僕は、おばあちゃんに恋をする

いづる

第1話 帰省と落下

「じいちゃん、ばあちゃん、お久しぶりです!」


「おぉ、透(とおる)!よく来たねぇ。ほら、上がって上がって。おいしいメロン買っておいたから!」


家族で父方の祖父母の家に顔を出す。毎年の恒例行事だ。


今年は高校生活最後の夏休み。受験を控えて、周りには志望校を見据えて受験勉強に本格的に取り組み始めているやつもいる。正直、なりたいものなんて無い。大学は出ておいた方が良いと思っているけど、勉強に手が付けられないでいた。


じいちゃんたちに会うのはゴールデンウイーク以来かな、顔を出すと喜んでくれるのが嬉しい。小さい頃からずっとお世話になっている。


「また背が伸びたんじゃないか?」


「そうかなぁ。何もしてないけど」会うたびに言われるのも慣れた。


ばあちゃんがうまそうなメロンをテーブルに運んでくる、よだれが出そうだ。


「いただきまーす!」


「どうぞ!まだスイカもあるから!おせんべいもあるけど食べるかい?」


「まぁまぁ、そんないっぺんに食べられんでしょうが」親父がいつものツッコミを入れる。そんなたわいない話をしながらメロンを食べる。


「お父さん、もうそろそろじゃないかねぇ」


「そうだなぁ。こんくらいの背格好だった気がするけど」じいちゃんとばあちゃんが俺をジロジロ見ながら話をしている。


「うん? 何のこと?」


「こっちの話さ。透は今バンドをやってるんじゃないかぃ?」


「そうだけど~、あれ? 俺、ばあちゃんにバンドやってること言ったっけ?」


「いつだったかな、ちらっと聞いた気がするよ」


「へぇ~」


「実はな、じいちゃんも昔バンドをやってたんだ」


「え? そうなの!?」


「そうだぞ~。ドラム叩いてたんだ。」


「まじで!? そうなんだ!」


じいちゃんがドラムやってたなんて初耳だぞ!


「あの時のおじいちゃんはまぁまぁ格好良かったねぇ」


「まぁまぁは余計だろ!」


「へぇ、見たかったなぁ。ばあちゃんは見たことあるってことだよね?」 


「まぁ、そのうちね。おじいちゃんがやってたバンドの人は私の友達でもあったから、よく見に行ったりしたもんだよ。あの頃にファーストキスもあげちゃったんだから」


「(まぁ、そのうち??)ファーストキスはじいちゃんじゃないの?」


「それが違うんだよぁ。まぁ、あいつは格好良かったからな。仕方ないな、なぁ?母ちゃん」


「そうねぇ」


「じいちゃんたちの青春時代も楽しそうだね!」


「あぁ、戦争が終わって、一気に日本の文化が広がっていった時代さ。アニメ、映画、特撮、音楽、俺たちが学生の頃から盛んだったんだよ。」


「そっかぁ。いつの時代もあまり変わんないのかもね。」


親父が小さい時も気になるけど、じいちゃんたちが若かった頃も興味がある。どんな生活を送っていたんだろう。


「ごちそうさま! ちょっと散歩してくるね!」


「いってらっしゃい」


そう言って家を出る。これも俺の恒例行事だ。


小さい時、よくじいちゃんに連れられて歩いた散歩コースがある。じいちゃんの家は海沿いの片田舎にあって、近所の家も3軒くらい、買い物に行くには車で20分くらいかかる。その代わり、防風林を抜ければ歩いて5分くらいで海に出る。海沿いから公園の中を通って、ぐるっと1周回るのが散歩コース。高校生になったくらいからは、1人で景色を眺めながら散歩している。


「あっついなぁ」


日差しが強い。海沿いだから影が全く無いけど、海からの潮風が心地良い。波打ち際は海水浴をしている人たちで賑わっている。子供の頃はよく家族で行ったものだ。


防波堤の上に乗っちゃったりしながら歩く、下にはテトラポットがたくさん並べられている。


遠くから砂浜の人たちを眺める。ガキんちょの頃からずっと歩いてきてんだ、高3にもなって落ちるわけがない!


お?


「グラマラス!」


美女の引き締まったお尻!前が見えないがプロポーションは絶対に良い!美女に決まってる!前が見たいなぁ


視線を固定しながらスピードを上げてしまう・・・


ぐらっ


「え、、?」




「あ、あ、ああああ!!!!!」

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