15話 別れと新たな旅立ち
[次は終点、海浜刀半島に停まります。The next station is Kaihin-tō-hantō, KB-05. ]
「…。」
そりゃそうだよね。生き別れた兄弟にやっと会えたのにもう別れなきゃいけないからね。そりゃしんみりした雰囲気にもなるよね…僕がわーきゃー言っていいような雰囲気じゃないね…
[まもなく海浜刀半島、海浜刀半島。走島線、走島線快速、海夏線はお乗り換えです。 The next station is Kaihin-tō-hnatō, KB-05, the last stop.]
「俺たちは海で遊んでるからな!」
「わかった!溺れないでね!」
松前さんと僕だけで配線を見に行くことになった。
「ほら、久寿川君が見たがってた海浜刀半島の配線だよ。」
「…うん。」
「楽しくなさそうだね…どうしたの?」
「いや…確かに巌根は松前さんと一緒になれて嬉しいかもしれませんが、松前さんもここで十数年間過ごして親友もいるかもしれないのに…なんて言えばいいかわからないけど…わかってもらえますかね、僕が言いたいこと…」
「確かにわかるしそうかもしれないね。でもそれは真幸が悩むことじゃないかな?友達が悩んでいることを一緒に考えるのはいいことだけど…考えたところでなにもできないならそれは無駄じゃないかな?」
松前さん…いったいどんな過去を背負って来られたのだろう…
「ただ一つ言わせてもらうと、僕には『友達』と呼べる人はいなかった。だからここに未練なんて一つもない。」
「松前鉄道の路線網を思い出してください。松前さんはこの地区をここまで発展させたんです。『未練がない』というのは『発展し尽くした』ということなのでしょうか?それとも…」
「確かに、僕が一番『素』を出せていたのは鉄道のことやここの地区の発展のことを考えていた時かもしれない。しかし、それでも『100%素の状態』にはなれていなかった。そこに久寿川君たちが真幸を連れてきてくれた。僕が『100%素の状態』を晒せる唯一の友達、いや、親友だ。君にとっての岸里君に近いかな。そして連れてきてくれた久寿川君には感謝してるよ。」
「いやいや僕はなにもしてないですから…」
遠くでみんなの楽しそうな声がする。岸玉の声は一際目立っているように思える。松前さんには多分巌根の声が目立って聞こえているんだろうな…
「ほら、みんなそろそろ帰ってくるんじゃない?」
「あ、そうだ、もう一つ聞きたいことがあって…」
「なんだい?」
「引っ越しとかってどうするのでしょうか?」
「あ、それなら多分富雄さん頼めばなんとかなるでしょ。どこに住むかは…そうだな。真幸んちにでもしようかな。豪邸に住んでたから僕が入っても問題ないでしょ。」
「それがいいですね!」
そして僕たちは海浜刀半島を発った。
次の目的地…それぞれの家
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