第13話 プチ行方不明

 ふと思う。


 うちの家族は連絡をするのが苦手なんじゃないかと……



 楽しくなって連絡をし忘れた!

 なんてのはよくある話だろう。


 うちのはそんな簡単な話じゃない。


 今回のお話はお兄ちゃんのことだ。



 お兄ちゃんは自衛官で、少し離れた場所に住んでいる。(某駐屯地に住んでいる。当たり前だとか、そこの人言わないのっ!)


 だけど普通に帰ってこれる。

 うん、これも普通だと思うよ。


 母親に連絡を一本入れて帰ってくることもあれば、休みの日にふらりと夜中に帰ってきたりもする。鍵を持って来てなくてインターフォンを連打して誰かに開けてもらうことも、しばしば。(夜中に連打はいかがなものか……兄よ……)


 今回は何かが原因で、お兄ちゃんと突如、連絡が取れなくなる。メールは元々返事はしないタイプだし、元来、電話もあまりかけても出ない。

(ある時は携帯電話がまったく繋がらなくなりました。お支払いしようね?)


 三ヶ月ちかく連絡がなくなり、流石に父親が焦りだした。


「お兄ちゃん大丈夫かしら?」

 日曜の午後にゆったりとした時間が流れる。父親は紅茶を注ぎながら心配そうな顔をした。


「もうお兄ちゃんも大人なんだからほっときなよ〜」

 と、母親はクッキー缶を片手に、もう片方の手で紅茶の入ったマグカップを持ち上げた。


「えー! だって〜」

「だって〜じゃないの! お兄ちゃんも男だから彼女の家に行ってたりするんだって!

 帰ってきたくなったら勝手に帰ってくるって! 」

「メイちゃん、お兄ちゃんってそういうものだと思う?」

「そういうもんでしょ……今回はアタシもお母さんの意見に賛同!」

「うーん……」

「うーんってまだ納得いってないのか。そんなに気にしたって仕方がないでしょ?」

「そうなんだけど……」

「連絡ないのは元気な証拠! 昔からそう言うでしょ?」

「放任主義!」

「そうかもね〜」


 この言葉と共に母親が柔らかな表情になり笑う。強いな、いや大きな人だと僕は思った。

(結局、三ヶ月後にふらりと帰ってきたし、普段通りでした。事件に巻き込まれたとかそんなじゃなかったです。めでたしめでたし。)

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