第三十六話~魔物が蔓延る町5~
他に食べるものがなく、仕方がないので人の腕を食べた。
一つ言っておくと、コレはキノコだから。例え肉の味がしても、人の腕の形をしていようとも、キノコといえばキノコなのだ。
大丈夫、私はカニバってないよ!
うう、地味に美味しいからムカつく。
私はむしゃむしゃと人の腕を食べながら、爆死したことについて考えていた。
やっぱりあれだよね。あの紫色に光る怪しげな魔法陣。
あれをどうにかしないと、奥の机にたどり着けない。あそこに重要な手がかりがあると思うんだけどなー。
やっぱりあれか。鑑定さんにおねがいするしかないのかな。
私のステータスのことも含め、鑑定さんは碌な仕事をしていないと思う。ふざけんなと叫びたい。いや、マジで。
だって、私が人間じゃないとか、いやらしいステータスとか、もう色々とバグってるしね。この魔法陣を鑑定したところで、ちゃんとした結果が出てくるとは限らない。
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【鑑定】
冷静に相手を分析して、成果を報告する仕事人。ちょーかっこよくて、一人に一スキル欲しいと言われる人気者。
鑑定、鑑定を、よろしくお願いします。
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…………………ほら、碌でもない。
鑑定してねぇのに勝手に結果が出てきたし。しかも鑑定スキルを鑑定って、頭おかしいよね。普通しないよね。バカじゃねぇの。
え、何? 選挙でも始めるの。スキルは選挙制ですか、バカバカしい。
そういや私、いろんなスキルを持っていたよね。鑑定さんのスキルのかわりになる奴、いないかな。
えっと、私が持っているスキルでかわりにそうな奴は……『神の目』とかどうよ。意外とかわりになるんじゃねぇ。
だって、神の目なんでしょ。それって全てを見通す目とか、そんな感じのスキルなんだよね。鑑定さんに頼むのはなんかあれだけど、ちょいと教えてくれない?
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『神の目』
神を視認することができる。また、他者が神を視認できるようにすることができる使えないスキル。
鑑定様のかわりにはなれないどうしようもないクズ。神を見るだけって、ぷーくすくす。チョー使えねぇ。まだ鑑定様の方がスゲェよな。
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ちょ、鑑定てめぇ。なにほかのスキルをディスってんのっ! ゲスい、ゲスすぎる……。
でもそっかー。神を見ることができるようになるスキルかー。マジで使えねぇな。唯一神であるシンとか、天使様が見えるようになるだけなんだよね。
今更だけど、あれ見えるのってスキルの効果なんだ。知らなかった。
これ、捨てられないかな。神様と関わり合いたくない。
これ以外に使えそうなスキルは……特にないなー。諦めて鑑定さんに頼ることにするか。
やだなー。
でも、なんだかんだ言って最終的に鑑定さんに頼る私、ダメダメだな。
仕方ない、鑑定さん、あの紫に光る謎の魔法陣の鑑定、おねしゃすっ!
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【霧の魔法陣】
紫色に輝く魔法陣は霧を発生させる驚きをと通り越して落胆する使えないもの。余りにも使え無さ過ぎて世界樹システムに認識されないほどやべぇ奴。
しかも、トイレの個室ぐらいの大きの霧しか出てこない。しょべーなおい。
霧の中は遮音室のようになっており、簡易トイレぐらいにしか使えない。
ちなみに、この霧の中で死ぬと、霧の魔法陣に取り込まれてアンデットになる。
現在、怪しげなお兄さんに権限を取られているため、破壊不可っ! しかも拡大中! どんどん広がっているよ! 怪しげなお兄さんを殺してね!
紫色に輝く魔法陣の上を走ると爆死する。
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…………色々とツッコミを入れていいかな。
まずね、この紫色に輝く魔法陣、これがすべての元凶かよ! 誰だよ、こんなはた迷惑な代物作りやがって! 何のために作ったんだ、あぁ!
でも、トイレぐらいの大きさなんでしょ?
なのに、ニートリッヒ全体を覆うぐらいの大きさに広がっている。
ねぇだれ、誰なの、怪しげなお兄さんって。ねぇだれ!
そんでもって、走ると爆死するの! 走らなければいいのかな? そうなのかな?
私は、人の腕をむしゃむしゃしながら、すっと立ち上がった。
「小雪お姉ちゃん、どうしたんですか?」
「また爆死? お肉になるの」
アンリが心配そうにしながら、そういったが、その後に言ったクラヌの言葉に顔を引きつってしまう。
「クラヌ~。お肉はやめようね。私は美味しくないよ」
「うっそだー。美味しかったよ!」
「え、食べたの、ねぇ、いつ食べたのっ!」
「さっき、アンリと一緒に」
アンリに視線を向けると、アンリはそっと視線を逸らす。
「ねぇアンリ、本当のことを教えて?」
威圧的にアンリに言ったが、アンリは黙りを決めて、話そうとしない。
どうやって聞き出そうかと考えていると、クラヌがさらっと教えてくれた。
「アンリはね。お姉ちゃんが爆死した後ね、すっごく泣いたの! そしてね、私は小雪お姉ちゃんと一緒になるって言って、食べて、そんでもって死のうとしたの!」
クラヌが言った言葉があんまりにも酷かったので、ジト目を意識して、アンリを睨む。
アンリは、申し訳なさそうに「あははは」と笑ってごまかした。
「ふふ、笑ってごまかしても許さないよ。さぁ、吐け、私の肉を吐けっ!」
「い、嫌です。これで私と小雪お姉ちゃんが一緒になったんですっ!」
「……もういいわ。そうね、そうなのね。アンリはそんなことしないと思っていたのに……。残念だわ」
アンリはわたわたとした後、私にしがみついた。
瞳をうるうると潤ませて、チワワのような顔でこちらを見つめてくる。
「お願いです。見捨てないでください。吐きます! 吐きますから!」
アンリは手を口に突っ込んで無理やり吐こうしたので、私はそれを止めた。いや、吐けって言ったの私だけど、まさか手を突っ込んで吐こうとするとは思わなかった。ちょっとやりすぎた感じがする。反省だ。
「ごめん、ちょっと言いすぎた。でも、爆死しても私を食べないでね」
「は、はい……はい!」
目をごしごしとこすって、アンリはほっとしたように息を吐いた。
でもさ、なんだこのやりとり。私の肉を食ったから吐けとか、手を突っ込んで嘔吐しようとするとか、何かが、何かが違う気がする。
私のツッコミがついていけねぇ!
まあそれは、右斜め上あたりに置いといてっと。
紫色の魔法陣の奥にある机に向かうか。
あの机の上にある本、あれにはこの魔法陣に関することが書かれているはずなんだ。
だってそうでしょう。こういう展開の時ってさ、机の上に日記とか置いてあって、事件のヒントが隠されているっていうのがゲームの常識。
この世界はゲームじゃないから、そうなるかどうかは分からないけど……。
でも、そんな感じがする。
だって、世界樹に管理されている世界ってゲームみたいなものじゃん?
【警告:世界樹システムはバグってません。訂正してください】
…………バグってるよなー。
【警告:だからバグっていませんって】
もういいよ。やめよ、やめよ。
とりあえず、机に行くために、魔法陣を突き進んでいこう。
爆死するから走らないようにね!
「ま、まさか、小雪お姉ちゃん」
「そのまさかさ! 私はあの魔法陣に突っ込んでくるよ」
「や、やめてください!」
「お姉ちゃんっ!」
「はは、私は風になる!」
私はそのまま走り出し、意識が真っ暗になった。
はは、また爆死しちまったぜ!
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