マザーグースの「十人のインディアン」をモチーフに書かれた掌編。
十人の眼鏡っ娘が一人、また一人と消えて行き、やがて……。
マザーグース同様、恐ろしいやらユーモラスやらな内容です。
もともとの「十人のインディアン」のインディアンはもちろんネイティブ・アメリカンのことでありインド人という意味ではありません。この「十人のインディアン」をもとに書かれたアガサ・クリスティーの名作ミステリー『そして誰もいなくなった』は、現在では「インディアン」ではなく「兵隊」の表記になっています。
洒落のきいた内容です。ダークだったり、ユニークだったり、ユーモラスな理由で消えて行く眼鏡っ娘たち。そして最後の一人は……。
なんともヒネリが効いたオチです。
眼鏡っ娘に秘密があったことや、小説の題名に引っ掛けてもあり、さらに一瞬「実名?」と思わせる遊び心もあります。
また、題名についている【リベンジ】には理由があります。
作者が最初書いたのは『十人のファッションモデル』という短編でした。が、そこで実在の人物をオチに使ったため、規約違反であるとカクヨム運営より警告を受け、作品を削除した経緯があります。本作はその、リベンジ作品なのです。
内容に不備があったとはいえ、自作を削除するのはつらいものです。そのことに凹んだり、愚痴を垂れたりせず、作品で返す態度に称賛を送ります。
脚本家の三谷幸喜さんは、そのむかしテレビドラマの脚本を、スタッフによって勝手に書き換えられて放映されたことがあったそうです。が、三谷さんはそのことを訴えたり愚痴ったりせず、その体験から『ラジオの時間』というコメディーを書いて、たくさんの人を爆笑させました。
運営に警告をくらい、近況ノートやツイッターで愚痴をたれるのは簡単です。が、そうはせず、作品としてそれにリベンジする態度こそ、われわれ書き手の本分ではないでしょうか。
ぼくは、この作者の、作品とその書き手としてのスタンス両方に☆を3つ贈ります。