概要
まじない菓子“冥菓”を伝承する和菓子屋「菓子司美与志」の一人娘美美(みはる)は、生意気盛りのお茶くみ少年、上から目線の花仙美少女幼姫、妖艶な美青年冥菓の君など店に出没するあやかしたちと、戸惑いながらも“継ぐもの”として、“冥菓”道修得への試行錯誤を始める。
まじない菓子「冥菓」――それは、魔除け、厄除け、招福、恋愛成就祈願、御利益願掛などに効果抜群の、特別な力を宿した「もの」をブレンドして、一子一妖相伝の「冥菓道」に則ってつくりあげる、特別な力を宿したお菓子のことである。
本編は、エピローグまでです。
〔登場人物〕
三好 美美(みよし みは
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!冥菓がつなぐあやかしとの縁。
銘菓は知っている方も多いはずだが、ここで登場するのは「冥菓」である。主人公はその冥菓を代々守り伝えてきた和菓子屋の少女である。少女が住む世界は、あやかしと人間が共存しており、それが日常になっている。誰もが同じようにあやかしを見ることはできないが、「ここの博物館館長なら見えないと務まらない」と言われるくらい日々の暮らしにあやかしは馴染んでいる。
この作品で一つの見どころとなっているのは、主人公が訥々と話す菓子についての薀蓄だ。主人公は古い和菓子屋を継ぐことに初めは躊躇も見せているが、和菓子は大好きで、本も沢山読む勉強家である。魔除けになるヨモギ餅。占い入りのお菓子。何故鶴と亀の菓子は二つで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!五感ならぬ、六感で味わう「和」を召し上がれ!
「人見知り橋」を渡った先は、人とあやかしが暮らす不思議な街。
はてさて、一子一妖相伝の「冥菓道」とは――?
冒頭に登場する耳慣れない言葉に惹かれて読み進めてみれば、あれよあれよと展開していく「和」の世界。
蜜の色に、新茶の緑に、「朧桜」の緋色。
ニッキに、甘味に、金木犀。
色に味に香りに人にあやかしに、いにしえの念に現代の恋に父の想いに、五感も時空も混ざりに混ざって蠢き合う不可思議な世界で、魅力溢れるキャラクター勢が「冥菓」を求めて秘密を追います。
舞台は静岡県の三島市ですが、きっとどなたも、記憶の底にある古めかしい和菓子屋さんや、古い蔵を思い出すのでは?
華やかな世界観に、映像でも見…続きを読む - ★★★ Excellent!!!泉の如く湧き出る「和」の魅力!
和菓子と不思議なあやかし達が調和して生まれる新鮮な面白さ。
作者自身の愛が込められている作品は例外無く面白いのですが、この作品も間違いなくその部類に属するものだと思います。
菓子に限らず「食」そのものや、それにまつわるあらゆる事柄についての知識が、物語に彩りを加え、より鮮やかなものへと仕上げているように感じられます。
さらに、作中に登場するあやかし達がとにかく魅力的。発する言葉や所作のひとつひとつに個性が詰まっていて、時に可愛く、時に荘厳に、主人公の美美(みはる)とのやり取りに魅了されます。
あやかし達の中で特に異彩を放つ「朧桜の君」の魅力を是非味わって欲しいです。
この作品が如何に作り込ま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!和菓子とあやかし。甘くも怪しい和風ファンタジーをご賞味あれ。
精細な描写でつづられる、あやかしと和菓子の不思議な物語。
次々に登場する、謎多きあやかしたち、そして美味しそうな甘味たち。
時に怪しく、時に甘く、ふわりと香りが漂うようで、ドキドキと胸を躍らせます。
さらに、個性豊かなあやかしたちに劣ることないヒロインの美美〈みはる〉。
彼女の和菓子に対する熱意とウンチク語りも、楽しく舌を巻かれます。
はたして、あやかしたちの思惑は?
美美はこの地でどんな“冥菓”を作るのか?
あやかしと関わり、助け合いながら、少しずつ前へ進み成長していく美美の姿に、
読んでいてほっこり心が温まりました。
香り高く味わい深い和風ファンタジー。ぜひ、ご賞味ください! - ★★★ Excellent!!!人とあやかしの間でひそかに受け継がれてきた「冥菓道」とは?
「ひと口食べれば、情景が広がる。
人の甘味の記憶を刺激する。」
作中に現れたその文に、ああなるほど、と膝を打った。
なぜなら、本作に登場する食べ物や飲み物がすべて、
単なる味のみならず情景を伴いながら美しく描写され、
読み手の味覚の記憶を豊かに刺激してやまないのだ。
かつて東海道の宿場の1つとして栄えた静岡県三島市。
清らかな水の流れる富士山麓のこの町には、昔から、
人とあやかしとが共存する暮らしが根付いていた。
主人公、美美《みはる》もあやかしの見える体質だ。
美美の実家は和菓子屋だが、彼女に家を継ぐ気はない。
そのはずだったところ、母が倒れたため帰郷した美美は
「冥菓」を巡る人と…続きを読む