第5話 土曜と日曜 其ノ壱

 うちの家族は基本、土日はだらだらする。

 それは、もう本当にだらだらとする。


 そして家にいると色々と面白い。平日の頑張り屋たちは居なくなる。一切居なくなる。何処に行ってしまうのかは不明だ。


 朝ぼやけた目を擦りながらリビングに行く。とても静かだ。とりあえずテレビをつけてなんとなく情報番組を観る。これといって好きなわけでもない。


 しばらくして二匹の猫に囲まれるように父親がとんでもない寝癖と共に起きてくる。

 眠そうな顔で猫缶をキッチンで開け、猫の実る木になる。(脚をつたって登る様を僕はそう呼ぶ。)


 猫たちに無事ご飯をあげると黙ったまままた寝室へと戻っていく。それを合図のように今度は母親がのそのそと起きてきてウォーターサーバーの水をグラスに入れ一気に飲みほす。


「……ああ、たっくん起きてたのか。おなかは?」

 と聞いてくる。これも毎度のことだ。


「うん、ちょっと減ったかな〜」

「そか、じゃ〜朝飯つくろう! 目玉焼きとスクランブルどっちにする? あとベーコンとハムどっち? あと紅茶がいい? ジュース?」

「ん〜楽な方で美味しい方!」

「ん〜、わかった!」


 その声と共に今度は僕がトースターを出しマグカップとカトラリーなどを出す。僕の舌っ足らずな声と母親のハスキーな声はリビングからキッチンに軽快にキャッチボールをする。


 そうこうしているうちに今度は休みで帰ってきたお兄ちゃんが起きてきた。

 

 お兄ちゃんは日頃は家には居ない。土日だけが休みで金曜日の夜にふらりと帰ってくる。もちろん帰って来れない週もある。自衛官のお兄ちゃんは数年前の姿とは打って変わって筋肉バカな奴になっていた。リビングでいきなり筋トレはするし、なんだか口うるさくなっていた。正直に言う、これは面倒だ。本当に面倒くさい。


「お兄ちゃんは朝どうする?」

 母の声がする。


「俺の分あるの〜」

 お兄ちゃんが答える。


「あるっちゃあるよ〜」


 母親からなんとも曖昧な答えが飛んできた。

 それでもお兄ちゃんは普通にストレッチをしながら表情ひとつ変えない。これがうちだ。土日はこうなのだ。


 

 昼過ぎに父親がだらしがなく起きてくる。冷蔵庫を開けてしばらく考えて「夜ナニ食べたーい?」と甲高い声がリビングに響いた。



 ちなみにお姉ちゃんは朝からクラブ活動で居ない。

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