この作品には様々な要素が散りばめられている。胸がキュンとなることもあれば、胸をかきむしりたくなる時もある。泣きそうになる時もあれば、笑顔になって、とても癒されてしまうこともある。おそらくこの作者様は、キャラクターに感情移入させることに長けた書き手の一人だろう。
ちょっとした高校時代の千羽鶴に対する考えの違いや、それにまつわる出来事。主人公は傷ついているのに、自分の感情を素直に表に出すことはできない。それは彼女の家の厳しすぎる環境によって、もたらされていたのかもしれない。主人公は千羽鶴を折りながら、依頼者の事を想い、束ねていく。そんな優しい人が、自分は傲慢で我がままだと自重する姿は、痛々しい。
そんな彼女を受け入れ、守ろうとするのがもう一人の主人公の男性。彼は高校時代に彼女から千羽鶴を受け取った過去があるが、その記憶はあまり良いものではなかった。まるで触れれば壊れてしまうガラスのような心を持った彼女に、彼は惹かれていく。
人々が願いを掛ける千羽鶴を折る女性と、そんな女性を悪意から守ろうとする男性の恋愛譚。それでいて、千羽鶴を中軸に据えた群像劇的作品でもある。就活あり。世界遺産あり。そしてどこまでも優しい物語だ。
文章に癒されたいなら、この作品が絶対お勧めです。
是非、ご一読ください。
第一章まで読ませていただきました。
今まで私が作者様の作品を読ませていただいて受けた印象が、「とてつもなく丁寧!」に物語が構成されているな、ということです。
花村さんと田沢くんとの物語が紡がれて行く中、
はじめはすごくきれいな世界観だなという気持ちで見ていたのですが、
流石です。しっかりと背景にいろんな部分の歴史や、小道具、そして、花村さんの「兄」。この兄がまた、第一章での二人を引き立ててくれるといいますか。第一章でもう、凄い!と、何回言ったかわかりません!
それほど、本当に丁寧に作られていました。
評価数程の価値がある作品と、久しぶりに出会った気がします。
ちなみに、田沢くんの花村さんに対しての「俺って変態か!?」と思う気持ち、私にはお気持ちがわかりました(笑)私から見た田沢くん、可愛らしいんです。
是非、ご一読を!
田沢くんと花村さんのぎこちないながら微笑ましい恋愛模様……けれども決まって訪れる物語の転。そんな予定調和的に訪れる”転”は恋愛を盛り上げるエッセンス、無事解決することで二人の恋愛は盛り上がって……なんて考えていた私が浅はかでした、馬鹿でした! 許してください!!
皆さんと少し感想が違ってしまうかもしれませんが、自分がこの物語で一番衝撃を受けたのが”悪意”の扱われ方です。
この物語のテーマにもなっている千羽鶴。それは一つの親切の形ではあるけれども、穿った見方をすれば作り手の偽善でもあり、受け取り側が保管に困る代物。千羽鶴をこのような着眼点で追及していく様は前代未聞であり、浅はかな気持ちで千羽鶴をテーマにしていない作者様の覚悟が伺えました。
そして訪れた悪意に見舞われ、やり場のない悔しさ、怒りを抱えながらも、彼らが見つけた落としどころ。その迎えた結果にこそ作者様の思いが深く込められているように感じられ、一読者として深く考えさせられました。
また千羽鶴や富岡製糸場などに深く触れ、ラジオやピアノなどのちょいとオシャレな娯楽で彩る世界観に”純文学”を強く感じました。おそらく作者様は深くそういった小説を愛されているのだなと邪推いたしました。
あと忘れちゃいけないのが田沢くんと花村さんの初々しいやりとりです。
すぐに謝ろうとしちゃう、変なことで自己嫌悪に陥る、そんな謙虚さが初恋を思い出してズバズバ突き刺さります。物語中にあった”ほどいてはいけないようです”には鼻血が噴き出しました。あまりの可愛さに「なに言ってんだよ、こいつぅ」と小突き回してやりたくなりました。すいません。
穏やかながらも決して楽しいことばかりではない、当物語。初恋を知らない人にも、初々しさを懐かしみたい人にもオススメのお話です。一筋縄ではいかない田舎の世界観に、是非呑まれてしまいましょう。
この物語は、ボランティアで千羽鶴を作るヒロイン・花村さんと、その高校時代の同級生・田沢くんの恋を描いたものです。
