第四章 空の色

第15話 別の色

「そう。何か分かるかもしれない」

 外側が一面ガラス張りの廊下。足元に、等間隔でほのかな灯り。

 おさげの少女が話している。

「あの子が顔を見たがっているから、そろそろ」

 情報端末を顔の近くに構えている、十代後半の少女。

 外を向く。

 街の光はほとんど見えない。建物の影すら分からない闇。

「まだ、か」

 青い服に情報端末がしまわれる。

 おさげの少女は、空を眺めた。雲すら見えない。一面の黒。

「自分の気持ちを隠そうとする必要ないのに」

 灰色の廊下を歩いていく青。

不撓不屈フトウフクツもいいけど、ときには自分から折れても……」

 闇から、何かが現れた。

 黒い服の少女。儚げな雰囲気で、青いうしろ姿を見ていた。

 銀髪を揺らして、少女は消えた。


「困ります。ご予約を入れてから――」

「うるせえ! 入れろ!」

「ねえちゃん、きれいな顔してるじゃねぇか」

「そうです、綺麗です。だからバトルです」

 ドアを挟んで誰かが言い争っていた。

 少女が近寄る。

「なんですか?」

「アイムさん。この人たちが、伝説の人物と戦わせてくれ、と言って」

 スーツ姿の女性は、おさげの少女に助けを求めた。

 建物内から放たれる光で、外に立つ三人の姿が見える。

「たまに現れるのですよ。身の程知らずの挑戦者が」

「はあ」

「どこで情報を手に入れたのかしら」

 青い服のアイムは、外を見つめた。

 茶色い服の三人組が、いまにもガラスを破らんばかりの勢いで迫っている。

「嫌いではないですよ。私は」

 入り口のドアが開けられた。


 能力者の聖地。

 まだ闇が支配している。街の全貌をうかがい知ることはできない。

 中心部近くにある、大きくて立派な建物。

 その内部。

 能力者協会の一室に灯りがともる。

「三人いっぺんにだと?」

「正気か? 嬢ちゃん」

「お熱、測ります?」

 茶色い服の三人組は、相手を心配していた。

 おだやかな顔の少女が手に力を入れ、金属製のドアが開く。

 白色の広い部屋に、四人が入る。

 中には円形の広場があった。半径、約50メートル。

 部屋は四角い。よく見ると、壁に格子柄がある。

「大丈夫です。ほら」

 アイムが微笑んだ。

 三人の表情が変わる。そして、不敵な笑みを浮かべた。

 青い服の少女が尋ねる。

「このあとご予定があれば、模擬戦にしますが」

 ウノとドスとトレスは、能力バトルを希望した。


「一ノ型は素手、二ノ型は武器。三ノ型は遠距離ね」

 おさげの少女が分析している。青緑色の服になっていた。

 空中のゲージはほとんど減っていない。

 土気色の服の三人組は、広場の隅まで追いつめられている。

「くっ。化け物か」

「能力が、意味を為さない」

「帰りたい」

 空中のゲージは、三人とも残りわずかだ。

 そのとき、どこからともなく声が響いてきた。

『勝手に出ていきおって。この馬鹿弟子共が!』

 三人は土下座した。同時に言う。

「ごめんなさい、師匠」

『さっさと帰ってこい。次の種をまくけえのう』

 声がしなくなった。

 通信ツウシン能力だった。

 三人組は降参。戦闘空間が消えていく。

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