第17話 橙色と紺色、赤と深緑

 高い位置に傘のある、まるい緑色の広場。

 ガイたちのいた広場と同じく、半径約50メートル。

 北側に白い建物がある。

 あたりには、戦闘空間が広範囲に展開している。広場で誰かが戦っていた。

 薄暗いためによく見えない。

 広場の南西から、細身で筋肉質のシルエットが現れた。近付いてくる。

「おはよう。よく眠れたか?」

「おはよう」

 悩ましい姿態の女性が続けて挨拶した。

「おはようございます。レオン」

「エミリ、おはよう」

 丁寧なカイリに続いて、軽い調子でコスミも挨拶した。

 シロガネは何も言わない。

「よし。いこうか」

「もう説明してあるよ。こっち」

 淡い黄色の服の青年と、薄い桃色の服の女性が先導する。

 白い服の少年が広場に近付く。

 カイリとコスミは、そのあとを歩いた。


 シロガネは二人に見つめられていた。

「タクミより強そうね」

 橙色の服の少女が微笑んだ。十代後半でミドルヘア。

 つり目ぎみの目が動く。隣の長身の少年を見た。

「人のこと言えるか? 俺の活躍見とけよ、スズネ」

 紺色の服の少年が、言葉を返した。十代後半で髪は普通。

 たれ目ぎみの目に力が入る。すぐ柔らかい表情になった。

 二人のうしろで空中の丸が消えた。

 模擬戦が終わり、光のドームが消えていく。

 広場の中心付近で動きを止める、勝者と敗者。

 白と緑が、赤と深緑に変わる。


 広場を横断して、全員が北側に集まった。

 カイリとコスミはすこし離れた位置にいる。

 シロガネは六人に囲まれていた。

 四人が自己紹介。ヤヨイ組の広場だと説明される。

「ヤヨイたちには悪いが、まずはおれからだ」

 二十代後半のレオンは、爽やかな笑みを見せた。

「はい。興味あります」

 赤い服の少女は真剣だ。興奮を抑えきれず、ロングヘアとスカートを揺らす。

 十代半ばの平均より、すこし背が低い。身体の前で、拳を握りしめていた。

「実際に見ないと、分かりませんよね」

 深緑色の服の少年が言った。十代半ばで短髪。

 ちらりと隣の少女を見て、すぐに視線をレオンへと戻した。

「普段どおりの口調でいいぞ。ヤヨイもカケルも真面目だな」

「そうだよ。レオンおにいさん、怒らないよ」

 エミリの言葉に、少年少女は不思議そうな顔でお互いを見つめた。

 十代後半の女性が言葉を続ける。

「というわけで、うちも模擬戦!」

「ああ、おれのあとか」

「一緒だよ。やろう」

 微笑むエミリに、シロガネは小さく頷いた。

「予想外だな。まあ、これも経験だ」

 三人は、緑色の広場の中心へと歩いていく。

 レオンとエミリが東寄りに、シロガネが西寄りに向かう。

 辺りは少しずつ明るくなってきた。


 戦闘空間が広がっていく。

 濃い黄色の服のレオンと、桃色の服のエミリが現れた。

 シロガネも精神体に分離する。灰色の服に鎖が巻きついている。

 円形のドームは、広場の3倍ほどの大きさで止まった。

「狭いね」

「鎖と関係してるのか?」

 広場の外。北側で、隣に座るヤヨイとカケル。

 スズネとタクミは、少し離れたところに並んで座っていた。

 さらに離れて、灰色の服の二人が立っている。

 空中に浮かぶのは丸。模擬戦が始まる。

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