第21話 丘での決戦

 ドルーク公国から馬車で移動して1時間、山がそびえ立ち周りが見渡せる丘にやって来る。


「ここでゴブリン達を待ち受けるのか」

「そうです。ここからならあの山から下りてくるゴブリン達を監視できますから」


 ユミナさんが指さす。

 確かにここからなら山から下りてくるゴブリンの動きを監視できる。さらに言うならここなら他の国の動きを監視もできる。

 ドルーク公国は他の国に挟まれ、山に囲まれているため監視するのにもこの場所は持って来いだ。


「魔王様、ここからなら他の国も監視できます。ここを拠点にして敵地の様子を伺う事ができます」


 アイラは俺に近づき小言で話す。あれだな耳元で話しかけられるとこそばゆいな。


「アイラも思ったか。同じ事を考えていて」

「そうですね、同じ事を考えるとは魔王様も魔王としての自覚が出てきたんでは」

「うーん、辛辣な褒め言葉」


 アイラからの褒め言葉と受け止め、周りを見渡す。

 コクエイ国とドルーク公国の両兵士はテントを建てたり、武器の準備を始めている。

 今から始まる戦が。


「大変だ!ゴブリン達が来た!」


 馬を使いこっちに来る兵士一人。


「もう始まるの!もう少し間を置くとかやって戦う準備とかあるんでは!」

「マオウさん一人で何騒いでいるのですか?」

「あ、いや気にしないでください」

「そうですユミナさん。これは戦ワクワク半分、怖さびくびく半分の少年の叫びなんですから」

「なんでそんな簡単に説明しないで!恥ずかしいじゃん!恥ずかしいよ、そうだよ!怖いよ!怖いに決まっているよ。これまで喧嘩なんてしたことないんだから!」

「とにかくマオウさんの叫びはわかりました。ですがゴブリン達は山を下りてきてます」


 ユミナさんのおっしゃる事はわかってます。

 周りはさっきとは違って慌ただしいもん。兵士たちが駆け出しているもん。


「第1軍、前へ!」


 ほら、なんか連携みたいな事もし始めたよ。


「それで、これからどうしますか魔王様」

「どうとは」

「ここでゴブリンたちがヤラレルのを見てますか」


 うーん、確かに野生のゴブリンに興味を持ってここまで来たけど。


「それともゴブリン達とコンタクト取ってみますか?」


 コンタクト?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る