傷けられてきた魂の、恋と再生の物語

ちょっと変わったタイトル、そしてちょっと変わった恋の物語です。
しかし、その中身は大変魅力的な物語です。

かなり奥ゆかしい性格、というよりまるで自己否定の固まりのような花沢さん。
そんな彼女を高校の時から気にかけていた田沢君。
二人が久しぶりに出会い、かつての想いを埋めるように近づいていくところから物語は始まります。
その舞台となるのは世界遺産にもなった富岡製糸場です。

問題はここからです。
一風変わったキャラクター設定、ちょっと変わった舞台設定。
そこから始まるのは心を抉るような濃密なドラマです。
脇を固める魅力的なキャラクターが登場し、悪意のある人間たちが容赦なく描かれ、その荒波に翻弄されながらも、二人の気持ちがゆっくりと近づいていきます。
この波乱万丈のストーリー展開、過去の思い出がフラッシュバックするようなエピソードの数々が、この物語をさらに鮮やかに彩ります。
その積み重ねがもたらすものは骨太といってもいいドラマ性ですが、この二人はそんな中を飄々と自分たちらしく、自然体で生き抜いていきます。
その様が本当に心地よくて素晴らしいです。

謎めいた展開にゾクゾクする構成力、キャラクターごとの魅力的な語り口と内面の描写、そしてなによりも極上の読後感。
ぜひ読んでみてください。
面白いです!

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