第15話 王国へ招待(長かった道中)

『最近魔王軍と名乗り何かしら問題を起こしている輩がいるという』


 ミス・フィータからの突然の言葉。


『どうやら、人間のようだ』


 続いた言葉さらに驚かされる。

 人間が魔王軍を名乗っている。目的は。行動は。単独犯、複数犯。いろいろ言葉が出てくるが実際に言葉に出すことができなかった。


「魔王様、大丈夫ですか」

「・・・・・・ああ、大丈夫」


 隣のアイラの言葉が出てきてやっと言葉が出せた。

 俺は混乱と恐怖を感じていた。

 人間が魔王を名乗る、脳裏に蘇るミス・フィータの部屋で見た煙に映し出される映像。燃える町、逃げ惑う人間。

 魔王を名乗るんだそれぐらいやるだろう。

 人間が人間を襲う。普通ではない世界。

 いや、まだそうと決まったわけではない。


「それで、その魔王軍を名乗る人間の詳しい情報は?」

『まだ、人間が名乗っているとまでしか』

「そっか。また情報があったら連絡を」

『ああ、魔王様のほうも何かあったら連絡をしてくれ。念じれば繋がるから』

「それでは」


 ミス・フィータと通話を終える。


「人間も馬鹿なことをしますね」

「そうだな」

「魔王様の名を名乗るとは」

「え、そっち」


 俺はてっきり人間の愚かな行動について言っていると思ったのに。


「そっちとは?他のことがありますか」

「いや、その・・・・・・」

「人間の愚かな行動は今に始まったことではありません。人間はいつでも争いをします」

「そっか。そうだよな」


 人間が愚かなのは元の世界でも同じだ。

 何が起きても見てみぬ世界。手を差し伸べることが災いを招く世界。


「さて、その愚かな人間はフィータに任せて、俺たちは王国だ」

「それでしたらもうすぐ見てきます。あの大きな湖がそうです」

「湖?あれは海では?」


 見えてきたのはキラキラ光る大きな湖の真ん中に建つまた大きなお城。


「あれが、コクエイ国」


 この世界で始めての国。

 初めて国に入国する。


 + + + + + + + + + +


 大きな堀と塀。敵から攻撃を防ぐためだろう。

 橋を使い国に入るようだ。騎士だろう塀の上に5人、橋の前に2人警備している。

 かなりの厳重な警備な気がするがこれが普通なのだろうか。


「姫様、お帰りなさい」


 橋の騎士が地面に膝をつける。

 今更一緒にいるのが姫様なのを忘れていた。


「お前たちは、何者だ」


 さっきまで膝を突いていたのに立ち上がり剣を抜く仕草をする。

 なんで!あれか、姫様の馬車の後ろについて来たのがダメなのか。何かしらの申請とかいるのか。


「待て、その方々は姫様の命の恩人だ」


 馬に乗り騎士たちを止めにきてくれたのはユミナさん。


「そうでしたか、どうもすみませんでした騎士団長」


 今度は騎士たちは頭を下げてきた。問題は解決した。

 それより、ユミナさん騎士団長だったの。

 俺の疑問などすぐ消えた。なぜなら目の前の大きなすばらしいお城を目にしたからだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る