第15話 嵐の前の静けさ
「おはようございま~す」
「おう、起きたのかい。よく寝てたね」
「え? だってまだ朝の10時ですけど」
「あんた1日丸々寝てたんだよ」
「え!? そうなんですか?」
「そうよ、死んだんじゃないかって心配したんだから!」
「あ、京子さん」
「大丈夫、京子が付きっきりで見てたから。良い夢でも見てたんじゃないの?」
「おかげさまで、えへへ」
「ちょっと!透くん何言ってんのよ!」
「2人ともかわいいねぇ!」
そっか。俺1日寝てたのか、あれだけボコボコにされればねぇ
でも、鏡を見るとだいぶ顔がまともになっていた。
「じゃあ、俺はあいつらの所に顔を出してきます」
「わたしも」
「京子さんは明日までここにいて、これ以上危険な目に合わせたくないし」
「だって!」
「京子、そうしてやんな。男にはいろんな戦いがあるのさ。女が口を出したらいけないよ。明日には終わるんだろ? 今日くらいいいじゃないか」
「はい、ちゃんと終わらせますんで」
「わかったわよ! 行ってらっしゃい」
「そうだ、西高の横の河川敷ってここからどうやって行けばいい?」
「うーんとね、北高に行く途中に大きな十字路があるでしょ? そこを左に曲がってまっすぐ行くと西高だから、行けばわかると思う」
「わかった。ありがとう」
そう言って家を出る。河川敷まで歩いて30分くらいだった。ここで明日、あきらが1人で戦わなければならない。あいつの事だ、頑なに1人で行きたがるだろう。
今は西高の奴らの姿は無かった。カツヒコを倒さなければ後々めんどくさいことになるのは俺でもわかる。どうしてやろうか・・・
音楽室に向かう。いるかちょっと不安だったけど、音楽室からいつもの音が聴こえてくる、それだけで安心した。
「うーっす」
「とおるぅ! 元気になったんだな!」
「おかげさまでな」
「顔もましになったじゃないか。あのままだったらさすがにステージに上がれなかったぞ」
「まさか明に冗談を言われる日が来るとはなぁ」
「ギターは弾けるのか?」佐藤が口を開く
「あぁ、問題ない。心配かけて悪かった。みんな練習の方はどうなってる?」
「俺ら天才だからさぁ! とおるのいない間に完璧にしてやったぜ!」
「言ったなぁ? どれ、合わせてみようか」
おお。みんなの楽器を持つ姿が様になってる、ちゃんとやってたみたいだな。
「よし、始めよう」
「たなかぁ! まともに弾けてんじゃん!」
「だろー! 俺天才だからさぁ」
「調子のるな! お前が一番とちってたぞ!」
「バレた?」
「当たり前だ! 何年バンドやってると思ってんだ!」
「え? 何年?」
「うーんと、3年くらい?」
「だいぶ先輩だな!」
「まぁ、俺は祭りまでだから、その後はお前らに任せるんだけどな!」
「え~、ずっといろよー」
「そんなこと言われたって、俺も学校生活があるんだから仕方ないだろ。」
「明も純平も、普通に演奏できててびっくりしたよ」
「まぁな、楽しくてずっとやってしまうんだよな」
「俺もだ」
「たなかぁ! モテたかったらもうちょいがんばんないと、ギターはミスるとすぐバレるからな!」
「くそー! がんばる!」
「明日! あいつらを返り討ちにした後オリジナルの練習を始めるから。明、くれぐれもケガするんじゃないぞ」
「あぁ、任せとけ」
「といってもよぉ。相手はたぶん10人はいるんじゃないか?」
「俺らも一緒に行っちゃだめなのか?」
「あいつが1人で来いと行った。タイマンで決着をつける」
「とりあえず、今日はこれくらいで大丈夫だろ。演奏に関してはほとんど問題無い!」
「明、気を付けてな!」
「おう!」
明が先頭で音楽室から出ようとしたときを見計らって、小さなメモを田中と純平に渡して目配せをした。
明と別れる直前にどうしても伝えたいことがあった
「あきら!」
「なんだ? お前ら明日来るんじゃねぇぞ」
「あいつらに川を見させないように、あいつらが川を背にするように戦え。そうすれば勝てる!」
「どういう意味だ? わかったよ」
みんなが散り散りになった後、クルッと引き返し、音楽室に戻る
「とおる、おせーぞ!」
「わりぃわりぃ」
「んで、俺たちを呼んでどうするつもりだ?」
「もちろん! 明をこのまま1人で戦わせるわけないだろ、なぁ!」
「俺は勝手に乱入するつもりだったが」
「え? 純平、そうだったの!?」
「俺に作戦があるんだ・・・」
「いいねぇそれ! それで行こう!」
「やられたらやり返す、倍返しだ!」
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