21話 1日目の夜

 ここはとある大広間の前。僕たちの学校の生徒で混雑してる。とりあえずあいつ見つけなきゃ…あ、いた!


「おーい!岸玉!」

「ん?なんだ久礼か。」

「上沢先生の出し物が始まる前にお風呂と夕飯とっちゃったんだけどよかったのかな?」

「多分いいんじゃねぇか?俺もそうだし、他にもいると思うぞ。」

「よかった…それにしても、先生は何をやるんだろう?」

「さぁ…皆目見当もつかないな。」


 担任の先生に大広間に奥から詰めて座れと告げられ、どんどん学生たちは流れ込んだ。


「一体何が始まるんだろうね。」

「あいつの先輩が言うには『期待しないどけ』らしいけどな。」


 と言った途端になんか曲が流れて来た。みんな戸惑ってるな…って舞台になんか人が入って来たあああああ!?


「よっと。みんな、こんばんは。」


 アクロバティックな登場に女子たちの黄色い声が飛び交う。そりゃ上沢先生イケメンだもんな…


「ちょっとみんな見ててもらえるかな?」

「何が始まるんだろうか…?」


「変身!」


 舞台袖から仮面が投げられて来た。それを先生は空中でキャッチしながら何かをぶつぶつと唱え、着地する前に仮面をつけた。キャッチした時はちょうど後ろを向いていたため、本物の変身に見えた。

 何だr…ってええ!?上沢先生に耳と尻尾が!?も、もふもふしたい…


「『仮面フレンズホワイト』、参上。」


 今度は男子から歓声が上がった。いやいや、これで興奮しない人いないでしょ。


「なんか見たい動作あるか?」


 みんな思い思いにリクエストしている。


「わかったわかった、とりあえず聞こえたものをやりながら舞台往復するから見てな。」


 先生は側転をしたりバク宙したり、体操選手顔負けの美しい動作に皆見惚れていた。


「いや、やっぱり先生かっこいいね。」

「お前は尻尾しか見てなかったがな。」

「何でわかったの?」

「お前のことだ、見てなくてもわかる。」

「さ、さすが岸玉…」


 先生が色々なことをしているうちに時間はあっという間に過ぎ去っていった。


「ほら、もう就寝時間1時間前だよ。じゃあそろそろ変身を解こうか。」


 また先生は何かをぶつぶつと唱えながら仮面を舞台袖へ投げ、耳と尻尾は跡形もなくなっていた。


「お風呂・夕飯をまだ取ってない子は早く取って来な。」

「岸玉、ちょっと先部屋に戻ってて?」

「ん?わかった。じゃあまた明日な。」

「うん、また明日。」


 他の生徒達は返事をしながら帰っていくが、僕には少し用事がある。


「上沢先生!少しいいですか?」

「ん?何かな?」

「あ、あの…尻尾を少し、触って見たいな…なんて…へへへ…」


 先生は少し考えたのち、条件を出して来た。


「僕の尻尾に強い刺激を与えないこと。例えばこすったり、握ったり…」

「絶対しません!もししたら僕を退学にしてもらって構いません!」

「ならいいか。ちょっと待っててね。」


 先生がぶつぶつと何回も唱えていたのは「私はホワイトライオン」だった。


「はい、いいよ。」

「ありがとうございます、では失礼して…」


 あぁ、この触り心地もいい…幸せ…はっ!そういえば


「先生!さっき先生は『私はホワイトライオン』とおっしゃってましたが、その姿、もしかしなくても『フレンズ』ですよね?」

「そうだ。校長先生から聞いたが、小説県不離市にサンドスターが湧き出るところがあって、それのおかげでこちらでもフレンズとして活動できるらしい。しかも、そのために校長先生や先祖の方々が尽力してくれたんだ。感謝しなきゃだな。」


 校長先生ってやっぱすごい家系の人だったんだなぁ…ってあれ?


「ではなぜあれを唱えたのでしょうか?」

「フレンズの特徴、僕なら耳や尻尾を出すには『自分はその動物だ』と強く意識しないといけない。もちろん、その動物の血が流れてないといけないけど。僕はそのためにあれを唱えたんだ。」

「なるほど。」


 と話していると向こうから女子生徒が近づいて来た。名前…覚えてないな。


「先生!尻尾触ってもいいですか!」

「いいよ。たd「ありがとうございます!」ムギュッ

「ふにゃああああぁっ何するんだぁ!痛い、痛っやめろぉぉぉ!」ガオー!

「先生、大丈夫ですか?おい!お前先生に何をするんだ!」

「ひっ…ご、ごめんなさい!つい抑えきれず!」

「大丈夫だよ。」


 先生はその後「私はヒト」と十数回唱え、耳と尻尾を消した。


「去年の方がひどかったからね。」

「えっ?」

「去年もやったんですか?」

「もともと家の伝統だったのが学校に気に入られたのが始まりなんだ。もはや恒例行事になったんだけど、去年は耳も尻尾も引っ張られることが多々あってね。」

「うわぁ…」


 先生との話が終わった後、部屋に戻った。みんなはすでに寝ていて僕も布団にすぐ入ったが少し考え事をしていた。


「まさか先生があんな年で『ふにゃああああぁっ』なんていうなんて…でも『ホワイトライオンになっている』と考えれば当然か。」


 あとは先生が『仮面フレンズ』と名乗ったことについてちょっと考えてみよっか。


「確かに先生は『お兄さん』と呼べる年ではないけど体つきも細めだし筋肉もそれなりについてるから『仮面ライダーやってます』と言われてもなんら違和感は持たないか。まいっか。もう寝よう。」


「明日も楽しみだな。」

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