ただゆっくりと 歩くようなはやさで

世界遺産が大好きな田沢くんと、控えめ気味で自分のことを下に見てしまうような花村さんの、まるで桜の花びらがそよぐように優美な恋愛模様です。

偶然の再会から徐々に距離が縮まっていく二人の様子は、とてもじれったくて、それでいていじらしい。

二人とも、とても心優しく、相手を敬い相手のために努力できることを探していくがんばり。とても好ましく思いました。

千羽鶴を黙々と折り続ける姿は行為的な目ばかりでもありません。その生き様は、どうしても目に余るのかもしれません。目を塞ぎたくなるような苦難に、内心ハラハラしました。

けれども、その出来事に対する決着のつけ方は、正直腹がたつ部分はありますが、びっくりするほどに腑に落ちる結末なのです。スカッとさせるわけではない。無念を抱えつつの結末は、ある種現実的で、だからこそよくがんばったと安堵と賞賛を送りたい気分でした。

二人の恋、その色は、どこか懐かしいセピア色に奏でられます。現代でありながらまるで懐古の浪漫に浸れる。ごちゃごちゃとした物やギミックでは表現できない、胸に落ちる温かみを感じました。

二人はこれからも進み続けるでしょう。

触れることもままならない距離から、徐々に近づいていき、いつかきっと、そう。

歩くようなはやさで。

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