法書を並べると、ミレアに火魔法の本を渡した。
「ほい、ミレア、返すぞ。読み終わったらまた貸してくれ」
「はい、アラタさん、頑張ります!」
え~っと、俺のスキルは、光、水、土がレベル0だったから、多分、火と風には適性がありそうだな。等と考えて、風の魔法書を手に取る。
うん、すんなり頭に入る。程無く俺は【ウィンドカッター】と、【風の加護】を習得した。
気が付くと、横が騒がしい。
「せ、成功にゃ?」
「アイスランス!」
見ると、スコットとミレアが得意気な顔をして近寄ってくる。
「あ、アラタさん、これ見て下さいにゃ!」
「今の見ましたよね?! 氷系の呪文、覚えられました!」
あ~、分かったから同時に言わないで~。
「二人ともやったな! ミレアはその調子で、他のもあれば頑張ってくれ。どれ、スコット、見せてくれ」
「「はい!」ですにゃ!」
スコットが持ってきたのはダガーだ。
「これ、攻撃力が2増加したと思うですにゃ!」
「ん? お前、アイテムボックス持っていないのに、鑑定できるのか?」
「魔核の力を注ぎ込んだら、叩いた時の音が、ほんの少し変わったですにゃ」
「ふむ」
「それで良く見ると、頭の中に表示が出ましたにゃ!」
「ふむふむ」
「その表示を見ると、【ダガー:攻撃力+7】ってなってたにゃ! ダガーの基本性能は確か+5のはずですにゃ」
「確かそうだったよな。どれ」
俺はそのダガーを受け取り、アイテムボックスに放り込む。
ダガー:攻撃力+7
うん、確かに攻撃力がアップしている!
「凄いぞ! 確かに+7になっている! ところでお前、ステータス見せてみろ」
「はいですにゃ?」
俺はスキルの欄を見る。すると……。
スキル:言語理解3 弓術3 武器作成2 防具作成1 魔核合成1 鉱石鑑定2
道具鑑定1 風魔法1
! 新に魔核合成と、道具鑑定というのを取得している!
「やったな! ニュースキル、それも2つも! おめでとう!」
その声を聞いて、クレアとミレアが飛んで来た。
「スコットちゃん、おめでとうですわ!」
「スコット君のくせに…。う、羨ましいです」
「ぼ、僕なんかが…。あ、ありがとうですにゃ」
言葉とは裏腹にスコットはどや顔だ。
「ところで、魔核は何を使ったんだ?」
「ゴブリンの魔核を2個ですにゃ」
「手順を教えてくれ」
「最初、ダガーに魔核1個を合成したにゃ。音が変わったので、調子に乗ってもう一個合成したら、ダガーが壊れたですにゃ」
「ふむ、ダガーでは、2個の魔核の合成には耐えられなかったのかもしれないな」
「僕もそう思って、やり方を変えてみたにゃ。ゴブリンの魔核同志を合成したら、色が変わったにゃ。そして、その魔核とダガーを合成したら、それが出来たですにゃ!」
「凄いな! その勢いで色々試してくれ!」
「はいですにゃ!」
そこでいい匂いがしてきた。
「は~い、皆さん、食事が出来ましたわ」
「うん、相変わらず旨そうな匂いだ」
「今日はダークウルフの肉を焼いてみましたわ。味見はまだですが、この匂いなら間違いないですわ」
クレアが皆に取り分けてくれた。
「「「「頂きます!」」」にゃ!」
「う、美味い!」
「流石はお姉様!」
「お、美味しいですにゃ!」
しかし……。
何かおかしい。妙に体がだるい。周りを見回すと、皆も一様に首を傾げている。
ひょっとして! 俺は自分のステータスを見てみた。
【ステータス表示】
氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男 状態:毒
ぶっ! 新たに状態という欄が追加され、【毒】とか表示されている!
良く見ると、体力が少しずつだが徐々に減っている!
「皆、これは毒だ! 食うな!」
体力の少ない、スコットとミレアが心配だ!
先ずは、隣に居たミレアに呪文を唱える!
「ポイズンカット!」
クレアも事態を察して、スコットに向けて同じ呪文を唱えた。
クレアは自分で何とかできるだろうと思い、俺に向けて唱えようとすると、気分の悪さが収まっていた。
どうしたことかと再び自分のステータスを見ると、毒状態が消えている。体力も減っていない。
更に見ると……。
やはりか。流石は勇者、チートだな。
スキルに新たな項目が増えていた。【毒耐性弱】
周りを見回すと、皆、呪文の効果で毒は抜けたようだ。クレアも自分に呪文をかけている。
「お姉様、とても美味しかったのに…、残念です…」
「旨い物には毒がある…。ですかにゃ」
誰が上手い事言えと! まあ、フグとかは確かにそうかもな。
「皆様、申し訳ないですわ! フォートウルフとかは無毒だったので、油断していましたわ」
クレアは謝りながら、ミレアとスコットにヒールをかける。
「クレア、確かに予想外だったが、いいこともあったぞ」
「「「はい?」」」
皆が一斉にこっちを向く。
「その、なんだ、言い難いのだけど、【毒耐性弱】というスキルを取得した。それで、毒状態も自然回復していた」
「「「え~~っ!」」」
皆が目を丸くする。
それを尻目に、俺は何事も無かったように、更に肉を頬張る。
「やっぱり美味いな」
皆の視線が痛い。
その後は言うまでもなかろう。もはや、狂乱状態だ!
