第8話 黄緑と赤茶と青紫

「模擬戦も終わったことだし、頼みについてだが」

「てっきり、バトルしてくれ、ってことだと思ってたぜ」

 レオンの言葉にすぐ反応するガイ。六人は広場の南側に集まっていた。

「シロガネ、バトルだと話してくれるよね。口悪いけど」

「ああ、だから、バトルを続けるのがいいと思う」

「……」

「というのは建前で、まだ伸びしろのあるシロガネは、このままだと惜しい」

 すこし考えたそぶりを見せて、癖のある髪のダンが口を開く。

「鎖をなんとかして、全力で戦わせようってこと?」

「ワシの勝ち目がなくなる」

「いいだろ、別に。で、どうすればいい?」

「能力者協会なら、なんとかなりそうだと思わないか?」

「荷物置かないといけないから、ちょっとシロガネ預かって」

 微笑んだエミリは、シロガネに歯ブラシを渡した。荷物を持って歩き出す。

 レオンも荷物を持ってあとを追う。

 薄い桃色の服の女性と、淡い黄色の服の青年は自宅へ戻っていく。

 しばし、チーム・ジョーガイダンでシロガネを預かることになった。


 能力者協会では、能力者のランク付けを行っている。

 完全予約制。建物内で、判定する人とバトル。分かりやすい方法だ。

「ランク付けをやるべきだ、シロガネ。便利だぞ」

 尖った髪のジョーが提案した。

 聖地では、ランクが高いと町の施設が格安で使える。広場を借りられる。宿も確保できる。

 ちなみに、ジョーはランクB上位。ダンも同じく。

 上位と下位で待遇に差はない。

 太い眉毛のガイはランクAだ。半径50メートルほどの広場は、ガイが借りていた。

 シロガネの反応はない。

 四人は並んでベンチに座っている。南の建物から伸びる傘が、日差しを軽減しつづける。

「レオンお兄さんの言うことしか聞かないのか?」

「ひょっとして、シロガネに勝ったのかな?」

「あり得る。ランクAは格が違う。というか模擬戦での多重推進スラスター、反則」

 ジョーが早口でまくし立てた。


「模擬戦とはいえ、連戦で疲れただろ?」

 ガイの言葉に、シロガネは首を横に振った。

「そうか! もう一回やろうぜ」

 赤茶色の服の男性が歩き出した。白い服の少年も広場の中心へ向かう。

 戦闘空間が広がっていった。

 ガイは東寄りに立つ。

 シロガネは西寄りに。服には鎖が巻き付いている。

 丸い広場が、半分ほど黒く染まる。

 黄土色の部分が東側に残る。三日月形の部分から、赤が動き出した。

 灰色は動かない。

 ガイの足元から刃が伸びた。


 戦いを見ながら、ダンとジョーが話す。

「近接武器が使えないとなあ、やっぱり」

「棒は選ばないぞ。絶対に」

「剣を維持するのは難易度高い」

「いい形状はないものかね、ダン」

「なにか案出してよ、リーダー」

「そうだ。トンファーだ」

「いきなり、その形? まずは長い棒で――」

 ベンチで話し込む二人をよそに、広場では激闘が繰り広げられていた。

 シロガネは、辛辣な言葉を吐きながら模擬戦を続けた。


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