第24話 寝耳に水

 眠みに水。

 これじゃ意味が分からないって?

 いやいや、僕にはこれでいいのです。


 僕は水泳のあと、耳から水が抜けなくてプチパニックに陥ったことがあった。

 首を左右降ると、変な音がする。耳の中で空気と相まって良い感じにへばりついている。そんなところで依存されても何の得も僕にはなかった。ただただ、気持ちが悪いだけだ。


 首を傾げ片足で軸を取ってぴょんぴょんと何度か跳ねてみたが、頭がぐるんぐるんと揺れただけで取れなかった。


 学校の帰り道、「この水と一生付き合わないといけないのかもしれない」と恐ろしい考えを持ってしまった僕は半泣きで家まで小走りで帰った。


 玄関を開け、手洗いとうがいもせずに自分お部屋に閉じこもった。小学校男子、実は意外と怖がりで正真正銘のアホだったりする。


 仕事から帰ってきた父親は僕から事情を聞き、僕と同じで意味もなく慌てる。


「たっくん、お耳聞こえないの? 病院に行って診てもらう?」


 保険証を手に何処がかかりつけなのかで父親がドタバタしている所に母親がいつものように元気よく帰ってきた。


 僕らを見て笑って母親はこう言った。



 リビングの陽の当たった温かいフローリングの床に水の詰まった耳を下にして引っつけてみてごらん、と。


 半信半疑でリビングに行き猫二匹が落ちている(正確には転がって寝転んでいる)場所に僕も転がって耳を床に付けてみた。


 あらま、不思議。

 体温で温まったプールの水は右耳から、するりと出てきた。首筋から背中全体にぞくぞくとする僕は呆気に取られた。



 なにこれ?

 魔法?

(違います)



 ※必ずしも取れる方法ではないかもです。焦らずにじっとしてれば、するりと出てきます。大丈夫ですよ。(たぶん)


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