俺はひたすら、皆に【ヒール】をかけまくっていた。
その甲斐あってか、最初にスコット、次にクレア、最後にミレアが腹を擦りながらも習得。
気が付くと、俺のスキルも【毒耐性中】になっていて、ついでに回復魔法のレベルも上がっていた。
「こんな美味しい…、いえ、乱暴なスキル習得、聞いたことないですわ!」
「毒を喰らわばスキルまで。勇者様、恐るべしです」
「耐性が最大になるまで食うですにゃ!」
うん、スコット、その意気だ!
その晩は結局そこで落ちてしまった。
朝、リムに聞くと、スコットが遅くまで、魔核相手に格闘というか研究をしていたそうだ。
「皆、おはよう」
「「「アラタさん、おはようございます」」にゃ」
「皆、あれからはどうだった?」
「私は水魔法のレベルが2に上がりましたので、【ウォーターバースト】と【ドライ】というのを覚えましたわ!」
「お~、おめでとう! で、それはどういう効果だ?」
「【ウォーターバースト】は、狙った場所の水分を爆発させますわ。【ドライ】は狙った場所の水分を吸収する魔法ですわ。これでお洗濯もはかどりますわ」
「ふむ、使えそうだな。しかし、【ドライ】はそういう使い方もいいけれど、他に使い道があると思うぞ。【ウォーターバースト】もだけど、心臓とかに使うと、即死させられるんじゃないのか?」
「両方とも直接手に触れた場所でないと使えないですわ。でも、懐に潜り込めれば、可能かもしれませんわね」
「ミレアは?」
「私はあの後、【フローズンウィンド】という範囲魔法を覚えました。半径3mくらいですが、範囲内の敵を凍らせます」
「それは凄い! すぐにあの蛙相手に試してみたいな!」
「はい!」
「スコットはどうだった? 遅くまで頑張ってくれていたようだが」
「はい、オーガの魔核を使って、防具の強化に成功しましたにゃ!」
「流石だな。何を強化してくれたんだ?」
「アラタさんは、既に着けてますにゃ。鎖帷子を+2できましたにゃ」
「そうなのか! うん、ありがとう」
「残念ながら、僕の腕なのか、素材のせいなのかは分からにゃいですが、皮製品は強化できなかったですにゃ」
「いや、十分だ。魔核はこれから手に入る種類も増えるだろう。元になる武器防具が、今は手に入らないのが辛いな」
「そうですにゃ。でも、頑張りますにゃ」
「うんうん」
その後、いつも通り、下の階を目指して探索する。
しかし、今日は昨日の毒騒ぎで味を占め、耐性スキルを全員に取らせることを優先した。
具体的には、目当ての耐性スキルを得られる魔物を一匹だけ残して、スキルを習得するまで攻撃させるという、RPGなんかで使う古典的なやり方だ。
結果、全員に【暗闇耐性弱】以上がついた。俺に至っては、【暗闇無効】になっている。
「次の階層主は20階に出る、ということでいいのか?」
「はい、そう聞いています。何でも、蜂の化物らしいです」
「まあ、先の話か。取り敢えずは安全重視で行こう」
「「「はい」」ですにゃ」
俺が先を特に急がなくなったのには、訳がある。
昨日、【マッピング】を覚えたことにより、それを危機感知と合わせると、レーダーのようになるのだ。
これにより、もし追手が来ても、同じ階なら早期発見ができる。また、もし相手に発見されても、こっちは魔物の居ない道を選んで逃げることが出来る。うまくすれば、魔物を追手に押し付けることも可能だ。もっとも、行き止まりに追い込まれればアウトなので、用心に越した事は無い。
下への通路を見つけ、降りていく。
この階層、13階でモンスターの編成が変わった。
今まではジャイアントトードばかりだったのが、それに必ず骸骨の化物が混ざるようになった。
倒して魔核を回収すると、スケルトンLv5の魔核 と、表示される。
名前からするに、この先レベルが増えた相手と戦うことになりそうだ。
こいつに関しては、やたら攻撃力が高いのが特徴だ。大きな剣を振り回してきた所を、クレアが一発喰らってしまい、体力を半分近く持って行かれた。
しかしお約束通り、回復魔法と火魔法が弱点らしく、魔法を使うとあっけなく倒れる。
更に降りていくと、また新顔が増えるが、大した脅威とはならなかったなかった。ポイズンリザード。体長2m程の、真っ赤なトカゲの化物だ。
そいつは、毒の霧を吐くのだが、今の俺達には耐性がある。ただ、もし耐性を取得していなかったら、かなり面倒だったはずだ。
その日は17階層まで降りて休憩することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます