第24話 様々な魔物
様々な魔物
ん? 朝か。
「おはよう、リム」
「おはよう、アラタ。昨晩はスコットさんが武器を作ってくれたわよ!」
頭の中の会話だが、なんか、リムの声が弾んでいるように聞こえる。
「ああ、見たよ。特殊効果のついた武器は貴重だな。あの杖は、リムが使うといい」
「うん、そうするわ。やっぱりあたしは貴方と違って、格闘系は少し抵抗あるみたい」
「なら、剣とか使ってみるか? ミツルが持っていたのがあっただろう。あれも聖銀製だったはずだ」
「う~ん、スコットさんがいい武器を作ってくれたら、考えてみる」
「ふむ、スコットが作ってくれたらか。なるほどね」
「変な勘違いしないでよね! 飽くまでも選択肢の一つなだけよ」
「あはは、奴は真正のロリコンだ。お前の容姿もギリロリ枠だが、奴からすれば、お前でもおばさんだろうな~」
「15歳に向かっておばさんとは失礼ね! それにそんなんじゃないって言ってるでしょ!」
「あ~、悪かった。そろそろ起きていいか?」
「特に他にはなかったし。貴方も見ているでしょうから、じゃあね」
「うん、おやすみ、リム」
「おやすみなさい、アラタ」
俺が目を覚ますと、既に朝食は取ったらしく、クレアとミレアが慌ただしく片付けをしていた。スコットは広げた道具一式をアイテムボックスに収めている。
皆と挨拶を交わして、今日の目標を伝える。
「今日は10階の階層主にチャレンジしよう。これからは、サラサの例からすると、スライムからペインスコーピオンの団体さんに切り替わる可能性が高いな」
「そうですね。ヤットンさんから聞いていた話より、ペインスコーピオンの出てくる階層が低かったですし」
「うん、だが、奴はお前の範囲魔法、【フローズンウィンド】も有効だし、クレアの【アクアダーツ】が弱点だ。特に問題ないだろう」
「そうですわ。この階層は私と相性がいいですわ」
「逆に僕にはイマイチですにゃ。あいつは硬くて、僕の矢がそれほど効かないですにゃ」
「スコットは色々と試してみてくれ。関節とか、口とか。目は堅そうだったが。お前の命中精度ならできそうだ」
「はいですにゃ」
クレアは、このダンジョンでは終始機嫌がいい。
新しい武器もうまく使えて、また、自分の数少ない攻撃魔法が弱点の敵と遭遇すれば、そうもなるか。
思った通り、8階層からはサソリばかりになった。しかし、気持ちの準備もできていたし、問題なく駆逐できる。
スコットも、奴が鋏を振り上げた瞬間に、その付け根を狙撃するという神業で瞬殺させる。
ふむ、腋が弱点か。人間臭いな。
10階への降りる通路で次の階層主の情報を確認する。
「ヤットンの話だと、ここの階層主はファイアナーガという、腕のついた蛇の化物だったな?」
「はい。特に弱点も無く、また、火の魔法を放ってくると言っていましたね」
「いつも通り、俺が【ハイスタン】を唱えてから、皆で凹れればいいのだが」
「そうですね。期待しています」
「それでミレア、やはりお引きは居ると思うか?」
「ヤットンさんの話では単体だったとのことですが、サラサの例もあり、用心するに越したことはないかと」
「そうだな。もしお引きが居たら、お前達に任せるよ。俺はいつも通り、主に突っ込むだけだな」
「「「はい!」」」
10階に降りると、レーダーに反応があった。やはりお引きが居るようだ。
扉を開けると、長さ3m程の真っ青な、妙にひょろ長い蜥蜴、いや、手足のついた蛇の化物と、ペインスコーピオン2体だ。
俺は予定通り、【ハイスタン】を唱えてから階層主に突っ込む!
「フローズンウィンド!」
「アクアダーツ!」
「三連射!」
俺の横を矢が掠め、まだ初期配置でかたまっている的、いや、敵に魔法が炸裂する!
