概要
俯きがちに千羽鶴をつくっていた彼女は、綻ぶ花のように微笑み、千羽鶴をつくっていました。
相変わらず、黒目がちの大きな双眸は印象的で。
ちょっと良いな、と思っていた彼は、世界遺産好きが高じて富岡市の職員採用試験に挑んでいました。
相変わらず、世界遺産の話に目を輝かせて。
埼玉県の同じ高校に通っていたふたりは、数年後に群馬県富岡市で再会します。
そこは、世界遺産――富岡製糸場の近くでした。
ぎこちなく、もどかしくも、惹かれてゆくふたり。
あるとき彼は、彼女のつらい生い立ちを知ります。
そんな彼女には、今も悪意を抱いて近づく人が……
◇ ◆ ◇
世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」が見守る土地・群馬県が舞台で
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!千羽鶴に願いを託す、不器用な人々の物語。
この作品には様々な要素が散りばめられている。胸がキュンとなることもあれば、胸をかきむしりたくなる時もある。泣きそうになる時もあれば、笑顔になって、とても癒されてしまうこともある。おそらくこの作者様は、キャラクターに感情移入させることに長けた書き手の一人だろう。
ちょっとした高校時代の千羽鶴に対する考えの違いや、それにまつわる出来事。主人公は傷ついているのに、自分の感情を素直に表に出すことはできない。それは彼女の家の厳しすぎる環境によって、もたらされていたのかもしれない。主人公は千羽鶴を折りながら、依頼者の事を想い、束ねていく。そんな優しい人が、自分は傲慢で我がままだと自重する姿は、痛々し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一つ一つ丁寧に。すべて揃い、出来上がるとそこには……。
第一章まで読ませていただきました。
今まで私が作者様の作品を読ませていただいて受けた印象が、「とてつもなく丁寧!」に物語が構成されているな、ということです。
花村さんと田沢くんとの物語が紡がれて行く中、
はじめはすごくきれいな世界観だなという気持ちで見ていたのですが、
流石です。しっかりと背景にいろんな部分の歴史や、小道具、そして、花村さんの「兄」。この兄がまた、第一章での二人を引き立ててくれるといいますか。第一章でもう、凄い!と、何回言ったかわかりません!
それほど、本当に丁寧に作られていました。
評価数程の価値がある作品と、久しぶりに出会った気がします。
ちなみに、田沢くんの花村さん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ぎこちない二人の恋愛と、千羽鶴の影に隠れた深いテーマ
田沢くんと花村さんのぎこちないながら微笑ましい恋愛模様……けれども決まって訪れる物語の転。そんな予定調和的に訪れる”転”は恋愛を盛り上げるエッセンス、無事解決することで二人の恋愛は盛り上がって……なんて考えていた私が浅はかでした、馬鹿でした! 許してください!!
皆さんと少し感想が違ってしまうかもしれませんが、自分がこの物語で一番衝撃を受けたのが”悪意”の扱われ方です。
この物語のテーマにもなっている千羽鶴。それは一つの親切の形ではあるけれども、穿った見方をすれば作り手の偽善でもあり、受け取り側が保管に困る代物。千羽鶴をこのような着眼点で追及していく様は前代未聞であり、浅はかな気持ちで千羽鶴…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ひと折りひと折りに込めた想いは、きっと誰かが明日を生きる力になる
この物語は、ボランティアで千羽鶴を作るヒロイン・花村さんと、その高校時代の同級生・田沢くんの恋を描いたものです。
読み始めてすぐ、花村さんの自己肯定の低さに気付きました。
家庭内で始まった悪意が新たな悪意を呼び、学校、職場、そして現在においてまで、陰湿な嫌がらせがついて回ります。
そんな花村さんの前に現れた田沢くんは、みんなが馬鹿にした彼女の千羽鶴を初めてもらってくれた相手です。
それまで常に自分を抑え、他人に迷惑を掛けないように神経をすり減らながら生きていた彼女は、この再会をきっかけにして、少しずつ自分の気持ちに向き合い始めるのです。
花村さんに向けられる悪意には激しい怒りを感じ、胸が…続きを読む - ★★★ Excellent!!!若い子が青春している姿、私も大好きです
群馬を舞台に、高校時代の同級生である、花村さんと田沢君の恋模様が描かれています。
生育環境から自己肯定感の薄い花村さん。その花村さんを高校のときから気にかけていた田沢君。
そのふたりがゆっくりと恋を、愛情を、関係性を育んでいく姿が丁寧に、綺麗に紡がれていきます。
私自身、『千羽鶴』に思い出があり、タイトルに惹かれて読み始めたのですが……。
途中、お兄さんの衝撃的登場や、はなちゃんの辛い過去に、「……読み続けても大丈夫かな」と不安になったりもしたのですが……。
杞憂でした。
ハッピーエンド大好きな私には、最高の物語でした。
皆さん。
このふたりの恋物語をあたたかく応援してください。 - ★★★ Excellent!!!誰かのために一生懸命になれる――そんな純粋な人間を描いた美しい恋愛小説
大変きれいな世界観を描いた作品でした。
紺藤ワールドは、これまでも様々なすばらしい発想の物語を残してくださっていますが、はじめての恋愛小説だとは思えないこれまたすごい作品です。
1話1話、文字数が多くないのでさくさく続きが読みやすく、作者様はとっても表現がお上手で読みやすいので、内容もスッと入りやすいです。
そして魅力的なヒロイン、はなちゃん。ですがこのはなちゃん。大変で壮絶な人生を歩んでいます。なのに、他人を攻めることは一切しません。
心の痛む内容もあるのですが、はなちゃんのキレイな心をたくさん知ることができます。誰かのために心の底から一生懸命になれる、そういう人って本当にきれいだなぁ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!傷けられてきた魂の、恋と再生の物語
ちょっと変わったタイトル、そしてちょっと変わった恋の物語です。
しかし、その中身は大変魅力的な物語です。
かなり奥ゆかしい性格、というよりまるで自己否定の固まりのような花沢さん。
そんな彼女を高校の時から気にかけていた田沢君。
二人が久しぶりに出会い、かつての想いを埋めるように近づいていくところから物語は始まります。
その舞台となるのは世界遺産にもなった富岡製糸場です。
問題はここからです。
一風変わったキャラクター設定、ちょっと変わった舞台設定。
そこから始まるのは心を抉るような濃密なドラマです。
脇を固める魅力的なキャラクターが登場し、悪意のある人間たちが容赦なく描かれ、その荒波に翻…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これはきっと、今も続いている物語。彼女の千羽鶴も、彼のピアノも。
「終わってしまった……」というのが、最終話を読んだ私の率直な感想でした。
それは何より、私がもっとこの作品を読み続けたいと思っているという証であると共に、面白さの証だと思います!
正直に言えば、第一章の「みずき」と「秋瑛」の間に起こった「とある出来事」が衝撃的で、この先を読み続けていいものかと迷ってしまいましたが、それでも読み進めることができたのは、第二章で「みずき」の思いや事情を知り、続く第三章で「とある出来事」に向き合うことができたからだろうと思います!
登場人物の心情にとことん寄り添い、その日常を描くというスタイルは、決して目を惹くような派手さはありませんが、「だからこそのリアリテ…続きを読む