第18話 ホットケーキ狂想曲(カプリチオ) 第二楽章 「ホットケーキとパンケーキ」
キッチンから香ばしいバターの香り。
甘くふわふわのホイップクリーム。
ふつふつと煮込まれるりんごのコンポート。
そこに、スパイシーなシナモンが際立つ。
なんて、優雅な午後でしょう。
なんて、素敵なティータイム。
と思いたい。
……思いたい。
「たっくんはホットケーキよりもパンケーキの方が好きなの?」
ごめん。
そういうことじゃなくてだね?
もう、飽きたって……本当は言いたいんだよね。でも、あの笑顔にその言葉は喉元で止まった。
「ベーコンとメイプルシロップって組み合わせも美味しいよ! あとはブルーベリーソースと塩みの強いハムもいいよね!」
なんて恐ろしい事を言い出すんでしょうかね、この方は……
「これ食べたらきっと、アメリカンな男になれるよ?」
なれねーよ……食を変えてもアメリカンになれないって小学生の僕でもさすがに理解していますよ、パパ上殿。ってそういうことじゃなくて!
「パパちゃん……もうホットケーキミックスなくなった?」
「あー、追加で買いに行く? ママちゃんと一緒に行きたい! 色々と種類があるんだよ〜! 米粉なんかもあるんだから〜」
「……」
母親は黙ったままでバスルームの掃除に行ってしまった。父親はそんな母親を見て首をかしげた。あーあー……若干、怒ってるよ……アレは。
「ただいま〜」
お兄ちゃんが久しぶりに帰還。(大袈裟)
これでまた、犠牲者が出ることになる。
「お兄ちゃん! ホットケーキ食べる? すぐに焼くよ!」
「ホットケーキ?」
「そ! ホットケーキ!」
「ホットケーキ?」
何?
この嫌な空気……
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