千羽鶴に願いを託す、不器用な人々の物語。

 この作品には様々な要素が散りばめられている。胸がキュンとなることもあれば、胸をかきむしりたくなる時もある。泣きそうになる時もあれば、笑顔になって、とても癒されてしまうこともある。おそらくこの作者様は、キャラクターに感情移入させることに長けた書き手の一人だろう。
 ちょっとした高校時代の千羽鶴に対する考えの違いや、それにまつわる出来事。主人公は傷ついているのに、自分の感情を素直に表に出すことはできない。それは彼女の家の厳しすぎる環境によって、もたらされていたのかもしれない。主人公は千羽鶴を折りながら、依頼者の事を想い、束ねていく。そんな優しい人が、自分は傲慢で我がままだと自重する姿は、痛々しい。
 そんな彼女を受け入れ、守ろうとするのがもう一人の主人公の男性。彼は高校時代に彼女から千羽鶴を受け取った過去があるが、その記憶はあまり良いものではなかった。まるで触れれば壊れてしまうガラスのような心を持った彼女に、彼は惹かれていく。
 人々が願いを掛ける千羽鶴を折る女性と、そんな女性を悪意から守ろうとする男性の恋愛譚。それでいて、千羽鶴を中軸に据えた群像劇的作品でもある。就活あり。世界遺産あり。そしてどこまでも優しい物語だ。
 文章に癒されたいなら、この作品が絶対お勧めです。
 是非、ご一読ください。

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