猫を助けて死んだはずが、何故か異世界に転生し ちゃって、チート的な強さでハーレム出来ちゃったけど、どうしよう!?
富升針清
第1話
いっけなーい! 遅刻、遅刻!!
今日は私立剛豪強高等学校の入学式。こんな大切な日に限って寝坊しちゃったドジな私。
やっと、憧れの剛豪強高校に入れる大事な日なのに、何でお母さんも起こしてくれないのかな! このままだと、入学式に間に合わないよ!
私の気持ちがいくら焦った所で、時計の針は止まってはくれないのは分かっているのに。私は脇目も振らず大急ぎで学校に向かう。
やっとの思いで、折角入学出来た学校なのに! これで入学取消になっちゃったらどうしよう? 剛豪強高校は全国でも有名な名門校で、全国から強者の入学志願者が集まる程の学校なの。そんな学校で初日から遅刻だなんて。入学取消だって冗談に聴こえないよね。
だって本当なら、何の取り柄のない普通の女の子な私が入れる学校じゃないんだもん。
それでも、憧れの……、私を助けてくれた、あの先輩に会う為に私は……。
って、そんなこと思い出してる場合じゃないよー! 急がなきゃ!
うー。陸上選手だったら100メートル10秒切れるのに! 12秒台の自分が口悔しい!
目の前で赤へと変わる信号に間に合うかと希望を頂いていると、一匹の黒猫が優雅に横断歩道を歩いている。
猫だって、交通ルールを守ってるんだから、私だって青信号で渡らないと。ちゃんと守らなきゃ。
そう思ってスピードを緩めようとした瞬間、凄い速さでトラックが交差点に入って来るのが目に入る。
きっと、このトラックも赤へと変わる信号に焦ったんだろう。
トラックの進行方向には黒猫。
え!?
このままじゃ黒猫が引かれちゃう!
そう思うよりも早く体が動いた。
加速をつけて交差点に私も飛び込む。
黒猫を助けなきゃ! ただ、その一心で私が黒猫を抱きかかえた時には、既にトラックが私達の目の前に来ていた。
これって、私……。
死んじゃうの?
「それはどうかな?」
腕の中ので、声が聞こえた気がした。
「え?」
私が間抜けな声を出した瞬間、目を開けていられないぐらいの眩い光が降り注ぐ。
え!?
ちょっと待って? これって、どういう事!?
「兄者!!」
私はゆらゆらと体が動く感覚で目を覚ます。
誰かが、私を呼んでる?
うっすらとした意識の中で、力強い声が聞こえる。
あれ? 私どうしたんだろ?
入学式に間に合うように急いでて、黒猫がトラックに跳ねられそうになっていて、私……。
そうだ! 目の前にトラックが来てて……!
私、死んじゃったの!?
思わず起き上がると、左肩に激痛が走る。刺すような激しい痛み。
痛いって事は、私生きてるんだよね?
あの事故で生きてるとか、すっごく奇跡!
そう思いながら左肩に手を這わせれば、何やら棒が肩から生えているような感触。
え? これは……、枝?
「兄者ー!!」
私が戸惑っていると、力強い腕が私の視界に入って来た。
兄者? この声、さっきもしてたけど、もしかして私のこと?
「無事か!? 兄者!」
顔をあげれば、まるで何かのコスプレみたいに、胸と手足に鎧を纏った髭面の大男が私を抱き上げていた。
きゃっ! 一体、この人は……?
「兄者、済まない。俺が不甲斐ないばかりに、兄者の後ろを取らせてしまった……」
後ろって……。
そう思えば、あたり一面、槍や剣を持った兵士達が私達を囲んでいる。
え? 私、さっきまで交差点に居たよね?
しかし、あるのは木々に土々。
私が急いで走っていた舗装された道路もコンクリートなんて何処にもない。
ちょっ、ちょっと待って、ここは何処なの!?
私、入学式に行かなきゃ行けないのに!
急いで体を起き上がらせたけど、やっぱり肩が刺すように痛い。一体どんな傷が? 視線を送れば、本当に枝が、いや、弓矢が私の肩に突き刺さっている。
嘘! 痛いのって、この弓矢が原因? 通りで刺すような痛みのはずだよぉ!
「周りも囲まれ、兄者もその肩じゃ、槍が……」
目の前の髭面のおじさんは今にも泣きそうな感じ。やだ。落ち込んでる……! 何か元気付けてあげなきゃ! 私、落ち込んでる人は放って置けないよ。
槍って、私の近くに落ちてる、この太い綺麗な槍だよね?
左肩は確かに今は痛みで上手く動かないけど……。
「貴殿は何を諦めている? 左肩が動かぬぐらいでその様な顔をするな」
私はゆっくり体を動かし、右手で槍を掴む。
「左肩がなくとも、万の兵などおそるに足らぬ」
良かった。足もちゃんと動くみたい……。
「顔を上げよ。敵は下ではなく、前にあり」
「兄者……っ!!」
事故の後遺症か上手く喋れないけど、言葉は如何にか通じてるみたい。
おじさんが笑顔になったのを見て、私はほっと胸をなぜ下ろし、呼吸を整える。
取り敢えず、武器を持ってる人に囲まれているって事は、私達絶体絶命の大ピンチって事だよね?
