第14話 ケガの功名
「ただいまでーす」
「おか。あらぁ、また派手にやったねぇ」
「ボコボコにされちゃいました、、」
「しかも1人相手に4人よ! 卑怯だわ!!」
「それは男らしくないねぇ。まぁ、ご飯でも食べな」
お母さんのマイペースさには救われた。事情を聞いてくるわけでもなく、いつもの日常に戻してくれる、それがどれだけ大事なことか。彼女の方が俺なんかよりよっぽど知っているのかもしれない。
体中が痛いので早めに寝床で横になっていると、京子さんが入ってきた。
「どう? 具合は」
「まだジンジンするけど、楽になったよ。たぶん当たり所が相当良かったんだと思う。別に、普通に動けるわけだし」
「そう。良かった。お母さんがね、風呂には入れないから体を拭いてやれって」
「え!?」
いっきにドキドキし始める。あの人わかって寄こしただろ!!
「いい?」
「あ、ありがとう、、」
京子さんが手からゆっくりと拭き始める。目がまともに見れない、もういっそ目をつむることにした。
「どう? 痛くない?」
「うん。大丈夫」
・・・・・・
「ごめん、起き上がれる?」
「うん」
「けっこう青くなってるよ」
「そっか。 あいつら好き勝手やりやがって」
「ギターは弾けそう?」
「どうだろう。指はやられてないからたぶん大丈夫だと思うけど、腕が上がんないかも」
「そう。」
「そんな落ち込まなくても大丈夫だよ」
「だって私のせいだし、、」
「別に京子さんは悪くないでしょ。」
「京子さんがモテるのはしょうがないよ。気が利くし、よく笑うし、一緒にいると元気になれるから。それに・・・」
「それに?」
「か、かわいいし、、」
「ねぇ?」
「うん?」
顔を上げると静かに唇が重なる。今回は何故か落ち着いていた、海の時は何も考えられなかったけど、今回は京子さんの息遣いがわかる。
「口直し、、。とっくに口は洗ってあるけど、心の、ね」
「こんくらいのキスじゃ、、まだあいつの汚れがと、取れないんじゃない?」
恥ずかしい! でも、どうにか理由をこじつけてもう1度したかった
「そうかも」
今度はさっきより少し激しく、ただ唇をくっつけるだけのキスから、お互いを求めるようなキスになる。
カツヒコの汚らわしい何かを拭い取るように、京子さんの唇に吸い付く、京子さんから甘い声が出る
「そんなえっちぃ声を出すのは卑怯だよ」
「だって、気持ち良いんだもん」
「俺だって」
それから何度もキスをした。痛みが、快感に流されていくようだった。人生にこんな気持ちよさがあるなんて初めて知った。柔らかい感触、心が繋がるような温かさ、人生観が変わる経験とはこのようなことを言うんだな。
キスを終えると、恥ずかしそうに京子さんが出て行った。俺もその充実感を噛みしめながら眠ってしまった。
夢を見た。
俺は病院のベッドに寝ていた。
横には両親とじいちゃんばあちゃんがいた。
両親は不安そうな表情をしているが、じいちゃんばあちゃんはそんな感じじゃなかった。
そういえば、防波堤から落ちる前によくわかんない会話をしていたのを思い出した。
たぶん、2人はわかってたんだ。俺がどこかのタイミングで過去にタイムスリップすることを、その時期がもうすぐかもしれないと思っていたんだね
でもそうなると、この間だけ未来と過去に俺の身体が2つ存在することになるのかな?
そんな事ってありえるのか? まぁ、考えたってわかることじゃない
でも何となくわかるのは、俺がこうしていられるのもあと少しだということ。
そして、オリジナル曲の方向性もなんとなくわかってきた
意識が戻り、ゆっくりと起きる
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