読み始めてすぐ、花村さんの自己肯定の低さに気付きました。
家庭内で始まった悪意が新たな悪意を呼び、学校、職場、そして現在においてまで、陰湿な嫌がらせがついて回ります。
そんな花村さんの前に現れた田沢くんは、みんなが馬鹿にした彼女の千羽鶴を初めてもらってくれた相手です。
それまで常に自分を抑え、他人に迷惑を掛けないように神経をすり減らながら生きていた彼女は、この再会をきっかけにして、少しずつ自分の気持ちに向き合い始めるのです。
花村さんに向けられる悪意には激しい怒りを感じ、胸が引き千切れそうになりました。
けれども、彼女に手を差し伸べようとする田沢くんや、周囲の人々の姿勢に、何度も救われる想いがしました。
物語に登場する富岡製糸場やいろいろな文化遺産の描写も楽しく、まるで二人と一緒に見知らぬ街を歩いているような気分でした。
千羽鶴は、誰かの手に渡って初めて意義をなすものです。
千羽鶴そのものには、もちろん特別な力はありません。
でも、そこに込められた想いが伝わった時、それは誰かが頑張る力の助けになるのだと思います。
相手を思い遣る気持ちの大切さがそっと心に染み渡っていくような、素晴らしい読後感の作品でした。
群馬を舞台に、高校時代の同級生である、花村さんと田沢君の恋模様が描かれています。
生育環境から自己肯定感の薄い花村さん。その花村さんを高校のときから気にかけていた田沢君。
そのふたりがゆっくりと恋を、愛情を、関係性を育んでいく姿が丁寧に、綺麗に紡がれていきます。
私自身、『千羽鶴』に思い出があり、タイトルに惹かれて読み始めたのですが……。
途中、お兄さんの衝撃的登場や、はなちゃんの辛い過去に、「……読み続けても大丈夫かな」と不安になったりもしたのですが……。
杞憂でした。
ハッピーエンド大好きな私には、最高の物語でした。
皆さん。
このふたりの恋物語をあたたかく応援してください。
大変きれいな世界観を描いた作品でした。
紺藤ワールドは、これまでも様々なすばらしい発想の物語を残してくださっていますが、はじめての恋愛小説だとは思えないこれまたすごい作品です。
1話1話、文字数が多くないのでさくさく続きが読みやすく、作者様はとっても表現がお上手で読みやすいので、内容もスッと入りやすいです。
そして魅力的なヒロイン、はなちゃん。ですがこのはなちゃん。大変で壮絶な人生を歩んでいます。なのに、他人を攻めることは一切しません。
心の痛む内容もあるのですが、はなちゃんのキレイな心をたくさん知ることができます。誰かのために心の底から一生懸命になれる、そういう人って本当にきれいだなぁと思います。
大丈夫だよ。
わがままいってもいいんだよ。
とみんなが応援したくなる、そんな素敵な女性です。
田沢くんとは幸せになってほしい。それを切に願うばかり。今度、群馬県に行ったときはぜひおふたりで案内してくださいね。
ちょっと変わったタイトル、そしてちょっと変わった恋の物語です。
しかし、その中身は大変魅力的な物語です。
かなり奥ゆかしい性格、というよりまるで自己否定の固まりのような花沢さん。
そんな彼女を高校の時から気にかけていた田沢君。
二人が久しぶりに出会い、かつての想いを埋めるように近づいていくところから物語は始まります。
その舞台となるのは世界遺産にもなった富岡製糸場です。
問題はここからです。
一風変わったキャラクター設定、ちょっと変わった舞台設定。
そこから始まるのは心を抉るような濃密なドラマです。
脇を固める魅力的なキャラクターが登場し、悪意のある人間たちが容赦なく描かれ、その荒波に翻弄されながらも、二人の気持ちがゆっくりと近づいていきます。
この波乱万丈のストーリー展開、過去の思い出がフラッシュバックするようなエピソードの数々が、この物語をさらに鮮やかに彩ります。
その積み重ねがもたらすものは骨太といってもいいドラマ性ですが、この二人はそんな中を飄々と自分たちらしく、自然体で生き抜いていきます。
その様が本当に心地よくて素晴らしいです。
謎めいた展開にゾクゾクする構成力、キャラクターごとの魅力的な語り口と内面の描写、そしてなによりも極上の読後感。
ぜひ読んでみてください。
面白いです!
