終始眼が筋肉痛になりながらも、この物語に出会えたことに感謝しますぜ!

こんなにも物語にのめり込むことなど、かつてあっただろうかと記憶を手繰っております。
こんなにも涙を流しながら小説のページをめくったことなど、かつてあっただろうかと心の抽斗を開けております。
主人公である花村みづきと、高校時代の同級生であった田沢洋也が再開し、互いに惹かれ、芽を出し始めた恋心をゆっくり大切に育てていくお話です。
一番の魅力を書かせていただく前に、この物語を単なる色恋沙汰の恋愛話にしていない大事な点をお伝えします。それは「世界遺産」と「食べ物」がきっちりと描かれていることなのです。どこかで引っ張ってきた説明文を、そのまま引用しているのではないのです。きっちりと寸法を測ってピタリと組み合わせるように、自然とお話の流れに沿って描かれており、また物語の重要なカギとして丁寧に挿入されています。だからリアリティがあり、のめり込めるのです。
そして最もお伝えしたいのは、「人はここまで他人に優しくできるのか」を花村みづきを通して、読み手の心を揺さぶってくるといくことなのです。
同年代の女子が楽しい事や面白い事に夢中になっている時に、家庭環境で一切経験できなかったみづき。唯一、千羽鶴を作ることだけが楽しみであった。だけど彼女は不平不満を口にすることなく、常に相手を思いやってきた。こう書くと根暗な女の子とイメージされてしまうかもしれませんが。
みづきの本当の優しさを知っている周囲の人間たちは、心からみづきの幸せを願っています。田沢洋也はその中でみづきを心から愛し、尊敬し、みづきと手を取り合って生きていくことを決意します。
読み終えて、創作上のカップルにも関わらず、二人の明るい未来を願う自分がいます。
哀しく切なく、それでいて心が温まる最高の物語です。

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