第17話 ホットケーキ狂想曲(カプリチオ) 第一楽章「買いだめ」
父親が何かにハマると面倒なことになる。
ある時は、ゲームのモンスターハ○ターシリーズに。
そのまた、ある時は、油そばだったり、ありとあらゆる猫グッズだったり。
しばらくの間、ずーっと、こだわって家族をも巻き込む。
正直に言いましょう。
パパ上殿、とても迷惑です。
今回のハマり方は新しいタイプで、さすがの母親も額に手を当て困った表情をした。
「パパちゃん、もういいから……」
その「もういいから」は心の奥底から押し出されるように、母親の口からこぼれたのである。
せっかくの美味しい物も、大量にあると最初は満たされる幸せで溢れるのだが、さすがに何日もそれが続くと、それはため息に変わる。
……はじめは良かったんだ。
「仕事の帰りにこんな物買ってきちゃった!
かわいいでしょ! 」
父親は子供のような顔で紙袋を頭上高く持ちガサガサと音を鳴らす。
「……なにそれ?」
ソファーで雑誌を読んでいた、お姉ちゃんの関心のまったく感じられない声が強風にあおられるようにリビングに飛んできた。
「お姉ちゃん興味ある? カワイイのいっぱいあるよ〜」
その言葉に父親はきらっきらの満面の笑みだ。これは本当に嬉しかったのだろう。
テーブルの上にジャジャーン! と古い言い回しで大袈裟に紙袋の中身をぶちまけた。
そこにはホットケーキの粉とナッツやチョコ等のトッピングが数種類あった。
「ホットケーキミックス……しかも数種……あと、このごちゃごちゃした物は何?」
お姉ちゃんの声が父親には届いていたかは、さておき。
ここから二週間のパワフル全開なホットケーキ地獄が始まる。
(ホラー映画の迫り来るワンシーンのようなBGMをイメージしてください)
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