「終わってしまった……」というのが、最終話を読んだ私の率直な感想でした。
それは何より、私がもっとこの作品を読み続けたいと思っているという証であると共に、面白さの証だと思います!
正直に言えば、第一章の「みずき」と「秋瑛」の間に起こった「とある出来事」が衝撃的で、この先を読み続けていいものかと迷ってしまいましたが、それでも読み進めることができたのは、第二章で「みずき」の思いや事情を知り、続く第三章で「とある出来事」に向き合うことができたからだろうと思います!
登場人物の心情にとことん寄り添い、その日常を描くというスタイルは、決して目を惹くような派手さはありませんが、「だからこそのリアリティ」があると思いますし、それこそが本作の魅力だろうと思います!
また、その優しい語り口に惹かれている読者も少なくないと思いますが、私はあえて、その中で時折顔を見せる厳しさが良いアクセントに……と言ってしまうと野暮ですが、ただ優しいだけでは終わらない、切なさ、儚さも、見逃せない点だと思います!
こんなにも物語にのめり込むことなど、かつてあっただろうかと記憶を手繰っております。
こんなにも涙を流しながら小説のページをめくったことなど、かつてあっただろうかと心の抽斗を開けております。
主人公である花村みづきと、高校時代の同級生であった田沢洋也が再開し、互いに惹かれ、芽を出し始めた恋心をゆっくり大切に育てていくお話です。
一番の魅力を書かせていただく前に、この物語を単なる色恋沙汰の恋愛話にしていない大事な点をお伝えします。それは「世界遺産」と「食べ物」がきっちりと描かれていることなのです。どこかで引っ張ってきた説明文を、そのまま引用しているのではないのです。きっちりと寸法を測ってピタリと組み合わせるように、自然とお話の流れに沿って描かれており、また物語の重要なカギとして丁寧に挿入されています。だからリアリティがあり、のめり込めるのです。
そして最もお伝えしたいのは、「人はここまで他人に優しくできるのか」を花村みづきを通して、読み手の心を揺さぶってくるといくことなのです。
同年代の女子が楽しい事や面白い事に夢中になっている時に、家庭環境で一切経験できなかったみづき。唯一、千羽鶴を作ることだけが楽しみであった。だけど彼女は不平不満を口にすることなく、常に相手を思いやってきた。こう書くと根暗な女の子とイメージされてしまうかもしれませんが。
みづきの本当の優しさを知っている周囲の人間たちは、心からみづきの幸せを願っています。田沢洋也はその中でみづきを心から愛し、尊敬し、みづきと手を取り合って生きていくことを決意します。
読み終えて、創作上のカップルにも関わらず、二人の明るい未来を願う自分がいます。
哀しく切なく、それでいて心が温まる最高の物語です。
舞台は群馬県。
学生時代に出会い、社会に出てから再会した男女が織り成す恋模様。
なのですが、一筋縄ではありません。
恋には、山あり谷ありが付き物ですが、
彼女・花村さん。
彼氏・田沢くん。
正直、めでたく想像する通りの仲になってくれるのか。
最後までハラハラしました。
何故なら、彼女・花村さんの辿って来た状況が最後の壁だったからです。
人は、それぞれ生き様を背負っているものです。
それを見つめ、出しゃばらず、そっと隣に居てあげられる。
時に彼女から「傲慢」を引き出せる。
恋する男・田沢くんは凄いと思いました。
世界遺産に触れられる『千羽鶴、承ります』
人も文化も、その時々、状況で役割も受ける印象も、その価値観の共有も違って来ます。
花沢さん、田沢くんを通して、教えて頂いた気がします。
世界遺産・富岡製糸場。
季節を巡る、地元風景の豊かな文章。
辛い事も、嬉しい事も、万華鏡の中で煌めくような物語でした。
命がほころぶ恋愛ものは、素敵なジャンルですね。
素晴らしい作品を届けて下さって、ありがとうございました。
世界遺産が大好きな田沢くんと、控えめ気味で自分のことを下に見てしまうような花村さんの、まるで桜の花びらがそよぐように優美な恋愛模様です。
偶然の再会から徐々に距離が縮まっていく二人の様子は、とてもじれったくて、それでいていじらしい。
