ただゆっくりと 歩くようなはやさで
- ★★★ Excellent!!!
世界遺産が大好きな田沢くんと、控えめ気味で自分のことを下に見てしまうような花村さんの、まるで桜の花びらがそよぐように優美な恋愛模様です。
偶然の再会から徐々に距離が縮まっていく二人の様子は、とてもじれったくて、それでいていじらしい。
二人とも、とても心優しく、相手を敬い相手のために努力できることを探していくがんばり。とても好ましく思いました。
千羽鶴を黙々と折り続ける姿は行為的な目ばかりでもありません。その生き様は、どうしても目に余るのかもしれません。目を塞ぎたくなるような苦難に、内心ハラハラしました。
けれども、その出来事に対する決着のつけ方は、正直腹がたつ部分はありますが、びっくりするほどに腑に落ちる結末なのです。スカッとさせるわけではない。無念を抱えつつの結末は、ある種現実的で、だからこそよくがんばったと安堵と賞賛を送りたい気分でした。
二人の恋、その色は、どこか懐かしいセピア色に奏でられます。現代でありながらまるで懐古の浪漫に浸れる。ごちゃごちゃとした物やギミックでは表現できない、胸に落ちる温かみを感じました。
二人はこれからも進み続けるでしょう。
触れることもままならない距離から、徐々に近づいていき、いつかきっと、そう。
歩くようなはやさで。