半熟な家族(仮)

櫛木 亮

第1話 それはある日突然やってきた

 僕は翼。


 翼と書いて「たすく」と読む。

 大抵は皆、僕を「たっくん」と呼んでくれる。その呼ばれ方は嫌いじゃないけど、たまに恥ずかしい時もある。でも、それは内緒。


 僕は、大きなお母さんと小さなお父さんの間に産まれた。ごく普通の家庭で、ごく普通に育ってきた。……筈だった。


 ある日突然お母さんが僕にこう言った。


「たっくん、よく聞いてね。……ママね、実はお父さんなの!」と。


 意味がわからなかった。理解しようにも頭がついていかなかった。だってさ、僕まだ小学五年生だよ? そんなの当たり前じゃない?


 僕にはお兄ちゃんとお姉ちゃんが居る。

 お兄ちゃんは今年で二十二歳。

 お姉ちゃんはこの世で最強と言われる(たぶん)十四歳の中学二年生だ。

 まあ表向きには、ただ年の離れた兄弟だ。


 でも、お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんではない。ホントのって意味ではお母さんは一緒だからホントのお兄ちゃんなのか! こういうのがとてつもなく僕は難しく思うんだ。


 「おなかが一緒で種が違う!」 と、お兄ちゃんは笑った。


 笑い事なのだろうか? 本心なのだろうか、強がりなのだろうか。それもやっぱり難しいと僕は思った。大人はよくわからない。今は分かりたいとも思わない。


 お姉ちゃんは学校にはきちんと毎日行くが、「私はひきこもりなのよ」と言う。

 これもいまいち、よく分からないけど多分誰にも自分の本当を見せないのだろうと僕は勝手に解釈した。僕もたまにお姉ちゃんの事がよく分からなくなるけれど、嫌いじゃないし、これといってこれは気にもしなかった。


 ……でだ。ここからが本題!

 「お父さんもお母さんなのだよ……」と、お父さんも言った。意味がわからないよね? そうでしょうそうでしょう! 説明するね! 僕の家族は作り物だ。嘘で塗り固められた家族。だけどそれは悲しい嘘じゃない。周りと少し違うだけ。何も変じゃない。


 お母さんの心は男性で、お父さんの心は女性なんだそうだ。でこぼこで、ポンコツで、面白い愛に囲まれた(?)嫌ってほどの変な家族ごっこゲームはドタバタにデタラメに突然始まったんだ。

 

 じゃ、次からは、とにかく僕の生活軸でゆっくりと話していこうと思う。

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