その噺が本当ならば、彼女はここに存在しなかった。

 作者がある人の祖母が語っていたという噺を、聞いた時のことである。
 その人の集落では、吉兆となる祝い風と、凶兆となる悼み風が吹く。集落の人々はこの二つの風に敬意を払いながら生活してきた。
 ところが、ある時に集落を災害が襲った。そこで集落人々はその対策として、祝い風を呼び込もうと考えてある行動に出た。このことによって、集落には祝い風が多く吹き込むようになったのだった。
 しかし、時間が経ってから、もはや取り返しのつかない凶事が集落を襲っていたことが明らかになる。ただ、祝い風だけを求めて行動に出ることを反対した血筋だけを除いて、この凶事に侵された集落はやがて――。

 人間が欲望をむき出しにして行為に及んだ時、自然の摂理が牙を向く。

 作者が実際に会って、今まさに直接話を聞いていた人物が、一転して
 恐怖の対象となり、思わず背筋がゾクリとしました。

 是非、御一読ください!

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