第7話 ジョー対シロガネ

「ついに出番だな。リーダー!」

「よっ。リーダー」

 ガイとダンは嬉しそうだ。

「よし。やってやる。やってやるぞ!」

 黄緑色の服のジョーは、気合いを入れた。まるい広場の中心に向けて歩き出す。

 白い服のシロガネも続いた。

「レオン、どう思う?」

「見てみないことには、なんともだな」

 エミリの問いに、爽やかな笑顔が返された。エミリも微笑む。

 四人は、南側の選手用ベンチに並んで座る。

 相手選手用のベンチには、誰も座っていない。


 辺りの雰囲気が変わった。

 黄土色の広場に立つ二人。中心付近から、円形のドームが広がっていく。

 ベンチに座る人や、席が足りず立って見守る見物人を通り抜けて、ドームは広がる。

 広場の外まで広がり、道や街路樹を飲み込んで止まった。

 ジョーの身体を光が包み込む。

 光の壁になった場所から、ジョーが現れた。緑の服になっている。

 東寄りに立つ。

 シロガネの身体も光に包まれている。

 光の壁になった場所から、シロガネが現れた。

 灰色の服に、鎖が巻きついていた。

 西寄りに立つ。

 精神力を消費しない、模擬戦が始まる。


「一撃必殺!」

 ジョーは、手から通常弾を連射しながら南東へ走った。

 弾は列車並みの速さ。

 地面から伸びた刃が弾を消す。闇の範囲が少しずつジョーに迫る。

 1つだけ角張った弾が混じっていた。

 刃に当たると、光を撒き散らして広範囲が攻撃された。

 シロガネには届かない。じりじりと接近する。

「何がしたいんだ、オマエ」

 ジョーは広場の端に到達した。反時計回りに広場の隅を走り始める。

 さらに通常弾を連続で放つジョー。

「どこかで見た気がするぜ」

「ああ、さっきのボクだ」

 ガイとダンは冷静に見守るのみ。


爆裂波バクレツハ

 ジョーの掛け声のあと、地面から伸びた刃で弾が止まった。爆発。

 鎖に縛られたシロガネはゆっくりと近付いていく。

「こっちに来れば、早く終わるぞ」

「波! 波! 波!」

 左右に動きながら連発される角張った弾。

 刃が弾を止めるたびに爆発が起こる。

 ジョーに近付く黒い領域には、13個の刃が固まっている。

「ここだああああ!」

 広場の隅を時計回りに走りながら、緑の服の男性は弾を連打した。

 刃が闇に沈んだあと、灰色の服の少年は弾を受けた。

 西側の宙に浮かぶ丸が1つ消える。

「うるさい」

 低い声がしたときには、すでにジョーの足元に闇が広がっていた。

 シロガネは、2発目以降の弾を半球体の光の壁で防いでいる。

 連続で伸びる刃がジョーに次々と命中。

 東側の宙に浮かぶ丸は全て消えた。


 模擬戦は終わった。

 ジョーの精神体が肉体へと帰っていく。疾風のように。

 光の壁の中から、黄緑色の服を着た男性が現れた。

 すこし遅れて、シロガネの精神体も肉体へと戻る。

 光の壁の中から、白い服の少年が現れた。

 広場とその周辺を覆っていた戦闘空間も消えていく。

「やっぱり、接近戦ができないとまずいぜ。お前たち」

「ボクもそう思う」

「うちは遠距離戦できるようになりたい」

「おれは、ガードを磨かないと」

 ベンチの四人は未来を見ていた。

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