概要
イギリス史上おそらく最初の近代的な不買運動を背景に女性たちの思考が錯綜します。
5話で完結済みです。
※ガールズラブ要素を含みます。苦手な方はご注意を。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!他者との距離の不安定さ
特定の時代や状況に限らず、立場や経験によって物事の価値や見方は変わります。
砂糖を紅茶に入れるという、たったそれだけの行為ですら人によって見方は変わってしまう。
そして価値観の違いの大きさに気づいたとき、相手との距離を感じてしまい、昨日まではすぐ隣にいた人が遠くなる。それがどれほど愛し近しい人であっても。
人は同じ経験を積むことはできません。
同じ経験したからといっても同じ見方をするわけでもありません。
まして、周囲の人が知らないことを経験したなら猶更です。
そういった、身近に潜む、他者との距離の不安定さをこの作品では実感できます。
歴史時代小説の形で、普遍的な人の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!女の子たちの視点で描かれた、砂糖の真実
砂糖は甘いけど、ちょっと苦めのお話。
舞台は18世紀のイギリスでございます。ええ、歴史が織り混ざった話です。ですが、ただの歴史小説ではございません。
なぜなら、魅力溢れる五人の女の子たちの視点で、物語が語られているからです。
ええ、どの子も大好きです。女の子、可愛い。(話を戻します)
どの子の家柄の裕福さも違い、自らが経験したことも違います。
ですが、五人は仲良しでした。あることが、起こるまで……。
「お砂糖は何匙?」
このレビューだと、可愛らしい女の子たちのお話かと思われますが、違います。
作者特有の知識を活かし、美しい文章で描かれる作品は、心惑わせます。
私た…続きを読む - ★★★ Excellent!!!甘い砂糖の背後に潜むものは? 結構、骨太な物語。
骨太と書きましたが、文字数が少ないので、サクッと読めます。
小道具に砂糖を採用してますが、女の子のキャピキャピお茶会の物語に止まりません。
近世末期のお茶会を舞台にしつつ、作品テーマは現代社会にも通じるものがあり、確かに歴史ジャンルですが、社会派小説の趣きもあります。舞台とする時代が違うので、ノンフィクションではありませんが、それに近いです。
ガールズラブっぽい面もホンの僅かです。塩味の料理を「甘党の方の口に合うかしら?」と出すみたいな感じで、それを毛嫌いして読まないのは勿体無いです。
短編にはMAX2つが信条なんですが、星3つ付けました。 - ★★★ Excellent!!!甘いお茶会と思っていたら地獄の同窓会だった
18世紀の英国にて、久しぶりにお茶会を開く5人の女性のお話です。
和やかに始まったお茶会ですが、あるひと言をきっかけに微妙な空気が走ります。「お砂糖は何匙?」
なぜ、一見ありふれているようなこの言葉で、場の空気が変わるのか。その理由が、当時の歴史を下敷きにした物語として鮮やかに描かれています。
素晴らしくまいっちゃうお話でした。
もし私がその場にいたら、どうするのだろう。震えながら「とりあえず自分の畑を耕そうと思いますわ」とニコッと笑って胃薬を探すかもしれません。
卑近な例で恐縮ですが、同窓会を思い出しました。
当時の関係。今の立場。そして好きすぎる故の言葉のやり取り。もう本当にま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!砂糖をめぐる少女たちの甘くない物語
だいたい30分あったら読める今作品ですが、その30分の間に自分の価値観がガラリと変わってしまうような一服の劇薬となっています。
まるで、美しい通り魔にすれ違いざまに刺されたような感覚に襲われました。砂糖と少女たちのお話なのに、ぜんぜん甘くない。むしろ、ほろ苦い……。
私は歴史的背景と人物たちのドラマが巧みに織り交ぜられた歴史小説が好きなのですが、この小説は奴隷制やそれに支えられている人々たちの生活、零落したお嬢様が見た社会の暗部など、とても見事な筆力で描かれています。
何よりも、少女たちの甘く囁くような語りで人間と社会の闇や愚かさが描写されているのがたまらなく素晴らしかったです。
カクヨ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!けして俯瞰にならないレンズ
18~19世紀、大陸で絶対王政とカトリックの優位が揺らぎ、中世から続いた「神ってる国々」の地位が落ちてくる時期。この時期を少し知る者ならばこの小説の深い面白さをより楽しめる。そうでなくても「なぜこの会話がこの人には響くのか」知りたくなった人はイギリス近代史の本を読んでみましょう。この短篇の底知れない怖さがわかる。イギリスが植民地にしていたアフリカ、西インド諸島の奴隷制には怒りを抱く正義感あふれる女性も、やがて自分が『砂糖なしで』なら飲む紅茶の産地・中国がいかにイギリスに食い物にされてゆくか知らない。『お砂糖はいかが?』その一言の受け止め方は、女性たちの立場や信条によって異なる響きを持つ。そし…続きを読む