あっという間に、お引きのサソリが無力化されたようだ。
「チッ、効いていない!」
意外なことに、ファイアナーガに【ハイスタン】は効かず、奴は短い手を振り翳す!
何かスキルを使う気だな!
しかし、奴の動きを封じ込める前提で突っ込んでいたから堪らない。
もろに喰らってしまった!
50cm程の火球が俺に直撃し、一瞬視界が真っ赤に染まる! 身体が熱い!
しかし、思ったほどのダメージは無かった。と言うより、ほぼ無傷だ。高い魔法耐性のおかげか?
「ならば!」
俺は奴の胴体に正拳をぶちかます!
拳がめり込んでから、何か堅い物に当たったようだが、構わず腕を振り切った!
「ん? 突き抜けた?」
「もう、これくらいでは驚きませんわ」
「勇者チート…、凄すぎます…」
「相手はスライムじゃないですにゃ!」
壁に赤黒い球体が当たって落ちた。
ファイアナーガのどてっ腹には、大きな穴が開いている。
音を立てて、階層主の背後の扉が開く。
「ふう、魔核を取り出す手間が省けたな」
扉をくぐると、今回もワープの小部屋があったので、全員登録する。
確認の為に部屋の中央の魔法陣に乗ると、ダンジョン入り口の小部屋に転移できたようだ。
「うん、一旦外の空気を吸うか」
外に出ると、ヤットンは居らず、代わりに、冒険者っぽい恰好の連中が2人居た。
「やや? もしかして勇者近衛様でしょうか?」
「そうですけど、貴方たちは?」
「私達はヤットンの一応部下です。ここで見張るように頼まれたので」
「一応部下?」
ヤットンのただの部下ならばいいが、『一応』ってなんだ?
「う~ん、肩書上は部下なんですが、まあ仲間みたいなもんなんで。そこはあまり気にしないでください」
「じゃあ、ヤットンに伝えておいて下さい。10階まで行ったけど、引き続き潜ると」
「え! まだ2日目ですよ? もう10階の主を倒したのですか? しかも、たった4人で?」
「仲間に恵まれたんで」
「そ、そうですか。潜るにしても一度ここで休まれては如何ですか? 足りない物とかありませんか?」
ヤットンの仲間と言うのが指したほうには、簡単だが、雨露が凌げるようなテントが張ってあった。
サラサの冒険者たちが使っていたのと同じだ。
サラサの冒険者と違って、この人達に下心が無いのは分かる。
俺は迷ったが、断わった。
「う~ん、補給はまだ必要無いし、何というか緊張感をあまり切らしたくないんで」
俺は同意を求めようと振り返ったが、全員上の空だった。
仲間に恵まれたという一言が効いてしまったのだろうか?
「分かりました。ヤットンには伝えておきます。お気を付けて」
ワープで10階に戻ってから、階層主の部屋はどうなっているかと見ると、意外にもまだ扉は開いていた。
「もう閉まっているかと思ったが?」
「階層主が再生されるまでは扉は閉じないと聞いています」
「再生にはどれくらいかかるんだろう?」
「詳しくは分かりませんが、噂では3日くらいとか」
「ふむ、ミレア、ありがとう。まあ、俺達にはあまり関係無さそうだし、いいか」
11階に降りると、やはり魔物の層が変わっていた。
芋虫の化物だ。
こいつは口から粘々した糸を吐いて来る。
俺は力任せに引き千切れるが、クレアがそれに絡まって面倒なことになった。
何というか、少し表現し辛い、エロい状態だ。
「あの魔物、捕まえて飼いませんか?」
「ミレア、変態してないで助けろ!」
俺ももう少し見ていたい気がしたが、慌ててダガーで糸を切り、事無きを得る。
接近戦でも倒せるのだが、糸が厄介なので、魔法で仕留める事にする。
火の魔法が弱点のようで、俺の【ファイアショット】で一撃で倒せた。
ミレアの【ファイアウォール】だと少し残すようで、スコットの援護で丁度くたばってくれる。
クレアは少しトラウマにでもなったのか、ミレアが削ったところに、槍を投げて仕留めていた。
そんな感じでその日は13階まで潜って休憩となった。
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