二人とも、とても心優しく、相手を敬い相手のために努力できることを探していくがんばり。とても好ましく思いました。
千羽鶴を黙々と折り続ける姿は行為的な目ばかりでもありません。その生き様は、どうしても目に余るのかもしれません。目を塞ぎたくなるような苦難に、内心ハラハラしました。
けれども、その出来事に対する決着のつけ方は、正直腹がたつ部分はありますが、びっくりするほどに腑に落ちる結末なのです。スカッとさせるわけではない。無念を抱えつつの結末は、ある種現実的で、だからこそよくがんばったと安堵と賞賛を送りたい気分でした。
二人の恋、その色は、どこか懐かしいセピア色に奏でられます。現代でありながらまるで懐古の浪漫に浸れる。ごちゃごちゃとした物やギミックでは表現できない、胸に落ちる温かみを感じました。
二人はこれからも進み続けるでしょう。
触れることもままならない距離から、徐々に近づいていき、いつかきっと、そう。
歩くようなはやさで。
初々しさの中にしっとりと落ち着いた雰囲気のある恋愛小説です。
主人公の花村さんと田沢くんの恋模様が中心となっていますが、深く関わるのは千羽鶴の存在。
誰かのために願いを込めて綴る千羽鶴ですが、それを肯定的に受け止めるのか否定的に拒絶するのかは人それぞれ。
人間に対してもそれは同様で、同じ人物に対して肯定的に受け入れる人もいれば、否定的に拒絶し攻撃する人もいます。
花村さんはまさにその渦中に置かれてしまった人物です。
祖父母や母親、同級生などに否定的に扱われてきた彼女ですが、彼女の兄や従兄、また高校の同級生だった田沢君や職場の先輩など、彼女を肯定的に支えてくれる人達も大勢います。
田沢君との再会をきっかけに、そういった周囲の人達に支えられながら、彼女は少しずつ自分の思いに正直になってもよいのだということに気づいていきます。
少しずつ、少しずつ、恋人らしくなっていく二人の成長を陰ながら応援したくなる物語です。
冷たい言葉や態度を受けながら、それでも誰かの為に千羽鶴を折るヒロイン花村さん。
高校時代から酷い扱いを受ける花村さんのことを気にしていた、世界遺産が好きな田沢くん。
この二人が再開することで、物語は始まります。
この話ではせっかく作った千羽鶴を捨てられたり、家族に「お前は産まれてこない方がよかった」と言われたりと、人の悪意が如実に出てきます。
ですがそれ以上に人を思いやる温かさを感じます。いくら罵られても、悪意をぶつけられても優しいままでいる花村さんと、そんな彼女のことを想い、力になろうと頑張る田沢くんの初初しい恋模様は、読んでいてほっこりさせられます。
群馬が舞台ということでたびたび富岡製糸場が出てきて、ご当地感があります。そちらに興味がある方にもおススメです。
やさしいお話なのです。でも、人間だからダークな部分もあるのです。でも、やっぱりやさしいお話なのです。
つらい境遇を背負って育った花村みづき。高校生の頃、彼女の折った千羽鶴をもらった過去がある田沢洋也。
ふたりは数年後、別の地で偶然再会する。そこは世界遺産に認定された富岡製糸場と絹産業遺産群が見守る土地だった。
恋愛小説なのだが、恋のライバルとか泥沼の三角関係とかは出てこない。つらい境遇に育ち、そこから一人、自分の居場所を見つけて小さな花を咲かせようとしているヒロインと、彼女に興味を持ちつつも、その気持ちを素直に表せなかった青年が、ゆっくりと近づき、互いの気持ちを確かめ合う物語。
全体に流れるふんわりした空気と、やさしい文体が、なにやら読者をほっこりした気持ちにさせてくれる。もちろん、ストーリーの起伏上、残酷な人間や、悪意を持った人たちも出てくる。だが、そんな冷たい雨や激しい風にも負けず、やさしい花を咲かせようとするヒロインと、彼女を暖かくつつむ日差しのような彼氏の、もどかしくも優しい恋の話が、春先の日向ぼっこのような温かさを読む者に与えてくれる。
恋に傷ついたり、人間関係に疲れたりしたあなたは、どうぞ本作をお読みください。
そして、誰かのために、千羽鶴を折ろうというヒロインの一途な気持ちに癒されてください。