冥菓がつなぐあやかしとの縁。

 銘菓は知っている方も多いはずだが、ここで登場するのは「冥菓」である。主人公はその冥菓を代々守り伝えてきた和菓子屋の少女である。少女が住む世界は、あやかしと人間が共存しており、それが日常になっている。誰もが同じようにあやかしを見ることはできないが、「ここの博物館館長なら見えないと務まらない」と言われるくらい日々の暮らしにあやかしは馴染んでいる。
 この作品で一つの見どころとなっているのは、主人公が訥々と話す菓子についての薀蓄だ。主人公は古い和菓子屋を継ぐことに初めは躊躇も見せているが、和菓子は大好きで、本も沢山読む勉強家である。魔除けになるヨモギ餅。占い入りのお菓子。何故鶴と亀の菓子は二つで一つと数えるのか。郷土の歴史と共に、お菓子についても詳しくなれる一作である。
 また、菓子を通じて人間とかかわってくるイケメンなあやかしやカワイイ兎などのあやかしたちも読んでいて楽しい。番外編も始動しており、これからの物語も楽しみな作品である。
 是非、ご一読ください。

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