第16話 河川敷の決闘

「眠れないの?」


「あぁ、まぁ、そわそわするよね」


「私も」


「でも大丈夫、俺らも加勢に行くから」


「え? 明は1人で行くって」


「あいつの事なんて知らん! カツヒコのことだ、どうせ卑怯な手を使ってくるに違いない。俺らも行くくらいがちょうど良いんだよ。」


「まぁ、そうね」


「あのさぁ」


「なに?」


「京子さんは明のことどう思ってる?」


「そうねぇ、良い奴って感じかしら」


「昔から一緒にいるの?」


「そうねぇ、学校が全部一緒でなぜかクラスも今までずっと一緒なの。一緒にいるのが当たり前になっちゃって」


「それはすごい、、」


「明は何を考えてるのか全然わからないのよねー。普段はむすっとしてるくせにいきなり心配してきたりするしー」


「そんなこと言ったら俺だって何考えてるかわからないと思うんだけど」


「透くんはねぇ、思ったより顔に出てるんだよ?」


「え? まじ?」


「まじ」


「隠そうとしてバレバレなのがかわいいんだよ」


「ちぇー」


「すねないの!」


「まぁ、それはいいとして、明の事がわからないって言ってたけど、俺からというか、他の人間から見るとめちゃくちゃわかりやすいよ」


「そう?」


「そう。明はぶっきらぼうだから。京子さんの前だとどうしていいかわかんないんだと思うよ。だから何を考えてるのかわからない」


「何でどうしていいかわからないの?」


「そんなの、好きだからに決まってんじゃん」


「え? そうなの!?」


「京子さんも以外に鈍い?」


「私、そんなめんどくさいことしないから」


「ははは!確かに。明は良い男だけど、京子さんの前だけはヘタレだからなぁ」


「なんでそんな事言うの?」


「前も言ったけど、俺はもうすぐここを去らないといけないから。明を京子さんにお願いしたくて」


「何それ?」


「明には京子さんが必要なんだ。」


「ふーん。よくわからないわ」


「いづれわかると思う。ずっと、ずっと先で、、」


「あれ、京子さん?」


いつの間にか寝てるよ。明には悪いけど、一緒に寝させてもらおう。


人肌というのは不思議なものだ。1人でいるより安心感が全然違う。じいちゃんに隠し事がどんどん増えていく。気づいたら意識を失っていた。





「さぁ、勝負の時だ」


正午30分前になった。俺は駆け足で待ち合わせの十字路に向かう


「とおる~遅いぞ!」


「すまん、2人とも。ここから川の向こうまで少し時間がかかる。急ごう」


西高の連中に見つからないように、近くの橋ではなくちょっと遠い橋から回り込んで決闘が行われる逆の河川敷に走る


「純平、その木刀は?」


「明に渡す」


「なるほど」


反対側の河川敷に着くと反対側が見えた。


「ちっ! やっぱりけっこうな人数いるぞ!」田中が呟く


「もっと上流の方だ!急げ!」


明がいる場所から少し川を上った所に小さな船があった。よかった!


「おじさん!」


「おう、お前さんが言った通り、船を準備しといたぞ」


「ありがとう!」


「これ、とおるが用意したのか!?」


「あぁ、有り金ほとんど消えちまったけどな!急げ!」


俺と純平で船を漕ぎ始める、ゆっくりだが着実に向こう岸に近づいている。明が西高の連中に囲まれてる、ちょうど10人くらいか。1人だけ北高の制服着てるのがカツヒコだな。


「ナイスだ明!あいつらみんな道の方を向いてんな!」


明がどう立ち回ったのかわからないが、うまいこと奴らの目がこっちに向かないようになっていた。


誰も俺たちに気づいていない。そりゃそうだ、明にも内緒にしてたんだからな。敵を騙すにはまず味方からってね!


明はうまく敵から距離を取りながら戦っているが、やはり無理がある。何発かパンチをもらっているようだ、明が戦っている方の岸にたどり着いた。


「俺はここからは大して役に立たない、すまんが後は頼んだぞ!」


「あぁ! あんなやつらズタボロにしてやるからな! なぁ、純平!」


「腕がなるぜ、、」純平から見たことないオーラが湧きだしている。闘争本能とでも言うのか





「おらあああ!!!!!!!!」


純平から怒号が発せられる


西高の連中の注意が一気にこっちに向けられた


純平と田中が勢いよく突っ込んでいった


「へへー。俺も何もしないで引っ込んでるわけじゃないぜ!」


俺もポケットからパチンコを取り出す。当たり所が悪かったら大けがをさせかねない代物だが、そんな心配をしている場合じゃない


さぁ、反撃といこうぜ!

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