第10話 灰色の二人

 肉体へと戻ったカイリが、灰色の服になる。

 隣で、コスミも灰色の服になる。

 本体の近くで元に戻ったシロガネは、白い服になった。

 まとまりのない髪を風が揺らす。腕を確かめることはなく、表情も変えなかった。

 戦闘空間が消えていく。

 かたむいた日の光を軽減するのは傘。道を挟んだ西側の建物に設置してある。

 広場の中心へと歩いた三人を、見物人が取り囲む。

「1対2で勝つなんて、驚いた」

「二人の連携も冴えていたね」

「三人はチーム?」

 白い服の少年は黙っていた。

 二十代半ばの女性が受け答えをする。模擬戦なのでお金は遠慮願う。

 しかし、見物人たちはお金を渡していく。

 十代半ばの少女は、おとなしそうな少年を見ていた。

 お金を貰ったシロガネは、無造作にポケットへ突っ込んでいた。


 見物人が広場の外に出ていく。

 三人は南に向かう。コスミを中心にしてベンチへ座った。

 ジョーとガイとダンは前に立っている。別のベンチに座ろうとしない。

 黄緑色の服のジョーが、難しい顔で口を開く。

精神牢バロウが通用しないとは盲点」

「そうだな。動かないからな」

 赤茶色の服のガイが同意して、豪快に笑った。

 おとなしくベンチに座る少年が反応を示し、目が右を向く。

 青紫色の服のダンは、何かを考えるような仕草。口は開かず、ジョーとガイが話し続ける。

 痩せぎみの少年が上を向く。

 シロガネは、傘の向こうの空を見ていた。

 カイリは、十代後半の男性たちを見ていない。左を向き、半目ぎみの目を細めている。

「お話し、どう? シロガネと」

「あたし? なんで?」

「歳が同じくらいだし」

「先でしょ。自分のことが」

 コスミの猫目に変化はなかった。


「ん?」

 ジョーが取り出したのは情報端末。操作して、メッセージを確認する。

「もうじき着く。と、レオンから届いたぞ」

「さて、どうする?」

「詰めても、座れるのは五人までだよね」

 ガイとダンはベンチの心配をしていた。

 カイリとコスミは、立ち上がる気配がない。

「模擬戦やるか?」

「もうじきだから、待とうよ」

「先にリーダーの意見を聞け」

 ジョーがガイとダンをたしなめた。


 レオンがやってきた。

 細身で筋肉質の身体を、淡い黄色の服が包む。

「悪い。遅くなった」

「精神体のように速く走れないね」

 遅れてやってきたエミリ。薄い桃色の服が揺れた。柔らかな雰囲気を纏っている。

 荷物を自宅に置いてきた二人は、客人に気付いた。

 ベンチから立ち上がったカイリとコスミが、先に挨拶をする。

「こんにちは。シロガネをどこで拾ってきたのかしら」

「拾わないと思うわ。やっぱり駅? こんにちは」

「実は拾ったのだ、と言っても信じてもらえないだろうな」

「うちはまだ信じられない」

 レオンとエミリが説明を始めた。

 その様子を、広場の外から誰かが見ていた。

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