何で取り囲まれているかは皆目見当も付かないけど、聞ける空気じゃなさそうだし。
女子高生になったんだから、それぐらい分かるんだからね。
私は深呼吸の後、キッと前を向く。
おじさんは私が怪我をしているから、もう逃げれないと悲観的になっていた。囲まれてるんだもの。仕方がないよね。
でも、こっちにも武器はしっかりある。だから、私は出来ることをしようと思う。
よーしっ!
私は右手で槍を振り構えた。
「付いて来い。道がないのなら作れば良い」
「……っ! 兄者、あんたって人は最高の武将だ!! 涙を垂らしそうになった自分が恥ずかしいぜ。後ろは俺に任せてくれ! もう、ヘマは二度としねぇ!」
「武将ではない。女子高生だ。遅れぬなよ!」
「ああ!!」
私は槍を前に地面を蹴る。
嘘っ! 体が軽い!
前からどれだけ敵が押し寄せてきても、魔法のステッキみたいにこの槍を振り回せば一振りで敵の兵達が右へ左へと花びらの様に散っていく。
こんな重そうな槍なのに?
まるで私の体じゃないみたい!
「はぁぁぁぁぁっ!!」
左肩はズキズキ痛むけど、今は気にしていられない!
それよりも、今はおじさんと二人でここから逃げなきゃ!
「兄者、輪が崩れてきたぞ!」
「うむっ! 一気に突き進むぞっ!」
囲まれた時の対処法は、四方八方からの攻撃を交わしつつ、輪を最小限まで小さくする事! 囲まれてる事自体は劣勢だけど、輪を小さくすることにより、こちらが少数なら少数分だけ敵同士の相打ちの比率が高くなり、敵が自由に剣を振れなくするのが狙い。二人いれば目がある。背中は問題ない。それに、こんな密集地帯で敵も入り乱れている中で矢を射られる事もない。つまり、敵を引きつけある程度密集を守りながらこの輪を抜ければ、私達は逃げ切れるってこと!
こんなこと、普通の女子高校生でも知ってるんだからね!
「いざ、参るっ!」
私は強く槍を握って前へ前へと突き進む。絶対に、逃げ切らなきゃ!
でも、なんでこんな事になっているんだろ?
入学式、間に合うかなぁ?
漸く輪を抜け、潜んでいた弓兵達を倒せば、いつの間にか私達は綺麗な川に辿り着いていた。
ふぅ。ちょっと疲れちゃった。
未曾有の体力があるってお婆ちゃんに言われてた私だけど、慣れない槍を振りましての流石にこんな長距離ラン、体力が続かないよぉ……。
「兄者、周りには兵もいなさそうだ」
近くにいないと思ったら、おじさんはどうやら周りを偵察に行ってたみたい!
「ならばここらで、一先ず腰を下ろすか」
「あぁ。兄者の肩にある弓矢を抜かねばならないだろう。この川で傷を洗おう」
「うむ」
それにしても、なんで私の事兄者って呼ぶんだろ?
人違いかな?
「兄者、弓矢は自分で抜くか?」
あ、もしかして気を使われてる?
んー。抜くのはちょっぴり怖いけど……。
知らないおじさんの前で裸になんかなれないよ、ね。あまり、女の子らしくないって言われる私だけど。
「うむ。問題ない。貴殿の手を煩わせたりはせぬよ」
「とんでもねぇ! 俺に出来ることがあればいつでも言ってくれ!」
「はっはっは、頼もしい奴だ。では、見張りを頼む。手持ち無く逃げたのだ。水源の元に辿り着くことを見越し川を下って来る者がいるかもしれぬ」
「任されたっ!!」
おじさんはそう叫ぶと、くるりと私に背を向け登って行く。
ふぅ。人払いも出来たし、服を脱いで……。あれ? 私、セーラー服だったよね? こんなチャイナな服着てたかな?
って、今はそんな時じゃないってば! 早く学校に行かなきゃ行けないのに!
私は右手で弓矢を掴み、真っ直ぐ傷口が広がらない様に引き抜く。
抜いた瞬間、血は吹き出したけど、川の水で素早く洗い止血を……。
そう思い川を覗き込むと……。
「……何っ!?」
え? 知らないヒゲの長いおじさんが川に写ってる!
やだっ! 痴漢っ!!
私は急いでて血を吹き出しながら胸を隠したけど、川に写るヒゲの長いおじさんも同じように胸を隠してる。
さっきまでいたおじさんの様に大きな体に、すごい筋肉。
女子高生の私とは違うその風貌。
だけど、まさか……。
これって、もしかして……。
恐る恐る私が自分の頬を撫ぜると、川に写ったヒゲの長いおじさんも頬を撫ぜる。
「私なのか……っ!?」
うっそー! こんな姿じゃ、校則違反で学校にいけないよぉ!!
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