第16話 王国へ招待(国王と王妃)

「おお、君が娘の助けてくれた旅人か」

「この度は娘が世話になりました」


 国王と王妃だろうか。いや、そうだろう。

 だって、王冠被っているからこの国の王様だ。

 そして広い部屋だ。天井までが高すぎる。

 いきなりの場違いに少しビビってます。

 ユミナさんたちはさっき姫様を連れて部屋に戻っていった。


「いえ、たまたま道を通りかかっただけですから。それで襲ってきた男たちが何者かはわからないのですか?」

「ああ、あの者たちは今情報を聞き出している最中だ」

「そうですか」


 あの男たちは何か目的があって姫を襲っていたのか。しかし、姫を殺すことより誘拐が目的なような気がする。


「そうだ、旅の者よ何か礼を」

「そうですね。何かないですか」


 凄い圧力だ。

 礼がしたい、何かないかって言われても・・・・・・。

 ここは魔王らしく『この国を貰います』、なんて言えないよな。


「アイラ、この国で少し休んでいかないか」

「魔王様がいいのでしたら」

「よし、決定」


 アイラから国王様に顔を向ける。


「この国に少し休んで行きますので、お礼は次の機会まで考えておいていいでしょうか」

「そうか、そういうことならそうしよう」


 国王様は近くにいた騎士を呼び寄せ、


「この旅の者たちを城の客室に案内を」


 俺は耳を疑った。


「今国王様は、なんと」

「娘の恩人に恥じない持て成しを」

「いえ、そこまでしてくれなくても!この国の宿に泊まりますので!」

「そうか」

「はい!」


 昨日まで野宿がいきなり城で寝泊りなんてできるか。

 段階だんかいを踏んで今日は宿で泊まらせてください。なんかアイラが納得いかない顔をしてますが。

 そして国王様もなんか納得いかない顔をしてますね。


「それでは、自分たちはこれで」

「そっか、なんか礼について思いついたら来てくれ」

「はい」


 俺たちが王様のいる部屋から出ようとしたのと同時に部屋の扉が開いた。


「国王様、大変です!」


 騎士たちが慌てた様子で部屋に入ってきた。


「ゴブリンの大群が動き出しました」

「とうとう動き出したか」


 騎士の報告を聞き暗い顔をする国王様。

 それより、ゴブリンの大群ってなんだ。まさか魔界が勝手な行動をしているわけではないよな。

 俺はアイラに顔を向ける。アイラは俺が何が言いたいのかわかったようだ。


「たぶんですが、ゴブリンの大群は野生の者たちかと」

「野生?魔界と何も関係ないのか」

「魔界にいる者たちは契約を結んだ者たちですので、魔王様の命令を無視することはないかと」

「そうか、良かった」


 魔界の者たちが勝手な行動を起こしたわけじゃない。それだけわかればいい。


「よし、ただ今より軍を結成しドルーク公国へ向かうんだ」

「はっ!」


 騎士は急いで部屋を出て行った。


「すまない、旅の者騒がしくって」

「大丈夫です。それより自分たちもドルーク公国へ向かいます」

「それは、なぜ」

「俺たちもゴブリンの行進を止めたいからです」

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